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「予想外の高成長」、どの程度か?

 8月14日の日経朝刊に、先週金曜日に公表された2019年4~6月期の実質GDP成長率の1次速報に関する記事が掲載されてました。記事には以下のくだりがありました。どの程度、異例なんでしょうか?

1次速報の段階とはいえ、2期連続で事前の市場予測の範囲さえ超える結果が出るのは異例だ。

 記事では、QUICKによる事前予測の集計結果と速報値を比較しています。過去にさかのぼって確認できないので、代わりに日本経済研究センターのESPフォーキャスト集計の予測平均を使って確認してみます。GDPの1次速報が公表される2月、5月、8月、11月の集計が直前予測に相当します。また、記事では前期比年率で実質GDP成長率を観察してますが、この表では前期比を用いています。

 結果は以下の表の通りです。確かに、今回の2019年4~6月期、そして前回の2019年1~3月期のかい離幅(両者の差の絶対値)は、2017年4~6月期ぶりの大きさとなっています。

 私が以前書いた論文(下記のリンク)で2004年10~12月期から2016年10~12月期について調べたところ、実質GDPの前期比成長率予測のRMSEは0.29ポイントでした。RMSEは、かい離幅を二乗して平均した値の平方根を取っているので、上記表のかい離幅とは計算方法が異なるのですが、実質GDP成長率の事前予測はそれなりに難しいことがわかります。鉱工業生産などのデータで回帰分析して機械的に行う予測のRMSEは0.50ポイントですので、フォーキャスターは頑張っていると評価することもできますね。

 一方、記事中で言及されている1次速報から2次速報への改定幅(両者の差の絶対値)は、2019年1~3月期についてはほぼゼロ(0.03ポイント)でした。ただ、2017年、2018年ともに4~6月期の改定幅は大きかったので、9月に公表される4~6月の2次速報は要注目です。

 私が以前書いた別の論文(下記リンク)で、2002年4~6月期から2015年1~3月期までについて調べた結果では、1次速報から2次速報にかけての改定幅(同上)の平均は0.194ポイントでした。また、4~6月期と7~9月期の改定幅が他の四半期より大きいという傾向も示されています。需要項目別にみると、政府消費や公共投資において、4~6月期や7~9月期の改定幅が大きいという傾向が観察されます。

 今回の2019年4~6月期の1次速報における予想外の高成長の主役は、記事には触れられていない政府消費です。その意味でも2次速報は注目されますね。

#COMEMO #NIKKEI

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