都庁官僚の小池知事への「媚びへつらい」が透けて見える補正予算案の言葉遣い

 9月9日、小池知事は令和4年度9月の補正予算案を発表しました。6千億円規模の大型補正です。項目として、脱炭素への取組みや物価高騰対策、新型コロナ対策などが並んでいます。現下の状況に対する迅速な対応にも見える内容ではありますが、見過ごしてはいけないのは、その第一項目の言葉遣いです。

 「HTT・脱炭素化の強化」
 出た!いきなりHTT。小池知事の会見で使用されるパネルにも林修氏が出演するテレビCMにも登場するHTTですが、その正確な意味(H:減らす T:作る T:貯める)を知っているのは、せいぜい都の職員、それも関係部署の職員か幹部職員ぐらいだと思います。いったいどれだけの都民の方々がこの不可解なアルファベット略語の意味を理解できるというのでしょうか。

 しかし、この言葉が使用されているのは、財務局主計部が作成した歴とした東京都の公式文書です。しかも、発表資料のどこを探してもHTTの説明が載っていない。つまり、小池都政の認識として、HTTは既に都民に広く定着した一般用語だということです。HTTの説明一切なしの公式文書を見るにつけ、「みなさん、もうご存じですよね、当然」といった押しつけがましさすら感じてしまいます。

 さらに、PDFによる詳細な資料には、これでもかと言わんばかりにHTTが登場します。
・ HTTに係るテーマのピッチイベントを開催
・ 中小企業制度融資「HTT・ゼロエミッション支援」を創設
・ HTT実践推進ナビゲーターによる都の支援策等の周知
・ HTT推進に向けた取組に係る先進事例の普及啓発や情報発信
・ 都民のHTT・ゼロエミッション推進に関する意識の向上

 いやはや、頭が痛くなりませんか。
 あるいは、重箱の隅をつつくようなことを言うなとお思いかもしれなせんね。しかし、たかが言葉遣いじゃないかと甘く見てはいけないと思います。
 HTTは小池知事お気に入りの造語です。今年の流行語大賞を狙っているかもしれないぐらい、ご本人は入れ込んでいます。
 そうした中、都庁の役人にしてみれば、HTTという言葉を資料上使用して小池知事に媚びを売る必要がある。媚びれば予算がつくかもしれない。HTTを祭り上げて小池知事にご機嫌麗しくしてもらわなければいけない。
 こうして、小池知事を頂点とする「都庁村」の中でのみ通用する言葉を仲間うちで流通させることが、あたかも役人の重要な仕事なのだと勘違いしているみたいなのです。

 実際、本庁のある管理職が先月、こんなことを言っていたのを思い出します。「本庁内では、HTTは優れたフレーズだとか、HTTと言う言葉が浸透してきたなどと、歯の浮いたような会話が管理職の間で交わされています。もちろん、なんだよHTTって、みんな心の底では小バカしているのですが・・・・。」

 面従腹背は役人の常套手段ですが、問題は都庁官僚の視線が小池知事にだけ集中し、都民に向けられていないことです。補正予算案の説明資料からは、都民の皆さんに理解してもらおうという謙虚な姿勢が全く伝わってこない。
 内々の隠語を使って自分たちだけで悦に入るような組織に都民の命や生活を守ることができるのでしょうか。小池知事に媚びることが唯一の出世の道であり、生き残る手段だと都庁官僚が思い込んでいる限り、都政に明るい未来はやってきません。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?