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レポ68:角島灯台(2020/11/4)前編

日本の絶景で有名な山口県下関市の角島(つのしま)。2020年に重要文化財となることが決まった灯台を付属展示室を含めて訪れました。

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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。

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◼️レポ68:角島灯台(2020/11/4)前編

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山口県下関市の豊北(ほうほく)町角島(つのしま)。島へ一直線に伸びる角島大橋は訪れてみたい絶景として、度々メディアでも取り上げられるほど有名な観光名所です。

それまで角島との交通は特牛港からの渡船でしたが、よく波が荒れて欠航になるため、総建設費約132億円をかけて角島大橋の建設を立案。
2000年11月に開通し、格段に利便性が向上するとともに観光客も20万人から5倍の100万人以上にもなりました。

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角島の北西端にある夢ヶ崎波の公園そばに角島灯台は凛とした姿で立っています。

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角島灯台は燈光会が行っている灯台参観事業の「登れる灯台16」の一つです。ですので、日常的に灯台内部に入り登ることが出来ます。

ちなみに今回は「海と灯台ウィーク」の記念バッジを貰いに訪れましたが、あまりの盛況ぶりにあっという間に品切れになってしまったとのこと。

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角島灯台は塔の高さ約30mの石造りの「ザ・灯台」という出立ちです。内部の階段は105段あるそうです。

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塔頂部からの眺め。夢ヶ崎の美しい公園が広がります。日本海の波の荒さも良く分かります。

後ほど出てきますが、角島灯台は明治の頃にこの陸地から資材を運び込み建設されたとのこと。その苦労たるや想像を絶しますね。

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灯頂部からは第1等フレネルレンズが覗き込めます。スケールの大きさは少し分かりづらいですが、西日に照らされたレンズの煌めきは息を呑む美しさ。

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角島灯台は時折夜間の特別一般公開も行うことがあり、その時にはより一層レンズの美しさが際立ちます。虫たちまで光に引き寄せられていますが…

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角島灯台には北北西の国石(クンゼ)岩礁を照らすクヅ瀬照射灯が併設されています。角島灯台の美しく柔らかい灯りに対比するように強く鋭い光を放ちます。

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角島灯台の退息所跡は、灯台記念館として様々な灯台資料が展示されています。

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角島灯台は「灯台の父」リチャード・ヘンリー・ブラントン氏が設計した最後の灯台とされており、日本海側で最初の洋式灯台です。

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設計はブラントン氏ですが、灯台技師としてはジョゼフ・ディック氏が携わり、氏は灯台完成後も「灯明番教授方」として灯明番(当時の灯台職員の呼び名)の育成・指導に注力しました。

写真はジョゼフ・ディックが使用したとされる碁盤と碁石。日本文化にも精通していたんでしょうか。

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灯台建設当時、イギリス人技師は洋風の浴槽やトイレ、洗面所で生活していたようです。異国の日本でお雇い外国人として勤める、というのはさぞや悩みも多かったと思いますが、生活は故郷を想う時間だったんでしょう。

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角島灯台の建造イメージサンプルがありました。解説文の内容をほぼそのまま転写します。

山口県文書館の戸島昭氏の研究によると、角島灯台の建築材料の花崗岩は、瀬戸内海の徳山沖の大津島(おおつしま)産と推測されています。
その石を当時灯台建設のために輸入した洋式の灯台寮附属船に積み、灯台北東の大浜沖まで運びました。石を筏(いかだ)に乗せて海岸近くまで運び、海岸から灯台までは木の桟橋をつくり、桟橋に敷いたレールの上に石を積んだ台車を乗せ、轆轤(ろくろ)を使って巻き上げたとされます。

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塔の建設にあたっては、まず大きな石を突き固めた上に切り石を敷き詰め土台としました。続いて塔に寄り添うように附属舎の建物を作ってこれらも足掛かりとしました。
周囲に軌道を敷き、トロッコを走らせて切り石を運び、地上に設置したクレーンで運び上げ積み上げていきました。目地にはセメントモルタルを入れました。なお、切り石は外国人石工の指導の下に現場で加工されました。

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塔が高く積み上がり地上からのクレーンが届かなくなると、今度は塔の上に設置されたクレーンで材料を吊り上げ、続いて光源の入る灯室部分などを建設しました。
塔室およびレンズ装置は、エディンバラのデビット&トーマス・スティーブンソン兄弟事務所の設計、発注により、フランスのソータス社で製作されたものを、イギリスから輸入し、これを分解して運び、現場で再び組み上げました。

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灯台内部の壁には角島の対岸にある豊北町の肥中(ひじゅう)に住んでいた三重県志摩の瓦職人である竹内仙太郎氏が製作しました。

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角島は灯台だけでなく様々な観光地があります。記者は灯台関連の場所しか訪れていませんが…

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角島灯台近くには「海雑貨屋ライトハウス」さんが営業されており、灯台関連グッズなどが沢山販売されておりました。

なお、ライトハウスさんの駐車場(有料)はお店の営業時間までしか駐車出来ないため、日没後も留まりたい場合はもう少し先にある有料駐車場に停めた方が良いです。

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角島灯台見学で、灯台がどのように造られているかの予備知識を入れた後に、灯台周辺から眺めるとまた見る風景が違って見えます。

立派な石造りの灯台も凄まじい苦労と工夫の上に建てられたと思うと、150年近くもこの美しさを維持していることは本当に凄いことです。

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少し長くなりますので、夢ヶ崎公園の散策は後編に続きます。

 レポ68:角島灯台(2020/11/4)後編

村上 記

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。