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パンとイーストフード・乳化剤(工業食品と添加物)

https://www.yamazakipan.co.jp/oshirase/0326.html
 山崎製パンが「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示についてという記事を公開したことが話題になっています。

 他の大手食品パンメーカーがこれらの材料を使わない商品を販売しているのになぜ使用するのか?といった問い合わせが山崎側へ多く寄せられたとのことで、山崎側の対応がこちらに書かれているのですが、内容が他社製品の製法の追求に及んでいて(イーストフード・乳化剤をリスクのある材料と捉える人にとって)安全な工業食品はないのではないか?と問い返す内容になっています。

 山崎側は自社で他社製品の分析を行った所、イーストフード・乳化剤という名称ではないにせよ、同等の加工用材料の成分が検出されたと書いています。

 懐疑的な見方をすると、他社は添加物指定されていない加工材料を使用、または自社開発して使用しているため、食品衛生法上の表示義務を回避しているが、実際には同等の材料を使っていると思われるということです。

 それでは工業製パンでない、自然食品(今や内容不明の宣伝文句となってしまっているので手作りパン、天然材料のみ使用食品とした方がよいかもしれませんが)を売り物にしている個人事業規模のパンではどうでしょうか。

 イーストフードはイーストというパン酵母に活性化成分(添加物)をセットにしたものです。ワンセットで膨らみをコントロールできるので効率的ということのようです。

 天然材料のみ使用のパンは酵母をイーストに限定していませんが、活性化成分をわざわざそのために与えない(栄養の砂糖くらい)。できあがったパンで比べると大手メーカーのパンのようにふわふわでなく固めの焼き上がりになりますが、もともとパンが好きな人のための商品なので食感よりも重量があって腹持ちの良いこと、栄養、マーマレードやバターで美味しく食べることなどが重視されています。

 乳化剤はしっとり感を持続させるためなどと説明されています。天然材料のみで作るパンの場合は、特別な配慮はされていません(ただし同じような効果の得られる食材はありますので、それぞれのノウハウとして生地に加えて作ったりしているかも)。そもそも売り場に並べて数日置くということがなく、ほぼその日で売り切ってしまいます。お客の食べ方も余したパンはラスクに焼いたりクルトンとしてスープに入れたりパン粉を作ったりと工夫する人も多いのでパンの品質の中で過剰な柔らかさの要求が低いのです。

 こうしてみると工業製パンの性格は消費者の嗜好に合わせ、そこに製造の考え方を集中して利益を出す流れの中で作られています。

 忙しい人には食品を扱う手間を省き、忙しい朝・日中の食事の時間すら短縮できる商品が求められます。

 利益という面では膨張させることでかさましができますから材料コストが抑えられます。なぜ、そうなってしまうかというと消費者は食べられなくとも大きい食品を買いますし、重量が同じでも小さい食品を買うのは損だと考えるからです。空気で嵩ましした商品の方がよく売れてすぐにお腹もすくので販売の回転が上がります。足りないから二個買い、といった需要のために味の異なる商品をセットで売り場に並べます。

 しっとり感は見た目では分かりませんが、見た目的な要素もあります。口に入れて単純に分かりやすい上、食材の新鮮さを感じるからです。特段味覚の優れている人でなくともそう感じる事ができます。これに比べて味や栄養といった性質はかなり分かりにくいものになります。

 イーストフード・乳化剤は食品を「新鮮でボリューム的に特する商品価値」と認識させるために必要なのだと思います。
 何がよいか悪いかを考えるのは面倒です。商品価値を「見た目」に集約させるとシンプルな認識なので疑いも入りません。購入の80%は衝動買いだそうです。考えてしまうとこの確率は落ちていきますので、次々と買ってもらうためには見た目に集約させる必要があるのだと思います。


まとめ

 ・便利さと安全を同時に求めることはむずかしい

 ・よい商品は見た目では分かりにくい。分かりやすい商品には添加物などが使われていないか考えて買う。考えることで衝動買いを防ぐことができる

 ・食品というものは固くなったり傷んだりするものなので、過剰な品質を求めるより調理や加工で使い切る方がよい

 ・添加物や加工材料の知識がないと成分表示だけでは判断できない事がある

 ・「不使用」などの安全を謳うキーワードが正しいか複数の商品を比較してみる


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