生命 

大木です。
年始の早朝でしたか。ドキュメンタリー番組をやっていて病で死を避けられない母親、それを受け止めて看取られる家族。


なんとなく、物心がついた頃の事を思い出しました。
初めて僕が「死」というものを意識したのは4〜5歳の頃。母親が近所に少しの時間出かけるというのでTVを見て待っていてとの事で、再放送のウルトラマンを見ていました。
おそらくジャミラという怪獣の回だったかと思います。ジャミラは元々人間が怪獣化したという物で、それまでウルトラマンは怪獣を「たおす」「やっつける」と思っていたものを「ころす」「ころした」という様に受け取られ、とても怖くなりました。
その時人も死ぬ、という事を意識しました。自分もいつか死ぬんだ。消えて無くなってしまうのかと物凄く怖くなりました。
おかあさんは…おかあさんもいつか死んでいなくなってしまうんだと物凄く悲しい気持ちになりました。
やりきれない思いで家の中を彷徨き、応接間に重ねてあった座布団にしがみつき、噛みついて泣き声を押し殺した事を覚えています。
そのうち泣き止んで、そろそろ母親が帰って来ると思った時、なんとなくこの状態を見られてはならないと思って涙と涎で濡れた座布団を下の方にしまって隠した所までは覚えています。
なんなんですかね。なんとなくカッコ悪いとでも思っていたのでしょうか。

それから10年以上経って週刊少年ジャンプに連載していた『ダイの大冒険』という作品に出て来るポップが似た話をしていて、それも強く刺さりました。

さらに数年後、僕が大学一年で沖縄から徳島に引っ越して来て2ヶ月後、元々身体が強く無かった母親が急に倒れ、腎不全で危篤になったと父親から電話がありました。いつどうなるかわからないから、いつでも帰って来られる様にしておけとの事ではありましたが、手術等が成功して一命を取り留めました。
その報告を聞くまで、
今まで生きて来て一番怖い時間でした。

母親は人工透析を余儀なくされ、それから12年間の後、僕が32歳の年に亡くなりました。58歳でした。思ったより長生き出来たのかそうでないのかは今でも分かりません。
一つ言えるのは、施設に入っていた祖母が母が亡くなった姿を見て泣き崩れる所が物凄く辛かったという事です。
親より先に子が死んでしまう。これ以上悲しい事は無いんだと思いました。
※とはいえ祖母は100歳以上長生きしていたので、なかなか子供もハードル高いなぁと今では思ったりもしました。

葬式の後、火葬した母の姿を見た時に強烈に「ああ、これはもうどうしようもない」と思いました。経験された方はお分かりいただけると思います。「死」という物の絶対的な力を見せつけられました。

それ以降、今までとは違った価値観で「人はいずれ死ぬ」という事を受け止められる様になりました。自分より年上の人の死を、割とスルッと受け止められる様になりました。
それと同時に周りの自分より若い人には、自分以上に長生きをして欲しいという欲求が生まれて来ました。
「序列」
というやつです。順番を守ってもらわなくてはなりません。

その後、自分より若く、とても素敵な人が亡くなりました。葬式にも参列させていただきましたが、あれは本当に悲しい日でした。今まで生きて来て一番悲しい日でした。
みんな泣いていました。
本当に、本当に悲しかったです。


うちの劇団の話をします。
todokeru,のメンバーは僕より若い人ばかりです。その中で、「ほっといたらこいつ、死ぬんじゃないか?」とたまに思う時があります。
まあ人はそんな簡単に死んだりはしません。
しかし、簡単に死んでしまう事も知っています。
不安に駆られ、声をかけたり相談に乗ったりする事もあります。
そんな時にtodokeru,の裏ルールがある事を伝えます。
「俺より先に死んではいけない」
というルールです。
このルールは絶対です。
なんせ受け入れられる事が出来ませんから。
絶対に無理です。心がバラバラになります。

僕はよく、演劇は生活と地繋ぎだと稽古場で口にします。のたまわっております。
楽しく生きる事と舞台とは繋がっていると確信しています。
そして楽しく生きるという事は、「そんな簡単に死んでやらねえ」という事でもあります。
幸せに、しぶとく生きてやろうぜ。という想いで。




新年早々にとてつもない災害に見舞われ、大きな事故も起こりました。
それよりも前から海の向こうでは虐殺が行われ続け、亡くなった子の亡骸を抱きしめ、亡くなった子の墓に縋り、泣いている親たちの姿を映像ではありますが目にしています。日々。

また身近で新しい生命も誕生おりまして。
その素晴らしさ、温かさも微笑みを交え感じております。
日々。

生命という物を、先ずは自分でしっかりと握りしめ、また周りと手を繋いで、しっかりと握って生き抜いていきましょう。
色々と厳しい世の中ではありますが、
「おとなしくカッコつけて諦めず、あがいてあがいて、そして笑いながら負けてやらねえ!」
好きな作品の言葉をひっつけました。
この意識でいきます。


2024年。
今年もtodokeru,をよろしくお願いいたします。


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