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レポ57:雑賀埼灯台(2020/1/3)

「和歌山」の由来となった日本有数の景勝地である「和歌の浦」。今回は「和製アマルフィ」と呼ばれる崖上にそびえ立つ灯台を訪れました。

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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。

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◼️レポ57:雑賀埼灯台(2020/1/3)

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和歌山県和歌山市の南西部に位置する雑賀崎(さいかざき)。「奥和歌浦(おくわかうら)」とも呼ばれる古来より日本屈指の景勝地として知られていましたが、その多くが戦後の開発で失われたとされます。

今回訪れる雑賀崎は和歌浦に唯一残る自然海岸景勝地とされます。自動車に雑賀埼灯台をナビ設定し道に沿って向かうと不意に灯台が姿を現しました。

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この少し手前に「トンガの鼻」という雑賀崎台場への入口がありましたので、少し寄り道します。

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「トンガの鼻」は雑賀崎の北端で、紀州湾が一望できます。今回は立ち寄りませんでしたが、砲台跡もあるそうです。

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先端部からは雑賀埼灯台や目の前の番所台場跡(番所庭園)もよく見えます。

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近年、海沿いの斜面に家が密集する雑賀崎の町並みが、世界遺産にも登録されているイタリア南部のアマルフィ海岸と似ており「和製アマルフィ」とも呼ばれているんだとか。

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町並みを堪能するのも程々に、早速灯台に向かいます。狭い道路を登り下りしながら到着。灯台近くに民間駐車場があります。

実は雑賀崎は町並みも特徴的ですが、雑賀埼(さいかざき)灯台そのものも、日本の灯台の中でも一際変わった構造をしているのです。

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元々は、和歌山市が「鷹の巣」と呼ばれる雑賀崎の崖上に観光用の展望施設を設置する計画を立ち上げました。

しかしながら、この場所は海上交通上の要衝でもあったので、海上保安庁がその展望台に併設する形で灯台を建設し、日本でも珍しい展望施設付き灯台が1960年3月31日に初点灯を迎えます。

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元々は別々の施設のため、灯台は展望台の中央部分を貫くように建てられており、灯台内部には入れません。入らなくとも展望台には登れる少し変わった灯台なのです。

灯台の足下には展望広場が2019年よりオープンし、季節によって変わる夕陽の沈む方角をハートの位置で確かめながら大パノラマを楽しむことが出来ます。

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展望施設に登ると、紀州湾を一望出来ます。紀伊水道に浮かぶ眼前の島は、奥から双子島、中ノ島、大島と呼ばれています。

天気が良ければ、淡路島や四国まで見渡すことが出来るそうです。

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ちなみに、夜はこんな雰囲気です。今回訪れた時は野犬なのかやたらと吠えまくられたので、その迫力と薄暗さも相まって非常に怖かったです。

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何となくガン○ムのようだなぁと思いました。たぶん一つ目のライトがぐるぐる回る姿が似ているからでしょうか。

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展望台からの景色はとても綺麗で、日中や夕方とはまた違う和歌の浦の姿を堪能できます。

万葉歌では「紀伊国の 雑賀の浦に 出で見れば 海人の燈火 波の間ゆ見ゆ」と詠まれており、海人の灯す漁火(いさりび)と漆黒の海とのコントラストが美しい様が描かれています。
現代では、漆黒の海と街並みの灯りが同じような風情を感じさせてくれます。

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そんな訳で今回は和歌を生んだ日本文化と自然の起源とされる和歌の浦にある灯台を訪問しました。

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村上 記

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。