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消費者のホンネ「メーカーはセコい」

 こちらは Twitter に投稿された動画です。
 とてもよくできていてリンクさせて頂きました。感謝致します。
 「セコい!」は消費者の率直な感想です。
 確かにそういう向きはあると思いますが、一筆献じたく思います。もしかしたら参考になるかも…。
 なお、こちらの投稿にも様々なコメントがついており、色々と参考になりました。

 食べ物に関する記事を書いていますが、良心的な供給元が店じまいしていく現状を見るに消費者の問題が大きいと感じます。特に昨今は食品の全てに於いて見た目、流行り、希少性などの高付加価値を求める傾向が強くなっているようで生活を下支えしてくれていた店舗や製造販売に対する需要切り捨ては時に冷淡で残酷に見えます。「セコい!」に悪意を感じる人はいないと思いますが、それが消費者視点で消費者の本質に浸透していく事を懸念します。店舗を潰すのは消費者で、このままだと食品は大資本の大量生産ばかりが主流になるでしょう。選べなくなるということが健康管理にも直結する重大事である、と考える人は少ないので、気が付かないうちに供給状況が悪化していくと考えられます。

 ひと昔前であれば売り上げのために原価を削るという考え方の企業もあったかもしれません。しかし今はそんな余裕のある所はないのではないでしょうか…。

パッケージが小さくなる訳


・輸送コストを下げる
 スーパーの段ボールを見ていると、昨年からどんどん小さくなっています。これは宅配業者の値上げに伴う輸送費の高騰が流通に影響しているからです。
 パッケージを小さくすると、荷物全体を小さくして配送料を小さくできます。また、同じ大きさの段ボールならわずかですが隙間ができるので一回の発送で余分に個数を送れます。

・仕入れの負担を軽減できる

 消費税だけが増税のように言われますが、じつは消費税は大した値上げ要因ではありません。その証拠に10%増税の際、多くの飲食店が価格据え置き、一部値上げもありという対応を取りました。問題なのは石油の税、小麦粉の関税、電気の税、そして税ではありませんが水道民営化に伴う負担です。これらの特徴は「他に代替できず、ほとんどの業者が必ず使わざるを得ないものに課税している」ことです。こうする事で「広い業種から」「安定的に」「何段階も」税収を底上げできるのです。
 石油が上がると包装費(ポリプラフィルム袋は原料費、工場の光熱水費、輸送燃料費)がすべて上がりますので、中身が小さいとか以前に、実は包装代が高騰しているのです。当然、原料の農産物には農機の燃料としてガソリン等を大量に使用しますから原料、加工工場、輸送と三段階で値上がりします。
 小麦粉はほとんどの加工食品で使われていますが、税率の設定が問題です。以前は価格上昇の幅が半年に2-3円で上下する程度でしたが、現在は下がる事はほぼなく(10%増税前の直近は下がった)酷い時は2、3ケ月に20~30円の増税になっています。輸入小麦に対する関税ですが、国産の小麦(輸入に比べると少量)も相場連動で価格が左右されます。この状態ですと、原料を扱う業者は頻繁に価格改訂をしなければなりませんから、大きな変動を見込んだ上で変化の少ない価格設定を上向きにすることになります。なぜかと言えば下がる傾向がほとんどないと看做しているからです。
 電気代は温暖化防止、原発の事故対策費用などという名目で増税、または事業値上げされています。電気を使わない工場はありません。
 水道は民営化することで10%消費税、間接費が増えますので、調味料大手が真っ先に値上げを発表しました。液体調味料や飲料は水が原料だからです。商品に水を使わなくとも、水を使わない工場はありません。製造を行う限り負担となります。
 そこに消費増税が加わります。
 (掘り下げませんがこの他に固定資産税の増額や食品管理制度などへの対応費用が加わっています。さらに軽減税率対応が追い打ちをかけています)。
 内容を減らさないことは簡単です。これらの負担を全て商品価格に反映させればよいのです。しかし今度は「セコい!」が「高い!」という不満の声に変わるだけではないでしょうか。

 一つ一つの商品で見れば原価は小さいかもしれません。しかし、原材料資材はまとめて購入するから単価を抑えられるのです。数万をロットで仕入れればこれだけ積み重ねられた増税分の金額は大変なものになります。明らかに資金繰りの面で苦しくなっています。
 原材料自体は商品価格からすると高いというものではありませんが実態を持ったお金が必要な物資です。これを少し削ったからと言って利益が大きく変わるわけではありません。
 しかし、商品一個当たりの量を減らすことには別の意味があります。一回の仕入れで商品が1万製造できるとします。一個当たりの材料を少しずつ減らすことで1万50個製造できるようになります。これは50個の製造については追加の資金を工面しなくともよいという事を意味します。
 仕入れ=投資です。
 原価率30%とすると3333個の売り上げが入るまでは借金状態なのです。
 6667個売れてやっと収入の半分です。
 (実際には販売手数料その他が割り引かれるので1/4以下でしょう)
 売れて始めて利益が回収できます。
 ところが市場が冷え込んでなかなか回収ができません。消費者が購入の際、考えて節約するようになったからです。
 こうなるとさらに資金繰りは苦しくなります。たかが200個のうちの1個のために材料を減らすのかと思われるでしょうが、製造側からするとその1個分の材料がない場合でも大金を出して1万個分の各種材料を大口仕入れしないと作れないのです。100円のお菓子は100円では作れません。都度仕入れにして300円にすれば200円くらい(原価率が上がって人件費がかかる)で作れるかもしれませんが100円のお菓子が300円になったらもう誰も買わないでしょう。


・値上げを防ぐ事ができる
 ただでさえ景気が鈍化しているのに値上げをすればますます投資が回収できなくなります。価格を維持することは大変な負担ですが、その分は仕入れの負担を減らして耐えるということです。そうしないと売れない循環に陥ります。
 ところで、食品は春先に値上げをしたではないかと思う人もいるかもしれませんが、これは消費増税の時期に値上げをするとやはり売り上げが落ちるので事前に必要最低限の値上げをして増税時には価格を据え置き、消費の鈍化を防ぐという苦肉の策です。

メーカーはセコいのか?

 以上を考えると…セコいと言い切ってしまうにはメーカーの事情が考慮されていないと思います。少なくとも今の経済の状況ではとてもそんな余力はないと思います。「それでも売り上げが出ている(時期不明)」というコメントも拝見しましたが、人員や工場資産などどこでコストカットしているかを見ないと経営が安泰なのかは分かりません。書きましたように材料の量を少々減らしたからといって大して売り上げは変わらないのです。
 むしろこれだけ経営努力して増税圧力を相殺しているメーカーに「セコい」などと言い対価を払い渋る消費者の方がセコいのではないでしょうか。
 包装費が価格を圧迫しています。包装を簡易にすれば価格は下がりますがほとんどの消費者は見栄えで購入しますから確実に売り上げが落ちますし食べ物として丁寧に扱ってもらえないのです。商品が傷んだりすればクレームばかり増えてしまいます。
 冒頭書きましたように、私が懸念しているのはこういった消費者心理が増税した行政ではなく製造や販売の事業者に向けられることで良心的な業者から店じまいしたり潰れていくことです。私たちは確実に選択肢を失っていっています。
 商品やサービスを提供してくれる事業の存在への、感謝の気持ちがあればいきなりセコい!という話にはならないと思うのです。
 意外に思われるかもしれませんが、市場を作っているのは消費者なので消費者の意識が下がると市場も縮小したり粗悪化します。
 セコい!という言葉には苦しいのは自分だけ、という身勝手な心理や、生活上の不満を行政ではなく製造側にぶつける気持ちがあるように感じます。しかしあてつけのような事をしてみてもその場は気は晴れるかもしれませんが、結局自分の環境を狭く細らせてしまうのではないでしょうか。


 消費者は不景気感から変わり映えのしないものに対価を払うのは損だ、という心理で今まで普通に購入していたものを買い渋るようになっています。

 材料も減らしておらず、量も減らず、値上げすらしていない業者から潰れていっています。量を減らすことが絶対悪だ、とは言えない現実があります。

あとがき

 他にもこの本文の参考になる記事がありますので、よろしかったらご覧ください。

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