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サンチャスミサケ 柚子×七味 について

三軒茶屋醸造所から新たなSAKEがリリースいたしました。辛味の要素を取り入れた和の冬酒です。

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辛味は五味(甘味、酸味、うま味、苦味、塩味)には含まれず、味覚ではなく痛覚や温度覚を刺激するものとして分類されます。成分としては、唐辛子に含まれるカプサイシンが有名でしょう。

世界中の食文化を見渡せばあらゆるところに辛味の要素は表れます。しかし辛味の代表格である唐辛子が世界に広まったのは、15世紀ごろと意外にも歴史は浅いのです。

唐辛子の原産は南米・中米といわれており、大航海時代を経てヨーロッパに持ち出されたのが、世界に広まった契機となります。今ではインドを始めとするアジア圏では唐辛子が使用されているイメージで、伝統的に存在していたような気にすらなってしまいますが、実はそれ以降に築かれた食文化なのです。

唐辛子がこれほど普及したのは防腐効果と栽培難度が低いことがあるのではないかと推察できますが、それにしても土地固有のものでなかったものが、これほどまでに生活に根付くというのも非常に面白い現象だと思います。

一方日本では肉食が禁止されていたり、塩蔵が主流だったこともあり唐辛子はそれほど幅をきかせていませんでした。ただ昨今の”激辛”ブームもみるに、やはり上述した機能的な理由だけでなく、風味そのものの魅力も、世界中に広まった理由として大きいのではないかと感じます。またそれは日本における唐辛子を振り返ってみてもそうで、保存の技術としてではなく、風味を楽しむ目的の七味唐辛子が日本固有のミックススパイスとしても思い浮かぶのではないでしょうか。

七味唐辛子はもともと漢方の文脈から端を発したといいます。薬研という、薬を煎じる道具に由来する薬研堀という地域では、名の通り医者や薬問屋が多く立ち並ぶところでした。そして今も存続する老舗「やげん堀」で開発されたのが始まり。薬効を期待されただけでなく、江戸で広く食べられていた蕎麦の薬味としても普及したといわれます。

今回はそんな江戸の庶民に愛された七味唐辛子を加えて、米とともに一緒に発酵させることで、ボタニカルSAKEならではの"辛口"を目指しました。

そもそも辛口という分類は非常にやっかいで、日本酒を愛飲する人の中でも解釈が微妙に分かれることもあるでしょう。それならば、本当に”辛い”辛口のSAKEを造ってみよう、そして辛味が加わったSAKEは一体どうなるのだろうという思いが出発点でした。

今回掲げたのは和の"辛口"。七味唐辛子に着目し、浅草の老舗・やげん堀の特別調合の七味を使用させていただきました。先述の通りやげん堀は七味の考案元、徳川家にも七味唐辛子を進呈しているなど由緒ある製造元です。実際に非常に香りも良く、辛さも深みがあり、私自身も日常的に蕎麦にかけて食べています。

今回はやげん堀の七味に加えて、独自に柚子もいれて発酵させています。WAKAZEの最初にボタニカルSAKEである、FONIA SORRA / TERRAでは和のボタニカルを使うことを出発にして開発されたお酒。そしてどちらとも共通して使われているのが柚子という素材です。今や日本を代表する和の素材であり、世界にも広がっています。また醸造にも何度か用いていますが、SAKEとの相性も非常に良いと感じています。(もちろん、柚子酒があるくらいですからね。)

そこで和の辛口としてお酒を造る上で、七味唐辛子にも、SAKEにも相性の良い柚子を用いることで、より香り豊かに、そして和の要素を感じられるお酒を目指しました。

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和の要素を楽しむもよし、ピリッとくる辛味を楽しむもよし。ぜひ鍋などと併せて飲んでみてください。

それでは。

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