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知らない人んち(仮)第一話

第一話を投稿させて頂きます。一話以降の構想もありますので宜しくお願い致します。

○ 和室
  きいろ、荷物を片付ける手を止め。
  きいろ「でも、面白いもの撮れるかも」
  と、ドアが開く。
  ドアを開けたのはキャン。
キャン「ジェミちゃんが出掛けたから一緒にコーヒーでも飲まない?」
きいろ「(緊張しつつ)はい」

〇 リビング
  座っているきいろ。
  キャンはキッチンでドリップ式のコーヒーを淹れている。
きいろ「結構凝ってますね」
キャン「昔、コーヒーショップで働いてて、それでコーヒーが好きになったんです。はじめは甘いのが好きだったんですけど目上の人と会うたびにブラックも飲めるようになって」
きいろ「そうなんですね」
キャン「本当のこと伝えるの得意じゃなくて。周りがブラック選ぶんなら、我慢してブラック飲むような人です」
きいろ「我慢するのキツくないですか」
キャン「こっちにきて慣れました」
きいろ「東京出身じゃないんですか」
キャン「(話しすぎた、と)あ、私の話しはいいですよ。きいろさんは東京?」
きいろ「私は元々関西の人です」
キャン「綺麗な標準語だね」
きいろ「こっちにきたら関西弁話す人おらんから」
キャン「あ、関西弁」
きいろ「久しぶりの関西弁です」
キャン「両親は?」
きいろ「もう、いないんです」
キャン「え、あ、ごめん」
きいろ「いや、別に。お父さんが育ててくれたんですけど。どっか行っちゃって」
キャン「そう。……兄弟は?」
きいろ「年の離れた妹がいます。名前、ミドリって言うんですよ」
キャン「え、もしかしてきいろって本名ですか?」
きいろ「一応、はい」
キャン「芸名だと思ってた」
きいろ「キャンさんは?」
キャン「私の名前? 私の名前言ったらダメです」
きいろ「?」
キャン「私の本名、声に出したらその人になっちゃうから。私は、キャン。本当の名前の人物は閉じ込めました」
きいろ「……」
キャン「冗談ですよお。そんな怖い顔しないでください」
  と、取り繕って。
きいろ「……私、雨沢きいろ。雨に、沢田研二の沢。沢田研二知ってます?」
キャン「ジュリー」
きいろ「そう。名前がきいろだから、黄色が好きなの?って言われてきました。でも、本当に好きな色は緑なんです」
キャン「……」
きいろ「緑は妹の名前だしなあって。持ち物も着る物も本当は緑がいい。でも私、名前に自由を奪われちゃって。きいろが好きって言って言い聞かせて。周りに合わせるところ、キャンさんに似てます」
キャン「……」
  と、いつの間にかコーヒーはグラス一杯に溜まっていて。
きいろ「三人は何の繋がりで一緒に?」
キャン「似た者同士なんですよ」
きいろ「似てる?」
キャン「最初はアクが」
アクの声「ただいま」
  と、アクがいつの間にか帰ってきている。
キャン「あ、アク」
きいろ「お帰りなさい」
アク「これ、夕飯の食材。カレーにしようと思って」
 と、スーパーの袋をテーブルに置いて。
アク「これだけ人いるとさ、甘口中辛辛口、どれ選べばいいか分かんなくてさ。とりあえず、辛口にした」
  と、食材を袋から出しながら。
アク「普通、人の好み分かんないなら間をとって中辛にすると思うんだけどさ、俺の好きな辛口にした。だって、俺が買い出しに行ってるんだから選ぶ権利あるでしょ?」
  きいろ、キャン。……。
  アク、手を止めて。
アク「人がいないときに人の噂するのやめた方がいいよ。俺がどんな人なのかは俺にしか説明出来ないから」
キャン「ごめん」
アク「ジェミは?」
キャン「カメラのフィルム買ってくるって」
アク「……」
キャン「ちょうど、コーヒー淹れたからさアクも飲む?」
  × × ×
  席につく、きいろ、アク。
  キャンはきいろのカップにコーヒーを注ぐ。
きいろ「ありがとうございます」
  キャン、アクのカップにコーヒーを注ぐ。
キャン「(アクに)砂糖とミルク入れる?」
アク「いや、いい」
きいろ「……」
  キャン、コーヒーを自分のカップに注ぐ。
  キャン、そのまま飲もうとする。
  きいろ、砂糖をアクのカップに入れる。
アク「(驚き)何してんの?」
  きいろ、ミルクも入れた。
アク「ちょっと勝手に」
きいろ「たまには甘いのもいいですよ」
キャン「……」
  きいろ、自分のカップに砂糖とミルクを入れる。
キャン「……」
  きいろ、コーヒーを飲んで。
きいろ「美味しい」
  アク、コーヒーを飲む。
アク「……」
  味は満更でもないようで。
きいろ「美味しかったでしょう?」
アク「別に」
  キャン、きいろの気持ちを受け取って、砂糖とミルクをコーヒーに入れる。
  キャン、コーヒーを飲む。
  キャン、微笑って。
キャン「今までで一番美味しい」
アク「自画自賛かよ」
  きいろも微笑って。
×         ×         ×
 T「4時30分 PM」
  夕食の準備をしているきいろ、キャン、アク。
  テーブルの上を使って野菜を切っている。
アク「ジェミ、遅いな」
きいろ「ちょっとトイレ行ってきます」

〇 階段・前
  トイレの前の階段を見上げるきいろ。

〇 女子部屋・中
  女子部屋の机の下を覗く。
  すると、ビデオカメラが置いてある。
  ビデオカメラの映像を確認するきいろ。
  ビデオカメラには、キャンとジェミが話している場面。
ジェミの声「どっちにしても、このままじゃ帰せない」
きいろ「……」
  きいろ、早送りをする。
  と、ある場面で止める。
  ジェミが、机の下を覗きこみ、ビデオカメラを手にとっている。
  カメラに向かって話している。
ジェミ「きいろちゃん、アクには気をつけて」
きいろ「(え、と)」
ジェミ「アクは昔、傷害事件で少年院に入れられて、その時の復讐で」
  「ジェミちゃん」とキャンの声が入っている。
ジェミ「私は子供の保護施設に行ってくる」
  と、ここでビデオカメラの映像が終わっている。
きいろ「……」
  きいろ、立ち尽くしていると1階から何かが割れる音。
きいろ「?」

〇 リビング
  きいろ、やってくる。
  床に割れた食器が散らばっている。
  側にキャンが座って腕を押さえている。キャンの腕には血。
きいろ「大丈夫ですか!」
キャン「大丈夫。手が滑っちゃって」
きいろ「こんなの手が滑ってできる……」
アク「大げさにしなくていいですよ」
きいろ「ええ?」
  アク、手に包丁。
アク「嘘をついた代償じゃないですか」
きいろ「え?」
アク「ジェミを迎えに行ってきます」
きいろ「……」
アク「今、隠してたビデオカメラの映像見てきたんでしょ?」
きいろ「(え、と)」
アク「動画どんどんと撮ってください。あなたの動画がないと完成しないので」
きいろ「え?」
アク「保護施設に行ってきます」
  と、アク出て行こうとして。
きいろ「完成しないってどういう事ですか」
  アク、何も言わず出て行く。
  きいろ、キャンを心配して。
きいろ「大丈夫?」
  × × ×
  キャンの腕に包帯を巻くきいろ。
きいろ「これで良し」
  キャン、突然きいろを抱きしめる。
きいろ「え、え? どうしたの?」
キャン「私の名前ね、星野ミカ。星野ミカ」
  と、自分の名前を小さく唱えながら目を赤らめる。
  きいろ、キャンの頭を優しく撫でる。
きいろ「星野ミカさん、初めまして」
  キャン、泣いている。
  突然、二階の方から物音がして。
  きいろ、キャン、「え?」となっている。
男の子の声「助けて!」
  と、二階から男の子の叫び声にも似たものが聞こえて。

              了

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