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毎勤の追加報告書を読んでみた

 本日(27日)、特別監察委員会による毎月勤労統計の不正調査に関する追加報告書が公表された。日経電子版の下記のリンクの記事のように、第三者委員会とは言い難い、厚生労働省に甘い報告書という評価がほとんどだ。私も読んでみたが、同感である。

 そのうえで、この報告書を読んで、私は2つの追加の疑問を持った。

 1つは、「浮いた?」費用の行き先である。全数調査と言いながらサンプル調査を行っていたのであれば調査費用は異なるはずである。下記の西日本新聞の記事にあるように、「2004年に東京都の大企業調査対象を勝手に3分の1に絞り込む不正を始めた後も、本来の全数調査を前提にした予算計上を続けていた」。全数調査と言って予算請求し、実はサンプル調査したのであれば、差額が発生するのではないだろうか。この差額は厚生労働省内でプールされたのだろうか、東京都側に行ったのだろうか、それとも…。この件について、追加報告書では全く触れていない。

 もう1つは、2018年1月からサンプル復元をしたことに対する厚生労働省の担当者の認識である。追加報告書の16ページには以下の記述がある。

 上記のとおり平成30 年1月調査分より中規模事業所についてはローテーション・サンプリング方式が導入されたところ、同年7月から10 月にかけて、統計委員会及びその部会において、ローテーション・サンプリング方式の導入に伴って生じるギャップに関する報告・議論がなされた。その中で、当時の雇用・賃金福祉統計室長I及び政策統括官Jは、ローテーション・サンプリング方式の導入後の「きまって支給する給与」のギャップについて説明を求められた際、客観的には、東京都の大規模事業所について適切な復元処理をしていたにもかかわらず、これを説明しなかった。
 このとき、室長Iは平成30 年1月から、従前行っていなかった東京都の大規模事業所について適切な復元処理を行っていることを認識していたが、前任者である雇用・賃金福祉統計室長Fから、適切な復元処理をしたことによる影響は小さいとの引継ぎを受けていたことから、要因分析の際に考慮せず、これを説明しなかった。

 室長Ⅰが前任のFから「影響が小さい」と言われたから言及しなかったというのは、報告書内から嫌というほどにおってくる統計軽視の姿勢から理解できる(許されないことではあるが)。しかし、前任のFは、どういう根拠から「影響が小さい」と考えたのかについての記述が、追加報告書のどこにもない。結果的には、賃金上昇率が低い日本では、それなりの影響が出たのであり、賃金上昇率を高めに見せるように偽装したのではないかと野党が追及している点でもある。

 「組織的隠ぺいがあったかどうか」に焦点が当たっていることを逆手にとって、重要な事実を隠しているとしたらたちが悪いのではないだろうか。

(2月28日追記)
 F氏の根拠については、1月の報告書(24ページ)に掲載されてました。ご教示いただいたI様に感謝です。

一方で、Fは、ローテーション・サンプリングの導入により、プログラム改修の前後で集計結果に段差が生じると予想し、要因分析を行っていたと述べているが、集計方法の変更に関する一連の対応の中で、東京都の一部の事業所に関する復元処理による影響について、「東京都分を的確に評価すると誤差は0.2%程度であり、正直、誤差の範囲内であると思っていた」と述べており、復元処理による影響を過小評価し、これまでの調査方法の問題、さらには当該機能追加及びそれによる影響について上司への報告をせず、必要な対応を怠った。

 現実には0.3%でしたね。さらに、賃金上昇率がゼロをわずかに上回る日本の現状を考えれば、小さいとは言えないでしょうね。

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