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幸福論

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幸せになるために生まれてきたのではなく、美しく生きるために生まれてきた私たちの、だからこそ目指すべき幸福のために書いていきます。不定期。
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#日記

私は100年生きるのだから

私は100年生きるのだから


今、私のインタビューが少しバズっている。
(と、書いている間にあまり跳ねないまま忘れられているかもしれないけれど)

宗教3世とか、毒親とか、そんな感じの生い立ちを語る内容だけれど、正直そんなことはどうでもいい。
近しい境遇の人がいたらその人に届くといいなと思うし、想像すらしたことない人が読んで他者への想像の一助になればいいなと思うけれど、そんなことは実際、今の私の人生の本題ではない。

無邪気

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賛歌/上映最終日の夜に

賛歌/上映最終日の夜に

2019年に監督した、『永遠が通り過ぎていく』という映画が、昨日まで吉祥寺の映画館でかかっていた。3週間。もともと仕事が入っていた日以外は毎日劇場に行って、ゲストを招いて、話した。そのあと物販を買った人にサインをして、ひとりひとりと更に話した。人と出会って対話をすることは、自分の銀河とは別の銀河を覗き込む行為だから、ずっと脳がチカチカした。みんなぜんぜん違うんだ。しかも、それがそれぞれすごくよくて

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ノウハウ

ノウハウ

 何か失敗をするたびに、人生が終わってしまうような気持ちになる。例えば仕事の日にカラコンを忘れるとか、メイクポーチを置いてくるとか、撮影の日にちを間違えて現場に着くまで気づかないとか、そういう些細なものをはじめ、対人関係に臆病すぎるがゆえに連絡を後回しにしていたら仕事に影響が出るとか、自分のキャパシティを正しく把握できずにパンクしてしまうとか、そういう実害の大きいものまで私の失敗遍歴はバリエーショ

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日々と音楽

日々と音楽

 ずっと昔に聴いていたCDを引っ張りだす。春の空気を煮詰めて美化と真逆の処理をしてもなお胸を透くような美しさがあった音楽に、敬意を込めて再生する、口ずさむ。同じ名前のミュージシャンでも、今はあんまり好きじゃない。偽善者みたいになっちゃってつまんない、なんて消費者みたいなことを思う。大きな音でイヤフォンに流す。体液を煮詰めたような声、という概念がここにあって、チェンソーマンの悪魔のひとつのデザインと

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優しい地球にしたいの

優しい地球にしたいの

アイドルになりたいと思ったことがない。誰かの光になりたい、と平気で言う人のことは信用しない。自分が誰かを救える前提で、しかもその救い方が光前提なんて思考回路にたどり着くこと自体がとても遠く、私にはまるで理解できない。自分自身の存在を許してあげることさえもままならないで生きているせいで、誰かを救いたいなんて言えちゃう人は羨ましいな、きっとまっすぐに明るい場所を歩いて育ってきたんだろうな、とつい僻んで

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「耐え抜く」以外のボタンを押せない日々で

「耐え抜く」以外のボタンを押せない日々で

時間通りに家を出ることもできない私は、それでも再度の緊急事態宣言を受けて自分が一体どう振る舞うべきなのか、頭が悪いなりに考えていた。拙い想像力でまず心配になったのは近所の飲食店。カフェやレストラン、前回の宣言の間に消耗し切って店をたたんでしまったお店がいくつもあった。人に好きになって、繰り返し訪れてもらってやっとなんとか続いていく、というのは私のしている仕事も少し似たようなところがあって、完全

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ゆらめきかた

ゆらめきかた

しばらく気持ちが萎んでしまい、生きることだけで精一杯だったけれど、なんだかんだで空気が入ってきたので久しぶりに日記でも書きます。なんの変哲もない今日の日記。

私にはもう何もかもダメだと思う気持ちになると漫画を一気読みする癖があって、今回のターゲットは昔大流行したアメフト漫画「アイシールド21」だった。スポーツ全般、ルールがわかるものがいまだに一つもないというくらいリアルには通らないで生きてきたけ

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花束の中の針

 わたしには言葉くらいしかましなところが無いのに、それさえも対面コミュニケーションの下手さに相殺されていまだにわたしの、本当のきれいなものを本当にきれいだとそれだけをただ話したい心が浮かばれない。今日発売された雑誌さえいざ読むとほんとうにろくなことを言っていなくて、わたしこれチェックとかなんで通しちゃったの!?と一人で青ざめているけれど、思い返せば取材のときも原稿チェックのときも、「初対面の相手の

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ミッキーの顔

ミッキーの顔

PCの整理をしていたら、お蔵入りにしていたコラムが見つかったので、ここに供養したいと思います。
時は平成の終わり、ディズニーランドにいるミッキーマウスの着ぐるみの顔が変わるというニュースとそれに対する反応を見ながら書いたものでした。

ディズニーランド、普段はそんなに興味がないのだけれど、いざ閉園中で行くことが出来ないとなると無性に行きたくなるのはなんなのでしょう。何も考えずにポップコーンでも食べ

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ピンク/青/はちみつ色

ピンク/青/はちみつ色

髪をピンクにした。先日取材で会った人は、あっけらかんと、「朝から晩までセックスしてますよ最近」と言っていた。一方私は意外と健全なAV業界が撮影をしばらく取りやめにするという事実を知って、その日にはAmazonでハイブリーチを二本とキャンディピンクのカラーバターを注文し終わった。朝から晩までセックスをしている大学生の夏休みみたいな日々も当然嘆かわしい程に羨ましいけれども、私の髪は朝から晩までどうだ、

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いない熱帯魚

いない熱帯魚

「AV女優になっていなかったら、何をしていたと思いますか?」

 この仕事をしていて、とてもよく聞かれる質問だ。
 周りの同業の女の子たちはキラキラと輝く目で、アナウンサーとか、お嫁さんとか、看護師さんとか、思い思いに想像したパラレルワールドの自分を語る。
 私はと言うと、大したものになっていなかっただろうな、と思うだけだ。強いて言えばフリーターだろう。アルバイトだってろくに続きやしなかったけれど

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ふたりだけの宇宙

ふたりだけの宇宙

 誰かと自分の関係は、どこまでも1対1のものだと思っている。私のファンには、100回会いに来てくれた人から、一度ブログにコメントをくれたきりの人まで、さまざまな人がいるけれど、その誰ともの間に、個別の関係がある。私は一人ひとりとのストーリーをちゃんと作り上げたいと願っている。
 私の姿勢を遠くから見ている人から「常連にだけ優しくしてる」とか「あの子、人によって態度違って腹黒いよね」などという批判を

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人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても

人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても

こんばんは、戸田真琴です。

日頃より、このnoteや私の参加した作品、執筆した記事等、気に留めていただいているみなさん、ありがとうございます。

先月から始めたマガジンも、たくさんの方に購読していただけてとっても嬉しいです。大きな本の作業も終わって、日記のように日々のことを話していけたらと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

さて、みなさんに嬉しい報告があります。

Instag

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君とラブドール

君とラブドール

「報われない努力はある」というのは昨年末に出版した本で書いたことで、それは誰にとっても当たり前の事実だと思っていた。何に置いても無駄に悲観することなく、なるべく冷静に考える癖をなんとか保って思考している。だからもちろんあの言葉も悲観ゆえにひねり出した卑屈名言集の一節などではなかったし、なんというか本当にただの普通のことだった。

 本を読んでくれた人に「努力は、たとえ失敗しても経験として体内に蓄積

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