築地再開発問題、中央区サイドから見ると、実はこういうことになっています

 4月21日(木)、中央区議会の築地等地域活性化対策特別委員会を傍聴してきました。といっても現在、中央区議会では、コロナ対策の一環として別室での音声のみの傍聴方式を採っています。庁舎10階の第三委員会室が傍聴室に当てられていましたが、傍聴者は筆者を含めて3人だけで、ちょっと寂しかったですね。

 さて今回、筆者はなぜ中央区議会に足を運んだのか。懇意の区議が以前から拙著「築地と豊洲 ~市場移転問題という名のブラックボックスを開封する~」に大変興味を持っていただいていて、今度、築地の街づくりに関する質問を検討しているということだったので傍聴に出かけた次第です。すると、拙著の一部を引用した第1問目に対して、吉田副区長が答弁に立ったのです。

 中央区の吉田副区長といえば、知る人ぞ知る「街づくり・再開発」のスペシャリスト。筆者は係長時代の2年間、中央区の企画部に研修派遣されていた経験があり、吉田氏を昔から存じ上げいます。吉田氏にしてみれば、勝手なことを書いたり情報発信したりする筆者に眉をひそめているだろうと思います。案の定、答弁に立った副区長は開口一番、「澤くんは困ったところがあるので、全面的に同意してはいないいが・・・・」と釘を刺した上で、東京都が進める築地再開発に関して、こう発言しました。

 「中央区は一貫して築地市場の移転に反対してきた。しかし、まさに東日本大震災が発生した3月11日に、都議会で市場移転の予算が成立し、移転を前提として考えざるを得なくなった。区では『築地魚河岸』を設置し、市場の伝統を形として残すことができている。」
 
 そして、3月末に都から示された築地再開発の実施方針に関連して、吉田副区長はこう続けたのです。

 「東京都のコンセプトをきちっと確認する必要がある。(跡地開発を)築地場外はもとより、銀座、中央区全体とどう連結して発展させていくのか、都市計画上位置づけることが重要だ。」

 吉田副区長は短い答弁の中で「連結」という言葉を複数回使用しました。副区長の真意は正にここにあります。筆者もYouTube動画で隣接する築地場外との連動性が考慮されない計画はおかしいと指摘させていただいていますが、副区長の視野はもっと高くずっと広かったということです。築地跡地を語る以上、中央区全体の中でどう位置づけるのか、この視点抜きではダメだと東京都を諭しているのです。

 実際、中央区は都に対する要望書を何度か出しており、その中で築地跡地と中央区全体との連結を強く要望しています。しかし、これまでの都の動きを見ている限り、あくまで都有地である23haに限定した議論に終始しているように見えます。中央区は蚊帳の外という印象さえ持ちます。はたしてそれでいいのか。

 今回、中央区議会の特別委員会を傍聴して痛感したのは、都市再開発における地元自治体の難しい立ち位置です。元来、東京都は地元自治体の声も聞きましたと体裁だけを整えて自らの計画をごり押しする傾向にあります。
 中央区はこうした東京都の悪しき慣例に待ったをかけることができるのか。「連結」は実現するのか。小池知事の姿勢も含めて、築地再開発の動向を注視していかなければなりません。

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