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126.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第12節「テレビ事業拡大 東映テレビプロ刑事ドラマ前編」

 1958年7月東映は翌年開局予定の日本教育テレビNET)で放映するテレビ映画制作のため、東映テレビ・プロダクション旧テレビプロ:翌年11月第二東映に改組)を設立しました。
 そこから現在まで続く東映東京撮影所東撮刑事ドラマの歴史が始まります。

1.東映東京地区刑事ドラマのはじまり 

①  旧テレビプロ制作『捜査本部』波島進主演(NET系金曜21時45分 30分ドラマ:1959/4/6~6/26:全13回)

 旧テレビプロは、東撮でのテレビ映画初作品として波島進主演『捜査本部』を制作しました。

NET系『捜査本部』(1959/4/6~6/26)

 この番組はNETが開局前だったこともあり、1958年12月27日から東海テレビにて先行放映され、NETでは翌年4月6日からの放映となります。
 『警視庁物語シリーズ』などセミドキュメンタリータッチ刑事映画で定評のある東撮にて旧テレビプロが制作した刑事ドラマは、テレビでも人気を博しました。

 1959年11月旧テレビプロ第二東映に改編、新たに東撮に同名の東映テレビ・プロダクションテレビプロ)が設立されます。 
 テレビプロは当初、京撮で制作していた時代劇子供向きヒーロー時代劇白馬童子』を東撮で引き継ぐとともに、これまで制作してきた『七色仮面』に続く子供向け特撮ヒーロー作品などを手がけて行きました。

② テレビプロ制作『特別機動捜査隊』波島進など主演(NET系水曜22時:1961/10/11~1977/3/30:全801回)

 1961年テレビプロは満を持して再び刑事ドラマに挑戦。10月から波島主演でNET初1時間ドラマとして放映される『特別機動捜査隊』の制作を手掛けます。

1961年10月発行 社内報『とうえい』第45号

 このドラマは、実際にあった事件を素材に創作したことでリアリティがあり、放映が始まると高い視聴率を獲得。大ヒット、シリーズ化しました。

NET系『特別機動捜査隊』(1961/10/11~1977/3/30)

 波島の立石班、中山昭二の藤島班、シリーズ後半からは青木義郎の三船班、里見浩太朗の高倉班、亀石征一郎の矢崎班、葉山良二の日高班などがローテーションで主役として活躍し、15年半全801話続く長寿番組となります。

1963年3月発行 社内報『とうえい』第62号
1963年3月発行 社内報『とうえい』第62号
1963年3月発行 社内報『とうえい』第62号

 テレビの人気を受け、1963年3月には千葉真一主演、太田浩児監督にて劇場版『特別機動捜査隊』が公開されました。

1963年3月 東映『特別機動捜査隊』太田浩児監督・千葉真一主演

 引き続き5月にも『特別機動捜査隊 東京駅に張り込め』と2作の映画が上映されます。

1963年5月 東映『特別機動捜査隊 東京駅に張り込め』太田浩児監督・千葉真一主演

 またこの間の1965年にはNET以外の局の制作を請け負う目的などで東映東京制作所が設立され、第74回でご紹介したようにTBS系『キイハンター』(1968/4/6~1973/4/7)が大ヒットしました。

2.1970年代から始まるテレビプロ制作刑事関連ドラマ

 1970年代に入るとテレビは爆発的に普及し、東映テレビドラマ製作がますます拡大します。

③ 『非情のライセンス』天地茂主演(NET系木曜22時:1973/4/5~1980/12/4:全202回)

 1973年4月にはNET木曜22時 から、野際陽子が歌った『キイハンター』のエンディング曲と同じタイトルの刑事ドラマ、天地茂主演『非情のライセンス』の放映が始まります。

1973年5月発行 社内報『とうえい』第175号

 生島治郎凶悪シリーズ』が原作のこのハードボイルド番組は、警視庁特捜部会田刑事役天地のニヒルだが人情味のある演技が人気を集めシリーズ化。休止期間も含めると足掛け7年全202回続く人気ドラマとなりました。

NET系『非情のライセンス』(1973/4/5~1980/12/4)

 天地茂が歌う挿入歌「昭和ブルース」もヒットします。

『非情のライセンス』警視庁特捜部会田刑事役主演天地茂

④ 『ザ・ボディガード』千葉真一主演(NET系木曜22時:1974/4/4 ~ 9/26:全26回)

 『非情のライセンスNET木曜22時 枠にて、休止期間中の1974年4月から千葉真一主演『ザ・ボディガード』がスタートします。

1974年3月発行 社内報『とうえい』第183号

 前年に映画『仁義なき戦い 広島死闘篇』や『ボディガード牙』で注目を集めた千葉は、この年2月に公開した空手映画『激突!殺人拳』がヒットし勢いに乗っていました。

『ザ・ボディガード』主演千葉真一

 このドラマには、主演した千葉の他に弟の千葉治郎、弟子のジャパン・アクション・クラブJAC)志穂美悦子、そして目黒祐樹などが出演し人気を集めます。

NET系『ザ・ボディガード』(1974/4/4 ~9/26)

 1975年4月NETTBSのネットワークが改編され、関西地区の毎日放送TBS系列に、朝日放送ANB系列にシフトチェンジしました。

・『ザ★ゴリラ7』(NET系金曜21時:1975/4/4 ~ 10/3:全26回)

 ネットワーク改編後、千葉主演のアクションドラマの新番組『ザ★ゴリラ7』が金曜21時枠に変わって放映されます。

NET系『ザ★ゴリラ7』(1975/4/4 ~ 10/3)

 この作品には前作『ザ・ボディガード』のメンバーだった目黒千葉(治)志穂美にしきのあきら夏八木勲マリア・エリザベス(後ゴールデンハーフ森マリア)が加わりました。
 千葉をリーダーとする7人のボディーガードが活躍するドラマの第1話は石井輝男が監督しています。

 ・『燃える捜査網』(NET系金曜21時:1975/10/10 ~ 1976/1/16:全14回)

 『ザ★ゴリラ7』終了後、この枠で続けて千葉主演の刑事ドラマ燃える捜査網』が始まりました。

1975年10月発行 社内報『とうえい』第189号

 ボディガードから刑事に変わったこのドラマには『ザ★ゴリラ7』で共演した志穂美悦子夏八木勲、『キイハンター』の谷隼人に加え、『仁義なき戦い』の金子信雄などが出演しています。

 ・『大非常線』(NET系金曜21時:1976/1/23 ~ 3/26:全10回)

 1976年1月、『燃える捜査網』に続く同枠にて千葉主演『大非常線』が始まりました。

NET系『『大非常線』(1976/1/10 ~ 3/26 )主演千葉真一

 この作品には前作から志穂美が続いて出演しており、スタッフの多くもそのまま引き継がれています。

 1977年4月日本教育テレビ全国朝日放送テレビ朝日)に商号を変更、同時に略称もNETからANBに変わりました。

⑤ 『特捜最前線』二谷英明主演(ANB系水曜22時:1977/4/6~1987/3/26:全509回)

 1977年4月ANB系水曜22時枠にて15年半全801回続いた『特別機動捜査隊』の後を継いで『特捜最前線』が始まります。

1977年3月発行 社内報『とうえい』第200号

 主演の警視庁特命捜査課(通称「特命課」)課長役の二谷英明を始め、藤岡弘西田敏行大滝秀治誠直也荒木しげる、6人の刑事を中心に活躍するドラマは、前作に引き続き高視聴率を獲得、二谷リーダーの下、多少メンバーが代わりながらも10年全509話続く人気シリーズとなりました。

NET系『特捜最前線』(1977/4/6~1987/3/26)

 ちなみに平日22時枠で久米宏の『ニュースステーション』が始まるため、9年目の 第436話(1985年10月10日)以降放送時間が水曜22時から木曜21時に移っています。

警視庁特命捜査課長役主演二谷英明

〇 その他1970年代テレビプロ制作刑事ドラマ 

・ 『五番目の刑事』原田芳雄主演(NET系木曜20時:1969/10/2~1970/3/26:全25回)

NET系『五番目の刑事』主演原田芳雄

・ 『ゴールドアイ』芥川比呂志 主演(NTV系金曜9時:1970/2/6~8/7:全26回)

NTV系『ゴールドアイ』若林豪

・ 『ターゲットメン』小林旭主演(NET系土曜20時:1971/10/09~1972/1/1:全13回)  

NET系『ターゲットメン』主演小林旭

・ 『新宿警察』北大路欣也主演(CX系土曜22時:1975/9/6~1976/2/28:全26回)

CX系『新宿警察』主演北大路欣也

 1970年代東撮テレビプロが制作した『非情のライセンス』は1980年12月まで、『特捜最前線』は1987年3月まで続く東映テレビ部の看板番組となりました。

 一方、東京制作所は、TBS系土曜21時枠1968年春からスタートした大ヒットシリーズ『キイハンター』から始まり、その枠の後番組として『アイフル大作戦』(1973/4/14~1974/5/4)、『バーディ(後にバーディー大作戦』(1974/5/11~1975/5/17)、『Gメン’75』(1975/5/24~1982/3/27)と続けて好調を維持します。
 また、1969年春からTX系月曜21時枠で始まった『プレイガール』(1969/4/7~1974/9/30)の枠をキープし、後番組も『プレイガールQ』(1974/10/7~1976/3/29)、『ザ・スーパーガール』(1979/4/2~1980/3/17)と続く派手なアクションドラマシリーズを制作、大ヒットで1970年代を駆け抜けました。

 1970年代テレビプロ東京制作所が築いた東撮刑事ドラマの伝統1980年代に入ってからも新たなヒット作を生み出し、連綿と続いて行きます。

トップ写真:『特別機動捜査隊』波島進の立石班