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[ナカミチの考察(VOL.1)] ZX-7 カセットデッキ - テープマニアに贈る高性能デッキ

ナカミチの製品について考察するシリーズ、その第1回は私の1stナカミチであるZX-7について紐解いていきます。ZX-7は、多彩なキャリブレーション機能を屈指し、ユーザーがシビアな調整をすることで、テープ性能の限界を引き出す、まさにテープマニアの為のテープデッキです。

キャリブレーション


同じメーカー、同一モデルのテープでも厳密にみれば、1巻ごとに特性は変わります。まして、モデル違い、メーカーが違えば、特性が大きく変わるのは明白です。併せて、テープシェルの精度により、A面とB面とでアジマスも変わります。このことから、ZX-7では、録音ヘッドアジマス、テープ感度、バイアスをテープポジション毎、左ch・右ch独立して調整出来るようになっています。

[録音ヘッドアジマス調整]

録音ヘッドアジマス調整部

録音ヘッドアジマス調整は、アジマス調整用ノブを廻し、中央のインジケータ(赤)が点灯するようにします。

向かって左が調整完了時、向かって右がずれている状態

[テープ感度調整]

レベル感度調整時

レベルメーター表示がCALの位置になるように、テープ感度調整ノブを廻して合わせます。該当するテープ感度調整ノブのインジケータが点灯し、調整すべき調整ノブを示してくれるという親切設計です。

[バイアス調整]

バイアス調整時

レベルメーター表示がCALの位置になるように、バイアス調整ノブを廻して合わせます。(ちなみにメーター感度は20dBアップしています)
Resetボタンを押下して、キャリブレーションを終了させると、テープは自動でキャリブレーション開始位置まで巻き戻されます。

マイクロプロセッサーによるメカニズムコントロール


ナカミチはオリジナル・サイレント・メカを採用したときから、N-MOS4ビットマイクロプロセッサーがメカニズムをコントロールするようになりました。それまではマイコンではなく、ディスクリートでロジック回路を組んでいました。マイコンを採用したことより、きめ細かい制御が出来る様になり、オートプレイバック、イージーキューイング、後追い録音など多機能化にも貢献しました。

マスターフェーダーコントロール


録音レベルを左右独立ボリュームでセットした後は、マスターフェーダーコントロールボタンを押すだけで、フェードイン、フェードアウトが自動的に行うことが出来ます。しかも、このマスターフェードコントロールは、1回押して離すと6秒間、押したままでいると2秒間の2スピードが選べるのです。この機能により、設定した録音レベルを変えてしまうことなく、フェードイン、フェードアウトが簡単に行えるようになります。余談ですが、このマスターフェーダーコントロールにはLEDとCDSを組み合わせた「アナログフォトカプラー」が使われています。

サイレントメカニズム


ナカミチは78年に、1000/700とほぼ同等のトータルクオリティを持った2ヘッドカセットデッキとして580というモデルをリリース。このモデルには、新開発されたモーターによる「サイレントメカニズム」が搭載されました。サイレントメカニズムは、モーターやその他回転体から生じる振動を除くため、共振制動メカニズムを採用。シャーシの材質と構造から検討を加え、鉄よりもはるかに減衰特性の大きなアルミを主体としたシャーシとし、さらに樹脂成型との組合せで有害な振動を防いでいます。ZX-7では、このサイレントメカニズムをベースに、3ヘッド及び録音アジマス調整機能を搭載しています。

テープパッド・リフター


テープパッドリフター(2ヘッド用)

ナカミチは、テープパスにもコロンブスの卵的なアイディアを投入しています。それが、テープパッド・リフターです。折角、デュアルキャプスタンによって、ヘッドに対して適切なテンションを掛けているのに、テープパッドでテープを押し付ける必要がない。ヘッドに対して、必要以上にテープを押し付けるのは、テープの偏摩耗を進めるだけとなります。そこで、再生ヘッドにテープパッド・リフターを取り付けて、テープパッドを押し上げてしまおうと考えたわけです。後年、他社も同様の機構を追加していますね。

ディスクリート3ヘッド


ZX-7は、録音、再生、消去の3つのヘッドを専用化し、構造上も完全にセパレート化。これにより、個々の目的に最適な特性とすることが可能になります。セパレート化の利点はこれだけではなく、独立してヘッドの機械的なアジマス調整を調整出来るのは当然として、それだけは得られない磁気的なアジマス調整も可能になります。

スペック


トラック形式     :4トラック・2チャンネル・ステレオ方式
ヘッド        :3(消去x1、録音x1、再生x1)
モーター(テープ駆動用):PLLサーボモーター(キャプスタン用)x1、DCモーター(リール用)x1
電源         :100V 50/60Hz
消費電力       :最大40W
テープ速度      :4.8cm/秒
ワウ・フラッター   :0.04%以下(WTD RMS)、0.08%以下(WTD PEAK)
周波数特性      :20Hz-21,000Hz±3dB(録音レベル-20dB、ZXテープ)
            20Hz-20,000Hz±3dB(録音レベル-20dB、SX、EXIIテープ)
総合S/N比       :ドルビーCタイプNR on(70μS、ZXテープ)
            72dB以上(400Hz、3%THD、IHF A-Wtd rms)
             ドルビーBタイプNR on(70μS、ZXテープ)
            66dB以上(400Hz、3%THD、IHF A-Wtd rms)
総合歪率       :0.8%(400Hz、0dB、ZXテープ)
            1.0%(400Hz、0dB、SX、EXIIテープ)
大きさ        :W450xH135xD300mm
重量         :約9.5kg
販売年        :1981年
当時の定価      :188,000円

さて、今回はZX-7を取り上げました。男の子が大好き調整ノブがパネル一杯に並んだブラックフェイス。テープ一本毎に、ボリュームを廻して調整して特性を追い込んで録音し、再生した時の感動は格別なんです。ZX-7は比較的オークションにも出品されるモデルですので、検討してみては如何でしょうか。

2023.6.17


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