vol2.仕込水について

おかげさまで、2020年7月で三軒茶屋醸造所は2周年を迎えました。今まで様々な挑戦をしてきた三軒茶屋醸造所ですが、それぞれのお酒についてに語ることはあっても、そもそもどんな思いを持って造っているのか?どういうところで造っているのか?について改めてお伝えする機会はあまり取れませんでした。そこで今回は節目なのもあり、醸造所についてまとめるべく筆をとりました。

予定では

Vol1.お米について
Vol2.仕込水について
Vol3.造りへのこだわりについて
Vol4.目指すお酒について
Vol5.設備紹介
Vol6.杜氏紹介
Vol7.蔵人紹介

のような構成でお伝えして参ります。

今回は酒造りに欠かせない仕込水について。

実は三軒茶屋醸造所では仕込水には近隣の井戸水を用いています。

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水くみの風景。帰りはタクシーです笑

三軒茶屋という土地は昔から水が豊富にあった地域でした。時は江戸時代、名の通り三軒の茶屋が並び、大山阿夫利神社へ参拝するにあたっての最初の休息地点として知られていたのです。現在使っている井戸水も枯れずの井戸として知られており、江戸時代の頃も休息地点として使用されていただろうと想像できます。

また、水が豊富だったことは地名にもそのエピソードが綴られるほどです。例えば隣駅の池尻大橋は、実際に池があったから。また近くにある駒繋神社は将軍の馬がぬかるみで足を取られてしまったのを祀るために建てられたと言います。

また大山街道の先の大山阿夫利神社では大山祗大神が祀られ、別名”酒解神”、酒造の祖神としても信仰されていました。こういったところにも酒造りと縁のある地域であることが分かります。

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大山詣りは江戸時代の行楽のうち最も有名なものの1つ。
落語にもなっています。

水道水を使ってお酒を仕込むことも可能ですが、水は酒の味わいを大きく左右しますし、またこの地域で酒を醸すということを表現するためにも、地域の井戸水で仕込むという選択肢を取ることに決めました。

井戸水は天然水であり、また浅井戸であるため天候によって水に潜む菌叢などは大きく左右されます。造りの観点からすれば、雑菌の混入なども含め、いくらかリスクのある選択となります(もちろん成分的には問題ないことを確かめて使用しております)。しかし独自の基本製法である高温白麹酛を取ることで微生物混入リスクは最大限にまで減らし、さらには水酛・生酛など自然由来の乳酸菌を利用する造りには井戸水に潜む乳酸菌や硝酸還元菌が必須でもあります。

そのときどきの菌の力を活かして造り、それを醪に受け入れるためにも、今使用している井戸水の存在は欠かせません。

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水酛の仕込みの様子。天然の乳酸菌の力を借りて造ります。

山形の米とともに三軒茶屋の水を使用することで、三軒茶屋醸造所の基本は成り立っています。

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