視覚障害者クリケットの国別対抗戦もあるんだよ
市場調査と称して、気分転換に町を歩き回っていたとき、以前JICAと関わっていたという男性に出会った。
混血の肌と顔立ちで、中背で細身、頭はグレーがかかったパンチパーマ、優しい話し方をする人だった。名前は忘れた。
ぼくが視覚障害者協会で働いていると知ると、「最近はブラインド・クリケットはやってないの?昔はやってたんだよ。またやりたいんだよ」という。
ブラインド・クリケット。ぼくはあまりピンとこなかった。だってぼくの理解では、クリケットって要するに野球みたいに投げた球を打つスポーツ。それってつまり、目が大事じゃないか。どうやって打つんだと。見えないのにバッターボックスに立つって怖いじゃないかと。
そういえば、ここに来てももない頃、ブラインド・サッカーをやりたいとスタンリー(会長)に相談したら、クリケットも昔やろうという話があったぞと言っていた。
ぼくはそれをある種の冗談だと思っていたんだけれど、そうではなかったらしい。
とにかく、ぼくとしてはそれ以上の話を協会で聞いたことがなかったし、年間スケジュールを聞いた時もそんなことは言われなかったから何もわからなかったし、その旨を彼には伝えた。
ぼくもとても興味があったから、地方に住んでいる彼が次回首都に来たときに協会に立ち寄ってもらうことにした。
協会に戻って、あの時は聞き流したクリケットの話を聞くと、イベントなど関係なく趣味みたいなものとして以前はクリケットをしていたのだそうだ。
それで、ブラインド・クリケットの大会も、この西インド諸島の国(バルバドス、グレナダ、セントルシアなど)で対抗戦のようなことをやっているらしい。
ただ、その大会に参加するには、航空券やホテル代などもろもろ自分たちで用意しないといけないので出たことはないそうだ。
ざっと計算して1人あたり500USドルといったところか。たしかにハードル高い。そんな余裕うちにはないもの。
最近遊びでもクリケットをしていないのは、単純に人数が集まらなくなったかららしい。
俺クリケット好きなんだけどね、ざんねんだよねとアズラン(全盲)とにこやかにけれど少し寂し気に言った。
ちょっとそれを目指して資金繰りを考えるのもありかなと思う。クリケットやったことないし、ちょっとだけ興味あるし。(たぶん人数合わせでぼくも入れられるだろうから)
久しぶりに良いニュースに出会えたような気がする。
ちょっとぼくのモチベーションにもなりつつある。
なんとなくお金を稼がせる、というより具体性はあった方がよいから。
その目標に向かって逆算していろいろ考えやすいから。
現状1人あたり500USドルは無理。それはつまり、新規事業で稼ぐか寄付を募らないといけない。協会へのたかだか200USドルの寄付でもニュースになるような国だから寄付に頼りきるのは現実的ではない。
というか、以前、空港に募金箱を旅行帰りの外国人向けに使いきれなかったECドル(東カリブの通貨)の受け入れ先として置くのはどうかと言ったとき、誰が管理して、どのタイミングで誰が回収するのか、という話になり、だれかに頼むにもネコババされるだけで良いアイデアだけど自分たちで回収できないなら無理だという話になったことがある(集まっているかどうかわからないお金のために片道1時間ほどかかるところに回収に行くのは精神的もキツいものがある)。一方で自分たちのオフィスで募集するにも、そもそも人が来ないから寄付どうのこうのという話にならないからハードルの高さを感じる。
話が逸れたけれど、1つぼくのこの2年間のテーマというか目標というか指標ができた。
それにしても、目が見えないのにどうやって打つんだ、ほんとに。
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