recipe no.044 三軒茶屋のどぶろく Rum Raisin


三軒茶屋醸造所からまた新しい商品のリリースとなりました。ラムとレーズンをいれて発酵させた、冬にぴったりの甘いどぶろくです。

このたびtwitterにて行われた「#どぶろく復刻アンケート」で182人ファンの声から1位を獲得し、復刻販売が決まりました。


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このどぶろくについての話をはじめる前に、レーズンの話をしましょう。レーズンの歴史は紀元前にまで遡るといわれます。木になっていたぶどうが自然に乾燥し生まれたのが始まりというのが有力のようです。強い甘味をもったレーズンは人々に親しまれ、保存性の高さから貨幣としても扱われるようになります。得てして、保存性の高い食糧は貨幣価値を獲得します。それは米についても同じです。

保存性の高い米を一度食べられる状態(蒸米)にしてから、それを発酵させるというのはとても面白い行為だと常々思います。なぜなら、発酵という行為自体も、保存性を高めるという側面を持っているからです。例えば、ぶどうを生のまま食べるのではなく、発酵させワインにする(もちろんレーズンにするという選択肢もある)。ハムにも少なからずの菌が関わっているし、チーズなどはミルクの保存性を高めるという点では、まさに分かりやすい例といえます。保存性の高い米をわざわざ蒸して、それを発酵させて=保存性を高めていることは、ある意味では二度手間といえるでしょう

さて、では発酵の機能に頼らずとも保存性の高い米をなぜ発酵させて酒にするのか。それを考える時、ヒントになるのが「祭り」の存在であると考えます。「祭り」の意味は様々ですが、豊作祈願や収穫への感謝だったり自然への畏敬、社会的には仲間のつながりを生み出すものでもあると言えるでしょう。豊作祈願、収穫への感謝も、いわば自然に触れるための行為であると言えます。そういった行為のためにある祭りには酒がつきもの。むしろ祭礼用に造られていたのが始まりとされます。

自然に触れるための祭りの中に酒があったことに着目します。米という栽培した食糧を発酵させ酒にすることで、収穫した米を自然に還し捧げるような役割を持っていて、それにより収穫への祈りを表していたとしたら、発酵の持つ神秘性を感じずにはいられません。誰にも本当のことはわかりませんが、植物のちからを取り戻して自然に還すということは、常々考えていることでもあります。

さて、レーズンの話に戻ります。保存性の高さや味わいから人々に親しまれてきたレーズンを用いて発酵させるということは上記のような文脈を踏襲するとも考えます。保存性が高まったのは、乾燥によって水分活性が落ちたから。保存性が高くなったレーズンをラム酒につけてじっくりと水分を取り戻します。(蒸して米に水を戻す工程と等価であるわけです。)それを米とともに発酵させることで、滋味深さを引き出し、米の豊かさと調和させました。

また、今回使用したラムはフランスの海外県であるマルティニーク島のラムです。使用した理由は主に2つ。1つはフランスの海外県であること。

WAKAZEがフランス・パリに設立した醸造所でもいよいよ3期目の醸造が開始されました。日本に向けての醸造・出荷も終え、着々とSAKEを醸造している最中です。これまでフランスを意識した素材を扱ってきた当醸造所ですが、ここでもフランスと当醸造所を結ぶ素材を選択します。

そしてもう1つの理由はアグリコールラムの製法でつくられたているということです。もともとサトウキビから砂糖をとったあとに出てくる糖蜜を利用してつくられていたラムですが、アグリコールラムはサトウキビを丸ごと絞ってつくられています。手間がかかる手法ですが、そのために香りも高いものが多いのが特徴です。今回はDEPAZという蒸留所の、オーク樽で7年熟成させたものを使用しています。今回のフレッシュな甘さを感じるどぶろくに、時間の経過による豊かな香りも持たせます。

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またどぶろくも、レーズンも、発酵・乾燥させたまま、まるごと味わえるものです。ラムもサトウキビをすべて使ったものを使用することで、今回は植物の恵みをまるごと味わえるようなどぶろくにしようと考えたのです。

また使用したレーズンは山形県鶴岡市の「カラフルぶどう園」のもの。創業時からお世話になっているぶどう園から、大粒のレーズンを使用させていただきました。

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甘さが特徴の、冬にぴったりのどぶろくに仕上がりました。そんなラムレーズンどぶろくはこちらからどうぞ。

お得な福袋も発売中です。

それでは。


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