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期せずしてVixen 2台持ちになったお話。

こんにちわ!イラストレーターのトウドです。
さてさて今日は我が家にある2台の天体望遠鏡のお話。
我が家にはVixen さんの天体望遠鏡が2台もあるのです。
1台は長男氏が、念願叶って購入したもの。
そしてもう1台はご近所の方から譲り受けたもの。
狭い住宅ですし、一家に2台は正直必要ないのですが
何故そのようなことになったのか、彼らの幼い頃のエピソードを紐解いてみようと思います。
子どもは知らず知らずに沢山の大人に見守られて成長するのだと知る事ができた。

今日はそんなお話。


・長男氏、5歳天体にハマる


あれは長男氏が5歳、幼稚園の年中さんの頃。
5歳と言えば多くの男児が、サッカー、仮面ライダー、クレヨンしんちゃん、などにハマりやんちゃをしたりおふざけに興じるお年頃。
実際長男氏のクラスの男児はサッカーチーム所属率が9割を超え、遊びの時間には皆揃って「戦いごっこ」
また仲良しグループの結束も強くなる時期でした。

5歳児とは、性別差がはっきりとし結束も強まる。その様な時期なのだと思いました。
そんな中で長男氏は乱暴なものや下品なものが嫌い。
つまり5歳児の好むものはおおよそ嫌い。というわけです。
そんな当時の彼が一番関心を示したものが「宇宙」でした。
寝ても覚めても宇宙の話。そうなるといきおい「この目で実際に見てみたい」となるわけです。
若年寄な長男氏ではありましたが、さすがにまだ金銭感覚は身に付いておらず、あまりにカジュアルに「望遠鏡買って~!」と言ってきたものですから
「そんな高いもの、買ってあげられる訳がないでしょう!」と一喝してしまいました。
諦めきれない長男氏は「じゃあ、クリスマス!」と食い下がって来ましたが、わたくしは
「クリスマスプ10回分位のお金がないと買えないのよ」と説明し諦めさせました。

後に調べた所によるともう少しお手頃なラインナップもあったようですが、やはりある程度ちゃんとしたものでないと本人が望むような物は観測できなかたのでないかと思います。

ここで少し思い出話に話を逸らしますね。
いいんですよ。だってここは「トウドのnote」ですからね。ふんふ~ん

・閑話休題 「宝物の思い出」


この頃の長男氏は彼の短い人生の中でも “過渡期” だったように思えます。
幼いながらに周囲との違いに違和感を感じ始めていたのでしょう。
お友達の趣味を否定することこそないものの、決して受け入れることはなく、1人でいたいわけではないけれど積極的に関わろうとしない。そんな風に予防線を張って居たように思えます。
彼は赤ちゃんの頃から睡眠障害気味で、夜泣きに始まり、夜驚、夜尿と、継続的に睡眠がとれるようになったのは6歳頃からだと思います。
夜泣きや夜驚は、子も辛いでしょうが付き合わされる親もかなりしんどい。
夜間寝かせてもらえないのは本当に命を削る行為だと思います。
※夜驚とは、体動を伴う強い夜泣きの様なもので発作的に30分程続きまた眠るというのを繰り返す症状です。
長男氏の場合は数日に1回、または断続的に繰り返し
夜驚のある夜は就寝後、約2時間後位から明け方まで続きました。夜驚の日は「あぁ今夜も寝ずの見張りか…」と覚悟を決めて床についていました。

そんなとある夜驚の晩、いつも通り長男氏が突然叫び声をあげ暴れ始めました。
夫氏は世にいう「イクメン」の類いでよく子どもの事をみてくれますが、唯一夜間だけは対応外でした。
昨今は子どもが感染症の時など自室隔離中は手分けする必要があるので夜間も対応してくれるようになりましたが、子供らの幼い頃は専ら夜間はわたくしの担当でした。
寝ぼけていたのでしょうが珍しく夫氏が「うるさい!」と声を荒げました。
わたくしは仕方なくまだ小さかった長男氏を抱いてリビングへ。
夜泣きや夜驚は不安の症状が強いので、泣いて泣いて仕方ない時にはよく「明日の話」をしたものですが
この時は目を覚ました長男氏が暗いリビングを見渡して

「うちゅうみたいだね」

と言ったのです。
見渡してみればなるほど、家中の待機電力が赤や青に光りまるで星空を見上げているようでした。
そして長男氏はその中の1つを指差して

「あれはアルタイル」

と寝ぼけ眼で嬉しそうに話すのでした。
わたくしは「じゃあベガはどおれ?」とたずねると一生懸命に見回して「あれっ!」と教えてくれました。

なんてかわいい発想だろうか。
今この小さな星空を私たち2人で独占しているのだ。
誰も知らない2人だけの小さな星空を。
これはきっと辛い夜驚に付き合ったわたくしへのご褒美だ。
これは誰にも言わないでおこう。
私たちだけの秘密の思い出にしてそっと宝箱にしまってしまおう。

いつもなら日中にあった子供らのかわいいエピソードは全て夫氏にも共有するのですが、この時だけはわたくしだけの秘密にしようと思ったのです。

秘密なのに今ここに書いていいのかって?
いいんです。だってここは「トウドのnote」ですから。

・長男氏、働き始める

そうそう天体望遠鏡は買ってもらえない事を理解した長男氏。
こんな提案をしてきました。

「ぼく、働くからお給料をちょうだい。」と。

わたくしは当時自宅から50m程離れた場所にあったごみ捨て場まで1回10円でごみを運ぶアルバイトとして長男氏を雇用しました。
それから毎回、長男氏は重いゴミを捨てる仕事を始めたのです。
当時は義母を引き取り看病していたので我が家は5人家族。加えて次男坊はまだオムツ赤ちゃん。
ゴミは重く大きい方だったと思います。
比較的大柄な長男氏とはいえ幼稚園児にとって易い事ではなかったはずですが、そこはさすがの長男氏。
彼の特技は「コツコツと続けること」
雨の日も風の日も、毎週毎週せっせとゴミを運ぶのでした。

・ごみ捨て少年地域で話題に


ゴミを捨てる時間は幼稚園の登園前。
彼はいつも幼稚園の制服姿でゴミを捨てに行っていました。
そんな彼の姿はご近所の方々の目に留まります。
彼は逆の意味でコミュ障かと思うほどに、誰彼構わずよくお話できるタイプ。
ごみ捨て場で毎回会うご近所さん達とはすっかり仲良しに。
往復たったの100mですからいくら幼稚園児とはいえ、せいぜい5分も掛からないはずが、いつも誰かと楽しくお話しして帰ってくる。
なんならご褒美にと、お菓子やら文房具やら色々頂いてくる(笑)
大変なはずのごみ捨てがすっかり楽しいルーティーンになっていたのです。

「あんな姿(制服)でごみ捨てをさせるなんて幼児虐待を疑われるのでは…」というわたくしの密かな危惧はすっかり打ち消されるのでした。

・思わぬ訪問者


その後長男氏は無事に幼稚園を卒園。
晴れて小学生に。ごみ捨てのアルバイトは小学生になっても続き、約3年がたったある日、思わぬ訪問者が訪れます。
それは今までほとんどお話したことののないご近所さんでした。

「あの、お宅の息子さんなんですけど、天体望遠鏡が欲しくてごみ捨てを手伝っておこづかいを貯めていると聞いたんですが…」

と。まだ若干、幼児虐待を疑われるのではとビクビクしていたわたくしはドキーッとしましたが(笑)
ほとんどお話したことのないそのご婦人は続けてこう仰ったのです。

「うちに息子が使っていた古い望遠鏡があります。息子さんが欲しいものが買えるまで、もしよかったらお使いになりませんか?」

と。実はその頃にはすでに欲しい望遠鏡を買いに行ける目処がついていたのですが、わたくしはそのほとんど交流のなかったはずのご近所さんからのお申し出が嬉しくて息子さんの望遠鏡をありがたく譲り受ける事にしました。
案にご好意が嬉しかったのも、もちろんですが
それ以上に近所の名も知らぬ子どもをずっと見守っていて下さった事自体がありがたいと感じたのです。
目頭が熱くなる程感謝の思いが込み上げてきました。

・先生の天体教室


その日の夕方、息子さんと共にご婦人がいらっしゃいました。

こちらが譲り受けたもの。足も木製でレトロな望遠鏡。


2人がかりでえっさほいさと運んで下さった年季の入った望遠鏡は確かに古い品物ではありましたがサイドにはしっかりと「Vixen」と刻まれていました。
奇しくも長男氏が苦労して手に入れた望遠鏡も「Vixen」

「古いけれど、よいメーカーのもので今でもしっかりと星を観ることができますから、今夜一緒に観てみましょう。」

ご婦人がそう仰って、その夜今では大学で研究をされているというその望遠鏡の持ち主の息子さんから
天体観測をご教授頂く事になったのです。

「月の左上の明るい星は木星。 月の右に見える星は土星だよ。」

なるほど天体を観るのはレンズの合わせ方やなんか、本当に微調整が難しい。
先生の仰るとことを一生懸命に聞きながら夢だった天体観測を3年越しに叶えた長男氏。

もし幼稚園の時におもちゃの望遠鏡をプレゼントしていたらこんな素敵な出会いには巡り合えなかったでしょう。

長男が先生からご教授頂いている間、わたくしはご婦人から息子さんの子ども頃のお話を伺いました。
かつてこの地域にまだ空き地が多かった頃、空は澄んで今よりも観測はしやすかった。
寒い夜に観測に行く時はよく暖かい飲み物をポットに入れて差し入れを持っていったものだと。
ご婦人は懐かしそうにお話していらっしゃいました。
子育ての先輩の貴重なお話を伺えた思いました。
その様に3人の息子さんをのびのびとお育てになって今息子さん達はそれぞれ好きなことをお仕事になさっていらっしゃるようです。

好きなことにたっぷりと時間を使って学べるということは本当に贅沢なことです。
その経験の積み重ねが今の息子さんのお姿なんだろう。
なんて感慨に更けっていると
今度は別のご近所さんが通りかかり

「あら!いいわね。熱心ね。」

と感心しながらお使いに行ったかと思えば、しばらくして買い物袋を手に帰っていらして

「頑張っているご褒美よ。」

とアイスクリームを差し入れて下さいました。
昔、ご婦人が暖かい飲み物を差し入れたように
親ではないが、親のように地域の子を見守って下さっていた方がここにもいらしたのです。

いえきっと、わたくしが気付いていないだけで他にも沢山の地域の大人達が、子ども達をそっと見守って下さっているのです。
そしてそれはもしかしたら、わたくしの子ども時代にもあったのではないかと今さらながらに沸き起こる感謝の気持ちを覚えました。

・子どもの興味関心は移ろうもの



実は長男氏の関心は天体望遠鏡を購入する頃にはすっかり宇宙から、化石などの古生物の方に移っていました。
子どもですから興味関心の移り変わりはあって当然だと思います。

しかしながら、本当に欲しいと思ったものを

「自分の力で手に入れた。」

という経験は掛け替えのないものになったはずだし、それに伴ってこんなに素敵な出会いがあったことは、よい思い出になったことと思っています。
そしていつの日か実はその目標達成を見守ってくれた大人が沢山いたことにも気付いて欲しいです。

後に彼の関心は古生物から生物全体へと広がっていくのですが、古生物学も天文学も実は同じ「地学」で繋がっている事を彼は知ります。
そんな彼は小学校入学時の自己紹介カードに、好きなもの「自然」と書きました。
きっと「化石も星も、植物も生き物も全部好き。だから…」と考えたのでしょうね。

その頃になっても多くの男子がフォーマットでもあるのかと疑う位に好きなものの欄には「サッカー」と「ぶどう」(何故でしょうね?笑) の二択だったのに対して堂々と自分の好きなものを書いた長男氏。

友達との不一致に悩んで予防線を張っていたあの頃の長男氏の影はすっかりなくなっていました。

・あとがき


余談になりますが、今年わたくしがクリエポに出展した際、熱心にわたくしのポートフォリオをご覧下さった男性がいらっしゃいました。
その胸にかかる「来場者証」に「Vixen」の文字が書かれているのに気が付いてしまい思わずわたくし
「Vixenさんなんですね!」と申し上げてしまいました(汗)
通常、来場者のお名刺は先方が名乗るまで見て見ぬふりをするのがマナーかもしれません。
でもクリエポは「商談会」イラストレーターゾーンに訪れる多くの来場者様は出版社さんなどが多いのです。
まさかそんな所にVixen さんがいらっしゃるとは思わずすっとんきょうな声をあげてしまった訳です。
その男性はポートフォリオから目を離さずに

「あぁ、ご存知ですか?」

と仰いました。
わたくしは「知っているも何も!我が家にはVixen さんの望遠鏡が2台もあるんですよ!」と
意気揚々とお話してしまいました。
するとその方は
「我々は“星を見せる会社”ですが、実はその言葉の前には“足元の地球を含め”という前置きがあるのです。ですから足元の植物に関わる仕事もしているのです。」
と仰いました。
まさか長男氏だけでなく、わたくしとも繋がりがあったなんて。
確かに天文学も地学。植物も無関係ではないのです。
思わぬ繋がりを知り、嬉しくなったわたくしはその夜
昼間頂戴したお名刺のアドレスにお礼のメールを送ろうとして手が震えます。
お名刺にはなんと「代表取締役社長」の文字が…!

昼間は慌ただしくお名刺を交換させて頂き、その後もひっきりなしにお客様がいらっしゃるのでじっくり拝見する暇がなかったのです。
あ〰️!失礼ぶっこいてないだろうか!わたくし!
だってまさか、Vixen さんの社長さんがお一人でふらっといらっしゃるなんて誰も考えないでしょう!
わたくしとしては、ただただ楽しくお話しちゃったって記憶しかなくてフランク過ぎたのでは〰️としばらく反省しておりました。

お礼のメールにもきちんとご丁寧なお返事を頂戴致しまして本当に素敵な社長さんでした。

この場であの時のご無礼をお詫び申し上げます。
でもまた楽しくお話させて頂けたらすっ飛び上がって喜びます。

それでは、色々と横道にそれましたが(笑)今回もお付き合い下さいましてありがとうございました。

ではまた!


 TOUDO YAYOI Illustration (^_^)ノThanks!☆


























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