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前年比で見よう、GDP成長率

 本日、2018年10~12月期の実質GDP成長率の1次速報が公表されました。前期比年率で1.4%の伸びと、ほぼ民間調査機関の事前予測通りでした。一方で、日経電子版の記事のグラフをみるとわかるように、最近の成長率はプラスとマイナスを繰り返しており、方向感がつかめなくなっています。

 成長率の観察は、前の四半期(今回であれば2018年7~9月期)からの伸び(前期比)を見るのが一般的です。成長率は、1年前の同じ時期(今回であれば2017年10~12月期)からの伸び(前年同期比)を観察する方法もありますが、前期比の方が足元の変化をとらえやすいためです。

 一方、前期比を算出するには、データに含まれる季節性を取り除く必要があります。例えば、冬は降雪などのために住宅建設が少ないなどの要因です。この季節性は統計的手法で取り除きますが、最近のように自然災害などの特殊要因が重なると、データの変化が季節性によるものなのか、基調的な変化なのかを区別するのが難しくなります。

 そこでおススメしたいのが、前年同期比で実質GDP成長率を観察することです。2018年10~12月期の実質GDPの前年同期比成長率はゼロ%でした。下のグラフからの分かる通り、2018年に入ってから前年同期比でみた実質GDP成長率は徐々に小さくなってきています。さらに、2016年初頭から成長率にプラスに寄与してきた純輸出(=輸出-輸入)が2018年7~9月期から成長率を押し下げる方向に働き始めています。米中貿易戦争が注目されがちですが、世界貿易の伸びは2018年初頭から鈍化し始めていて、その影響が日本に波及していたと捉えられます。

 ちなみに、2019年1~3月期の実質GDPの前年同期比成長率がゼロ%以上になるには、前期比でマイナス0.2%(年率ならマイナス0.8%)より高い伸びになる必要があるようです。鉱工業生産の動きから2019年1~3月期は再び前期比マイナス成長になるという声も民間エコノミストの間で出ていますが、それが前年同期比のマイナスにつながるのか注目したいですね。

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