岩﨑麻利江さん インタビュー(第5回TOHOシネマズ学生映画祭受賞者)


岩﨑 麻利江さん

第5回TOHOシネマズ学生映画祭ショートフィルム部門で準グランプリを受賞した作品『カンニングペーパー』。監督の岩﨑麻利江さんは現在、映像コンテンツ制作会社・日テレ アックスオンで数多くの人気ドラマに携わっています。そんな岩﨑さんに映画祭を運営する学生スタッフが、受賞当時の気持ちや現在のお仕事についてお伺いしました。
 
受賞が映像制作の道に進む大きなモチベーションに
 
――TOHOシネマズ学生映画祭に応募したきっかけを教えてください。
 
「応募当時はハワイの大学の3年生で映画制作学科に転部したばかりだったのですが、学校の先生がとにかく作品を映画祭に出しなさいと勧めていました。それで映画祭を探していたところ、TOHOシネマズ学生映画祭を見つけて『カンニングペーパー』を応募することにしました」
 
――TOHOシネマズ学生映画祭の受賞は、現在プロとして活躍される岩﨑さんにとってどのようなものだったのでしょうか?
 
「受賞が大きなモチベーションになって、大学卒業後も何の迷いもなく映像関係の仕事に就こうと決められました。また、入社してすぐにドラマ班に配属されたのも受賞のおかげだったのかなと思います。うちに入社する人たちはドラマ班希望がとても多いのですが、新卒ですぐにドラマ班に配属される人は限られています。私の場合、実績もあったおかげか1年目でドラマ班に配属され、そのまま好きなことを続けられています。そういった意味ではすごく大きな影響があったと思います」
 
――大学を卒業されたあとから現在のお仕事に就かれるまでに、どのような活動やお仕事を経験されましたか?
 
「大学時代はハワイで結婚式を挙げる日本人向けにウェディングフォトグラファーのアルバイトをしていて就職も決まっていました。ただ、日本の就活は新卒採用のチャンスが大きいので、後悔しないようにチャレンジすることにしました。ただスタートが遅く、映画の配給会社などは募集がすべて終わっていて。そのなかで唯一残っていた日テレ アックスオンだけダメ元で受けたところ、ご縁があって入社できました」
 
――そこから現在に至るまで日テレ アックスオンにお勤めされている岩﨑さん。「デスノート」(15)や「正義のセ」(18)など、人気ドラマの監督を務められていますね。
 
「助監督の経験が少なく、入社3作品目から監督をやらせてもらうようになったのですが、経験がない分うまくいかないことも多くて。性格的にぐいぐい演出をするのが苦手で、『デスノート』の時は大御所の役者さんとのやりとりでとても苦労しました。当時はプレッシャーで歯ぎしりし過ぎて、いつか歯が折れるんじゃないかと思っていました(笑)」
 
――近年はVFXを担当されているそうですね。
 
「いま私に必要なのは、監督としての経験よりも社会人としての経験を積んで自信をつけることだなと思い、5年前にCGのチームに異動し、最近はVFXを担当することも増えてきました。VFXというのは予算の管理から、こういうCGを作るためにこんなふうに撮影してくださいということを現場で監督や撮影監督にお願いしたり話し合ったりする役割です。ドラマは予算に限りがあるので、実際のCG作業も一部担当します。最近だと櫻井翔さん主演ドラマ『新空港占拠』でVFXを務めました。」
 

諦めポイントはたくさんあるが最後までやり切ることが大事
 
――プロとして携わった作品と受賞作『カンニングペーパー』で、共通することや違いがあれば教えていただけますか?
 
「頭の中で考えていることをいかに役者さんに演じてもらうかっていう難しさはプロになってからも同じように感じていました。でも逆に、自分が思っていることが画になった時の感動はまったく一緒だし、その瞬間が一番ぐっときますよね。発想に関しては、自主映画の時は一から自分で書いた脚本ですが、ドラマは脚本家とプロデューサーが主になって脚本を作り、それを演出することになるので、そこは大きく違う点かなと思います」
 
――岩﨑さんの今後の目標を教えてください。
 
「今後は企画開発を主に担当するのですが、英語力を生かし海外と共同開発して映画やドラマの制作をしていきたいと思っています。私自身もいつか映画監督をすることが夢で、特にJホラーをリバイブしたいという思いがあるのでまだまだ頑張ります!」
 
――今後、ドラマ業界に進みたいと考えている学生にアドバイスをいただけますか?
 
「改善しているとはいえドラマ業界はスケジュール的に過酷な現場が多いので体力は必須です。また、クリエイティブ系の職種で就活するなら、面接でいかに自分のコアを出せるかもポイントだと感じます。採用面接を担当したことがあるのですが、正しさよりもその人らしい一面が見えると一緒に働くことが想像できました」
 
――最後に学生の映像制作者に向けて、学生のうちにやっておいたほうがよいことや、岩﨑さんが学生時代にやっていてよかったことを教えてください。
 
「映像制作に関していうと、まずはやり切ることをおすすめします。映画制作って、脚本に始まり撮影、編集と、諦めるポイントが本当にたくさんあるんです。途中でダメだな、違うなと思っても完成させて、そこから反省すればいいじゃないですか。完成させないとわからないことがたくさんあるので、ぜひ踏ん張ってみてください。あとは、映像に限らず自分が好きなことをやる続けること。いまはSNSなど発信するツールがたくさんあるのでどこで才能が花開くかわかりません。続けることが大事です。そして、恋愛はしておくに越したことはないと思います(笑)。その人の色気や魅力に直結するので、人生経験として勉強以外のことにも時間を使ってみてください」
 
――本日は貴重なお話、ありがとうございました。
 
【岩﨑さんプロフィール】
東京生まれ、横浜育ち。ハワイ州立大学卒業後、株式会社日テレ アックスオンに入社。助監督を経て、2014年「タイムスパイラル」で監督デビュー。監督代表作に、「デスノート」「走れ!サユリちゃん」(ともに15)、「正義のセ」(18)など。また、「恋はDeepに」(18)でCG・VFX、「大病院占拠」(23)「新空港占拠」(24)タイトルバック・VFXを担当している。


【今回インタビューした学生】
中村さん(大学1年生)
「最後まで作品を作り切って映画祭などに応募することに意味がある、そこから反省や学びを得られるというお話が印象的でした。まずはチャレンジしてみることの重要性を実感しました。今後、映画祭を通してどうすれば制作者さんのこれからにつなげられるか、皆さんの思いをすくい取っていけるかを考えながら活動していきたいです」

中村さん

野口さん(大学1年生)
「プロとして活躍されている方に直接お話を聞けるとても貴重な時間でした。なかでも、とにかくやってみるという挑戦心が大事だと、今回のインタビューを通して改めて感じました。また、応募してくださった作品に制作者さんたちの未来が懸っているということも実感したので、気を引き締めて運営していきたいと思います」

野口さん

写真=野崎航正 構成・文=石川ひろみ(ムービーウォーカー)

第17回 TOHOシネマズ学生映画祭 概要

日程:2024年3月28日(木) 14:00 開始 20:00頃 終了予定
会場:TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12
料金:入場無料
チケット受付:
TOHOシネマズ 日比谷 / TOHOシネマズ シャンテ 上映スケジュール
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/081/TNPI2000J01.do
※3月28日(木)のスケジュールから「TOHOシネマズ学生映画祭」を選択いただき、受付をお進めください
※全席指定席となります
※1度の申込で2席まで座席をお取りいただけます

協賛:コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
   都築電気株式会社
後援:株式会社ロボット
   GEMSTONE Creative Label
   TOHO animation
協力:株式会社オンザウェイ
公式サイト:https://www.tohotheater.jp/tcsff/


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