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幸福論

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幸せになるために生まれてきたのではなく、美しく生きるために生まれてきた私たちの、だからこそ目指すべき幸福のために書いていきます。不定期。
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#映画

賛歌/上映最終日の夜に

賛歌/上映最終日の夜に

2019年に監督した、『永遠が通り過ぎていく』という映画が、昨日まで吉祥寺の映画館でかかっていた。3週間。もともと仕事が入っていた日以外は毎日劇場に行って、ゲストを招いて、話した。そのあと物販を買った人にサインをして、ひとりひとりと更に話した。人と出会って対話をすることは、自分の銀河とは別の銀河を覗き込む行為だから、ずっと脳がチカチカした。みんなぜんぜん違うんだ。しかも、それがそれぞれすごくよくて

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映画『永遠が通り過ぎていく』に寄せて

映画『永遠が通り過ぎていく』に寄せて

あらゆる再生への道のりは構造が似ている。
小さな破壊を繰り返し、プロセスなら幾度となく知っていた。たとえこれが命の質を変えてしまうような悲しみでも、目だけは見えている。空気を読まずにラメ入りの、この糸を正しく辿りさえすれば、たった一瞬、叶うことがある。
それは億千光年の片想いが一度だけ、届いたような朝だった。

君の目は黒く、君以外のすべては最悪で眩しい。あと何度傷付いたら神様の気持ちがわかるの

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私のエピソード・ゼロが終わった──映画『永遠が通り過ぎていく』監督・戸田真琴と振り返る3年間

私のエピソード・ゼロが終わった──映画『永遠が通り過ぎていく』監督・戸田真琴と振り返る3年間

2022年4月1日より、映画『永遠が通り過ぎていく』が、東京・アップリンク吉祥寺のほか全国の劇場でロードショーされます。上映を前に振り返る、制作スタートからの約3年間。幾度も編集が施されてきたのは、作品だけではありませんでした。監督を務めた戸田真琴も、一時は自信をうしない、また再生しつつある心で、次なる光を手にしつつあります。

「これまでが、私のエピソード・ゼロでした」──“戸田真琴”の変化を今

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君とラブドール

君とラブドール

「報われない努力はある」というのは昨年末に出版した本で書いたことで、それは誰にとっても当たり前の事実だと思っていた。何に置いても無駄に悲観することなく、なるべく冷静に考える癖をなんとか保って思考している。だからもちろんあの言葉も悲観ゆえにひねり出した卑屈名言集の一節などではなかったし、なんというか本当にただの普通のことだった。

 本を読んでくれた人に「努力は、たとえ失敗しても経験として体内に蓄積

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差別を超えてゆけ

差別を超えてゆけ

「グリーンブック」を観た。もう1ヶ月も前の話だけれど。

劇場を出ながら興奮した頭で、こんなのアカデミー作品賞をとって当たり前じゃん、と思わず口に出してしまった。それくらいの快心の出来だった。腕っ節が強くて、いい加減で、でも情に厚くて心根の優しいイタリア人用心棒・トニーと、孤高の天才黒人ピアニスト、ドン・.シャーリーの心の機微がコミカルにわかりやすく、ユーモラスに描かれていて、大雑把な例えになって

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