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132.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第15節「東映子供向けドラマ 生田スタジオ特撮 後編」

 前回に続き、今回は内田有作退社後に東映生田スタジオで作られた東映特撮作品を紹介いたします。

⑦ NET系土曜19時30分『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975/4/5~1977/3/26 全84話)

1975年4月NET(現テレビ朝日)は、関西地区において毎日放送MBS)から朝日放送ABC)にネットチェンジしました。
 これによってNETは、MBS製作土曜19時30分枠の人気番組「仮面ライダーシリーズ」の放映がなくなるため、ライダーに代わる特撮ヒーロー番組の企画を東映にオファーします。
 東映テレビ部部長渡辺亮徳の指示で、単体ヒーローである「仮面ライダー」との差別化のため、平山亨プロデューサーを中心にそれぞれ個性の違う複数ヒーローが力を合わせ巨大な敵集団と戦う設定の企画が練られました。
 隊員の人数が俎上に載せられ、おさまりの良い5人で決定、コスチューム色別に5色のヒーロー名を検討し、主役の赤色を「レッドレンジャー」とします。
 5人の中の唯一の女子メンバーは「ピンクレンジャー」という名称で考えられていましたが、検討を重ね、子供向きにわかりやすく「もも色」の「モモレンジャー」に変更しました。

モモレンジャー
©石森プロ・東映


 それにあわせて主役の「レッドレンジャー」も「アカレンジャー」、そして5人のチーム名も「ファイブレンジャー」から「ゴレンジャー」に代え、石森章太郎のデザインにてキャラクターが誕生します。

アカレンジャー
©石森プロ・東映
『秘密戦隊ゴレンジャー』タイトルロゴ
©石森プロ・東映


 平山は、メインライター円谷プロで「ウルトラシリーズ」を担当し、東映でも『ロボット刑事』や『イナズマン』、『がんばれ‼ロボコン』で実績のある上原正三を起用。「火をつけて困るランプはなーんだ?」「それは簡単、トランプじゃ。」など、毎回登場する様々な「なぞなぞ」も考えました。

「なぞなぞ」のキレンジャー
©石森プロ・東映

 「アカレンジャーアオレンジャーキレンジャーモモレンジャーミドレンジャー5人そろって ゴレンジャー
 アクションを担当した大野剣友会の殺陣師高橋一俊は、「仮面ライダーの変身ポーズ」に続き、歌舞伎の「白浪五人男」から「ゴレンジャーの名乗りポーズ」を振り付けます。ちなみに名乗り口上は赤から始まりますが、その後の順番は回によってまちまちでした。

5人そろってゴレンジャー
©石森プロ・東映

 5人のヒーロー役にはアカレンジャー海城剛誠直也、アオレンジャー新命明宮内洋、キレンジャー大岩大太畠山麦、モモレンジャーペギー松山小牧りさ、ミドレンジャー明日香健二伊藤幸雄がそれぞれ配役されます。
 そしてメイン監督竹本弘一の演出にて、なぞなぞなどのコメディー要素も取り入れた『秘密戦隊ゴレンジャー』の放映が『仮面ライダーストロンガー』の後番組として開始。同時に『週刊少年サンデー』第18号から石森章太郎原作の連載漫画が始まりました。

『秘密戦隊ゴレンジャー』
©石森プロ・東映

 「バンバラバンバンバン」。戦闘シーンでも流れる渡辺宙明作曲のエンディング曲「秘密戦隊ゴレンジャー」もインパクトがあり、この明るく楽しい新番組は子供たちの間で大ブームとなります。
 第5話からは、後に平山から「戦隊シリーズ」を引き継ぐ吉川進もプロデューサーとして参加しました。

 『秘密戦隊ゴレンジャー』は、話が進むにつれコメディー色が強くなり、首領の黒十字総統率いる黒十字軍の怪人に、機関車仮面などコミカルな造形面白いキャラクターが登場し、ますます人気が高まります。

「シュッポシュッポ」黒十字軍仮面怪人「機関車仮面」
©石森プロ・東映

 また、アクションチームは、戦闘員の「ホイ」という掛け声を生み出した大野剣友会から、第67話以降、ジャパン・アクション・クラブJAC)に代わり、アカレンジャースーツアクター新堀和男からJAC高橋健二(『宇宙刑事シャリバン』主演大葉健二)となりました。
 これ以降「スーパー戦隊シリーズ」のアクションチームJACが担当しています。

 子供たちからの熱い人気を受けた『秘密戦隊ゴレンジャー』の放映は、2年間全84話続きました。

 その間に劇場版も『東映まんがまつり』の中で、テレビシリーズの再編集版4作、劇場用オリジナル版1作が公開されます。

 『秘密戦隊ゴレンジャー』(第6話:1975年7月26日公開)
 『秘密戦隊ゴレンジャー 青い大要塞』(第15話:1975年12月20日公開)
 『秘密戦隊ゴレンジャー 真赤な猛進撃!』(第36話:1976年3月20日公開)
 『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン』(劇場オリジナル:1976年7月18日公開)
 『秘密戦隊ゴレンジャー 火の山最後の大噴火』(第54話:1976年12月19日公開)

1976年7月発行 社内報『とうえい』第192号

 『秘密戦隊ゴレンジャー』は、『東映まんがまつり』の中でも人気が高く、多くの子供たちを集客しました。

 「東映スーパー戦隊シリーズ」は、1975年4月から始まった『秘密戦隊ゴレンジャー』から現在放映中の『爆上戦隊ブンブンジャー』まで連綿と続いています。

⑧ NET系火曜19時『アクマイザー3』(1975/10/7~1976/6/29 全38話) 

 『秘密戦隊ゴレンジャー』の大ヒットにより複数ヒーロー特撮へ注目が集まったことで、玩具メーカータカトクのスポンサードが広告代理店東映エージエンシ-の営業にて決まり、ヒーロー3人の特撮ドラマ『アクマイザー3』が制作されました。 

アクマ族三銃士 ガブラ・アクマイザー・イビル
©石森プロ・東映

 平山に加え若手の鈴木武幸がプロデューサーとして担当、メインライターには『人造人間キカイダー』の長坂秀佳、メイン監督は『がんばれ‼ロボコン』の奥中惇夫を起用し、予算の都合も考慮して主役変身しない設定の仮面劇として企画を進めます。

 地底世界に住むアクマ族の地上侵攻が開始され、アクマ族と人間の混血児ザビタンが仲間の二人イビルガブラと共にアクマ族の三銃士を結成、地上の平和のために一族に戦いを挑むストーリーを作り、三銃士を石森章太郎がデザインしました。

『アクマイザー3』アクマイザー 東映ビデオDVDパッケージ画像
©石森プロ・東映
『アクマイザー3』イビル 東映ビデオDVDパッケージ画像
©石森プロ・東映
『アクマイザー3』ガブラ 東映ビデオDVDパッケージ画像
©石森プロ・東映

 撮影にあたって、当時の生田スタジオには『仮面ライダーストロンガー』『秘密戦隊ゴレンジャー』と2本の人気番組が同時に入っており、『アクマイザー3』は夜中や明け方のスタジオ撮影が強いられ、ほぼロケ撮影となりました。
 そして、大野剣友会が多忙だったこともあり、この作品のスーツアクター生田スタジオで初めてジャパン・アクション・クラブJAC)を起用します。
 変身しない仮面劇は、低予算で苦しみながらも後半からコメディー色を強くするなど奮闘努力し視聴率的には10%から15%と健闘しました。
 その結果、3クール全38話続くとともにマニアの間で高い評価を受けます。

⑨ NET系火曜19時『超神ビビューン』(1976/7/6~1977/3/29 全36話)

 次作にて視聴率20%を目指す平山は、『アクマイザー3』の設定をいくつか受け継ぎつつも主役を変身するキャラクターに代え、ストーリーも一新した『超神ビビューン』(ちょうじんビビューン)を企画しました。

1976年7月発行 社内報『とうえい』第191号

 基本キャラクターを石森章太郎がデザイン。メインライターは『仮面ライダー』の伊上勝、メイン監督には佐伯孚治(たかはる)を起用し、超神ビビューン超神ズシーン超神バシャーン3人の超神ヒーロー大魔王・ガルバー操る妖怪軍団と戦うストーリーを作ります。

超神ズシーン・超神ビビューン・超神バシャーン
©石森プロ・東映

 そして『アクマイザー3』の主役ザビタンの魂を受け継いでビビューンに変身する月村圭役を、『仮面ライダーストロンガー』主演の荒木しげるが演じました。

『超神ビビューン』東映ビデオDVDパッケージ画像
©石森プロ・東映

 変身キャラクターに変えても同様の成績で、前作同様3クールで終了。続いて東映がこの枠を維持し、東京ムービー(現トムス・エンタテインメント)に制作を外注したロボットアニメ氷河戦士ガイスラッガー』に引き継ぎます。 

『氷河戦士ガイスラッガー』
©石森プロ・東映

⑩ NET系月曜19時『5年3組魔法組』(1976/12/6~1977/10/3 全41話)

 前回ご紹介したように、長年にわたりNET系月曜19時は『魔法使いサリー』など東映動画アニメ作品が続いていました。
1976年4月、この枠にて、東映東京制作所が制作した特撮ドラマ『ザ・カゲスター』(1976/4/5~11/29 全34話)が放映されます。

『ザ・カゲスター』
©東映

 このドラマは『仮面ライダー』プロデューサーの平山阿部征司が企画を担当しました。

 平山は、京都撮影所時代、時代劇脚本を書くときにペンネーム八手三郎」を使っており、特撮作品では主題歌の作詞家名としてのみ使用していましたが、この作品からテレビプロデューサーの共同ペンネームとして使いました。

 また、カゲスターデザインは、後に「宇宙刑事シリーズ」などで怪人デザインを数多く手がける野口竜が、めて東映特撮に参加して作ったものです。

ベルスター・カゲスター
©東映

 始めは人間の悪人を退治するストーリーでしたが、第13話からドクターサタン率いるサタン王国の仮面怪人と戦い、3クール全34回続きました。

 『ザ・カゲスター』の後番組として、続いて平山阿部のプロデュースにて生田スタジオで制作した『5年3組魔法組』の放映が始まります。

『5年3組魔法組』
©東映

 魔法をテーマとしたこのファンタジー特撮は、魔女ベルバラを演じた曽我町子がはまり役として子供たちの人気を集め、全41回続くヒット作になりました。

魔女ベルバラ役 曽我町子
©東映

⑪ MBS・TBS系金曜19時『大鉄人17(ワンセブン)』(1977/3/18~11/11 全35話)

 毎日放送MBS)と東映の共同製作で大ヒットした「仮面ライダーシリーズ」は、『仮面ライダーストロンガー』(1975/4/5~12/2 全39話)の終了で一時休止しました。
 その代わりとして、平山が企画を担当して『宇宙鉄人キョーダイン』(1976/4/2~1977/3/11 全48話)を共同製作。アニメ枠だった金曜19時にて放映します。

キョーダイン
©石森プロ・東映

 当時、生田スタジオではNET系『秘密戦隊ゴレンジャー』を制作しており、『宇宙鉄人キョーダイン』は、MBSがこの大ヒット作に対抗するべく東映と共同で「ポスト仮面ライダー」として企画した作品でした。

 石森章太郎デザインのロボット兄弟が主人公の特撮ドラマ宇宙鉄人キョーダイン』は、メインライターに『がんばれ‼ロボコン』『秘密戦隊ゴレンジャー』で活躍する藤川桂介、メイン監督として『仮面ライダー』の竹本弘一が担当。主役の兄弟に『突撃!ヒューマン』(ユニオン映画制作)の夏夕介仮面ライダー2号佐々木剛を配し、新たなヒットシリーズを目指します。
 撮影にあたっては、東京東映制作所が制作しました。
 この作品では『仮面ライダー』で死神博士を演じ子供たちに恐怖を与えた天本英世が正義の海堂博士を演じています。

 『宇宙鉄人キョーダイン』が約1年全48話で終了した後、後番組として生田スタジオにて制作の巨大ロボット特撮大鉄人17』が始まりました。

1977年3月発行 社内報『とうえい』第200号

 この作品はロボットアニメブームを受けての企画で、名前の「17」は「鉄人28号」から1づつ引いて決まったとのことです。
 ロボットキャラクターは、石森章太郎がラフデザインしたものをバンダイの子会社ポピー村上克司が実際の形に完成させました。

大鉄人17
©石森プロ・東映

 ロボットに力点を置き重厚さにこだわったこともあり視聴率は苦戦、第2クールからコメディ要素も入れ明るい番組作りに路線を修正します。

 全35話で終了した後、MBS金曜枠は再びアニメ番組に戻りましたが、2年後の1979年10月から再び「仮面ライダーシリーズ」が復活しました。

 東映としては1967年放映の『ジャイアント・ロボ』以来の巨大ロボット特撮である『大鉄人17』は、その後『スパイダーマン』そして『スーパー戦隊シリーズ』などで登場する東映巨大ロボット特撮の先駆けとなりました。

大鉄人17
©石森プロ・東映

⑫ NET系土曜19時30分『ジャッカー電撃隊』(1977/4/9~12/24 全35話)

 大ヒットした『秘密戦隊ゴレンジャー』の終了後、「スーパー戦隊シリーズ第2作4人のヒーローが活躍する『ジャッカー電撃隊』が始まります。このシリーズから、ポピーの他に後楽園ゆうえんちがスポンサーとなりました。

1977年1月発行 社内報『とうえい』第198号

 1976年11月に子供番組担当のテレビ企画営業第二部が新設され、平山部長代理に昇進し、翌1977年6月には部長に任命されます。
 このシリーズのチーフプロデューサーとなった吉川進は、前シリーズに引き続き脚本上原正三、監督竹本弘一をメインに据え、トランプをモチーフにしたヒーローは、スペードエース桜井五郎役を丹波義隆、ダイヤジャック 東竜伊東平山、ハートクインカレン水木ミッチー・ラブ、クローバーキング大地文太風戸佑介を起用しました。
 敵組織クライム首領鉄の爪(アイアンクロー)は空手映画でおなじみの石橋雅史が演じています。

ジャッカー電撃隊
©石森プロ・東映

 視聴率が苦戦したことから第23話からは宮内洋がビッグ・ワン番場壮吉役としてレギュラー出演するなどテコ入れを進めました。

ビッグ・ワン
©石森プロ・東映

 『ジャッカー電撃隊』は全35話で終了し、生田スタジオ最後の戦隊シリーズとなります。

⑬ NET系土曜19時30分『透明ドリちゃん』(1978/1/7~7/全35話)

 『ジャッカー電撃隊』の後番組として、吉川進プロデューサーにて制作された『透明ドリちゃん』が半年間の予定で放映されます。

1978年1月発行 社内報『とうえい』第210号

 このシリーズも前シリーズと同じく脚本上原正三、監督竹本弘一のメインコンビで生田スタジオにて制作されました。

透明ドリちゃん
©石森プロ・東映

 この東映で初めて魔法少女が活躍する実写特撮は、後にフジテレビ系で人気を呼んだ東映不思議コメディシリーズの先駆けとなります。
 そしてこの番組の終了と共に東映生田スタジオでの制作が終了、東映東京制作所はこの場所から撤退しました。

 『仮面ライダー』と『秘密戦隊ゴレンジャー』。
 東映の屋台骨を支えて来た人気特撮「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」のルーツとなった番組を生み出してきた東映生田スタジオは他にも様々な記念すべき特撮作品を生み出してきた、まさに特撮の聖地でした。  

トップ写真:『秘密戦隊ゴレンジャー』©石森プロ・東映