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127.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第12節「テレビ事業拡大 東映テレビプロ刑事ドラマ後編」

 1980年東映東京撮影所東撮)にあるテレビドラマ制作会社東映テレビ・プロダクションテレビプロ)では、1977年テレビ朝日ANB)で始まった『特捜最前線』が高視聴率を維持、好評のまま続いていました。
 また、1965年に同じく東撮内に設立されたテレビドラマ制作会社東映東京制作所でも、1975年からTBS系にて始まった『Gメン’75』が大ヒット、シリーズ継続中でした。
 今回は、この後の1980年代から東撮内制作された刑事ドラマシリーズをご紹介いたします。

3.1980年代前半東撮地区制作刑事ドラマ

① テレビプロ制作『爆走!ドーベルマン刑事』黒沢年男主演(ANB系月曜20時:1980/4/7~10/27:全22回)

 1980年4月テレビ朝日ANB)にてテレビプロ制作『爆走!ドーベルマン刑事』が始まりました。

1980年3月発行 社内報『とうえい』第236号

 この作品は、武論尊原作、平松伸二作画で1975年から1979年まで『週刊少年ジャンプ』に連載されていた人気マンガを黒沢年男を主演でドラマ化したものです。
 1977年には京撮にて深作欣二監督、千葉真一主演で映画化されていました。

1977年東映『ドーベルマン刑事(デカ)』深作欣二監督・千葉真一主演

 このテレビドラマは、黒ヘルメットに革ジャン、黒塗りのナナハンにまたがり警察犬を従えて登場する黒バイ刑事部隊という設定で、原作からは登場人物の名前だけを使っただけでスタイルやストーリーを大きく変えて制作されています。

ANB系『爆走!ドーベルマン刑事』(1980/4/7~10/27)黒沢年男・志穂美悦子・夏木陽介

② 東撮企画製作部制作『大激闘マッドポリス’80』渡瀬恒彦主演(NTV系火曜21時:1980/4/8~7/22:全16回)『特命刑事』(NTV系火曜21時:1980/7/29~9/30:全10回)

 『ドーベルマン刑事(デカ)』放映翌日の火曜21時からは、NTV系にて渡瀬恒彦主演『大激闘 マッドポリス’80』も始まりました。 

1980年3月発行 社内報『とうえい』第236号

 渡瀬恒彦1976年東映京都撮影所京撮)にて『暴走パニック 大激突』に主演しそのアクションが高く評価され、今回、兄渡哲也が主演した石原プロダクション制作『大都会』シリーズが放映されたNTV系火曜21時枠での刑事ドラマの主役を任されます。

NTV系『大激闘マッドポリス’80』(1980/7/29~9/30)渡瀬恒彦主演

 このドラマは、テレビプロではなく東撮企画製作部テレビ番組初制作作品で、この枠の前作は東映ビデオが制作した松田優作主演の探偵ドラマ『探偵物語』でした。
 東撮渡瀬の部下に梅宮辰夫東映ピラニア軍団出身の志賀勝片桐竜次などアウトロー色の強い顔触れを据え、再び『大都会』の流れをくむハードアクション刑事ドラマとして制作します。 

『大激闘マッドポリス’80』)渡瀬恒彦主演

 スポンサーの意向もあり16回でいったん終了。17回から続編としてタイトルを『特命刑事』に変えました。

NTV系『特命刑事』(1980/7/29~1980/9/30)

 この枠では翌1981年4月から黒澤満率いるセントラル・アーツ制作の草刈正雄藤竜也主演『プロハンター』が始まります。

③ 東撮企画製作部制作『警視庁殺人課』菅原文太主演(ANB系月曜21時:1981/4/13~10/19:全26回)

 1981年4月ANB系月曜21時から東撮制作菅原文太主演の刑事ドラマ『警視庁殺人課』の放映が開始されました。

1981年3月発行 社内報『とうえい』第248号

 警視庁の新設セクション「殺人課」に所属するニューヨーク市警帰りの警部を演じた菅原文太は、民放初主演となります。

ANB系『警視庁殺人課』(1981/4/13~1981/10/19 )菅原文太主演

 菅原の部下として三田村邦彦中谷一郎、プロレスラーの剛竜馬などがレギュラー出演し、最終回で皆殉職しました。

「殺人課」レギュラーメンバー

 俊藤浩滋がプロデュースに入り、菅原の上司に鶴田浩二、ライバルには梅宮辰夫、ゲストも千葉真一など豪華なメンバーが登場し、監督も中島貞夫などの映画監督が担当しています。

鶴田浩二と菅原文太

 この番組終了後、ANB系月曜21時枠は20時から続く月曜ゴールデンワイド劇場となり、『トラック野郎シリーズ』などの日本映画、1982年5月以降は2時間ドラマも放映され、その年の秋からは月曜ワイド劇場に名前が変わり21時スタートの2時間ドラマ及び映画枠となりました。

4.1980年代後半テレビプロ制作ANB系水曜21時枠刑事ドラマ

① 『大都会25時』小野寺昭主演(1987/4/22~9/23:全23回)

 1987年3月ANB系で10年間放送された刑事ドラマ『特捜最前線』が終了しました。

1987年3月発行 社内報『とうえい』第317号

 4月からその後継番組として木曜21時から水曜21時に枠が代わり小野寺昭主演『大都会25時』が始まります。 

1987年3月発行 社内報『とうえい』第317号

 課長役の財津一郎の下に、小野寺の安達班と平田満の仙川班が競いながら事件を解決して行くドラマが展開されました。

ANB系『大都会25時』(1987/4/22~9/23)小野寺昭主演

 小野寺の部下として山下真司大和田獏真梨邑ケイなどが出演します。

安達班係長役小野寺昭と部下の山下真司

 第11話から『大都会25時・千草警察事件ファイル』に改題されました。

② 『ベイシティ刑事』藤竜也、世良公則主演(1987/10/7~1988/3/23:全24回)

 10月、9月に終了した『大都会25時』の後番組として、藤竜也世良公則が主演する『ベイシティ刑事』がスタートします。

1987年9月発行 社内報『とうえい』第323号

 この作品は、9月に終了したセントラル・アーツ制作のNTV系あぶない刑事』(1986/10/5~1987/9/27)と同じく再開発前の横浜を舞台にしたテレビプロ版スタイリッシュなはみ出し刑事ドラマで、『あぶ刑事』スタッフが多数参加しました。

ANB系『ベイシティ刑事』(1987/10/7~1988/3/23 )藤竜也と世良公則

③ 『はぐれ刑事 純情派』藤田まこと主演(1988/4/6~2005/6/29:18シリーズ全440回+2009/12/26までSP4回 全444回)

 1988年4月テレビプロにて、前作『ベイシティ刑事』とは全くタイプの異なる藤田まこと主演の刑事ドラマ『はぐれ刑事 純情派』の放映が始まります。

1988年3月発行 社内報『とうえい』第328号

 人気コメディアンだった藤田は、ANB系列朝日放送ABC)製作の大ヒットテレビ時代劇『必殺シリーズ』の中で主役中村主水を演じ、俳優としても大スターとなっていました。
 15年続いた『必殺シリーズ』は、藤田主演の『必殺仕事人Ⅴ 風雲竜虎編』が1987年7月に終わり、次作近藤正臣主演『必殺剣劇人』も9月放映終了、その後1991年10月まで休止します。 
 そこで人気の高い藤田に新番組の主演をオファーし、これまでと違った人情派の刑事ドラマはぐれ刑事 純情派』(1988/4/6~9/21:全25回)が生まれました。

ANB系『はぐれ刑事 純情派』(1988/4/6~2009/12/26 全444回)

 初回14%からはじまった視聴率は最終回には18.3%まで上昇、平均視聴率15.5%と大ヒットします。
 この後、翌1989年4月から第2シリーズ(1989/4/5~10/4:全26回)が始まり平均視聴率16.4%を記録、11月には劇場版も公開されました。  

1989年11月東映『はぐれ刑事 純情派』吉川一義監督・藤田まこと主演 ©東映・テレビ朝日

 そして『はぐれ刑事 純情派』は2005年6月29日第18シリーズ終了までレギュラー全400回、スペシャル全40回、その後2009年12月の年末スペシャルまで全4回、合計444回続く日本の刑事ドラマを代表する大人気シリーズとなります。

2009年12月26日『はぐれ刑事 純情派』藤田まこと主演 

④ 『さすらい刑事 旅情編』宇津井健主演(1988/10/12~1995/3/22:7シリーズ レギュラー156回+SP3回 全159回)

 好評を得た『はぐれ刑事 純情派』の第1シリーズ終了後、10月から宇津井健主演『さすらい刑事 旅情編』が始まります。 

1988年9月発行 社内報『とうえい』第333号

 このドラマは、JR東京駅丸の内駅舎内の警視庁鉄道警察隊「東京丸の内分駐所」捜査班が管内の鉄道を舞台に活躍する話で、『はぐれ刑事 純情派』と同じ人情テイストの刑事ドラマでした。

ANB系『さすらい刑事 旅情編』(1988/10/12~1989/3/22)主演の宇津井健

 JR東日本協力で多くの人気鉄道車両が登場することもあり、刑事ドラマファンばかりでなく、鉄道ファンからも高い人気を集め、平均視聴率13.7%ヒット作となります。
 このドラマも翌1989年10月から第2シリーズ『さすらい刑事 旅情編II』(1989/10/11~1990/3/21 全23話)が始まり、前シリーズを上回る平均視聴率14.3%を記録しました。
 春の『はぐれ刑事 純情派』、秋の『さすらい刑事 旅情編』と交互に放送が続き、『さすらい刑事 旅情編』は、1995年3月22日に番組終了するまで7シリーズ全159回続く長寿番組となります。
 全7シリーズの平均視聴率15%最終シーズンでも15.4%という高視聴率の人気ドラマでした。

5.『さすらい刑事 旅情編』終了後のANB系水曜21時秋枠の刑事ドラマ

⑤ 『風の刑事 東京発!』柴田恭兵主演(1995/10/18~1996/3/20:レギュラー19回+SP1回 全20回)

 1995年3月終了した『さすらい刑事 旅情編』の後番組として、この年10月からNTV系あぶない刑事』で人気の柴田恭兵を主演に『風の刑事 東京発!』が始まります。

1995年9月発行 社内報『とうえい』第414号

 このドラマも前作に続き東京駅鉄道警察隊が活躍する刑事ドラマで警視庁鉄道警察隊東京駅分室が舞台でした。

『風の刑事 東京発!』(1995/10/18~1996/3/20)東京駅の鉄道警察隊

 この刑事ドラマの平均視聴率10.5%で、次の秋シーズンは同じ柴田主演のアクション刑事ドラマに変わります。

柴田恭兵主演『風の刑事・東京発!』

⑥ 『はみだし刑事 情熱系』柴田恭兵主演(1996/10/1~2004/6/30:8シリーズ レギュラー144回+SP21回 全165回)

 翌年の1996年10月からは、柴田恭兵主演の新シリーズ『はみだし刑事 情熱系』(1996/10/1~1997/3/26:全22回)が始まりました。

1996年9月発行 社内報『とうえい』第425号

 柴田主演の前シリーズ『風の刑事 東京発!』の東京駅鉄道警察隊から警視庁刑事部広域特別捜査隊へ設定が変わった今シリーズは、平均視聴率15.5%とヒット、翌年も継続します。

『はみだし刑事 情熱系』(1996/10/1~1997/3/26)柴田恭兵主演

 翌年春シーズン『はぐれ刑事 純情派』の後、10月の第2シリーズ(1997/10/8~1998/3/18:全23回)は、初回スペシャル17.8%の視聴率から始まり、平均16.4%と前シリーズを超える視聴率を獲得しました。

『はみだし刑事情熱系Ⅱ』(1997/10/8~1998/3/18)柴田恭兵主演

 柴田恭兵主演の『はみだし刑事 情熱系』は、2004年3月まで秋シーズン7シリーズ続き、そのまま春シーズンに継続した第8シリーズはみだし刑事 情熱系 最終章』が6月に終了するまで、レギュラー144回SP21回 と全165回を数える人気シリーズとなりました。 

『はみだし刑事 情熱系 最終章』(2004/4/14~6/30)柴田恭兵主演

 『特捜最前線』終了後、テレビプロ制作の刑事ドラマは、しばらく試行錯誤を続けます。
 様々な種類の刑事ドラマを手掛ける中で、1988年春に始まった藤田まこと主演『はぐれ刑事 純情派』から再びかつての人気を取り戻しました。
 続く秋シーズンも、宇津井健主演『さすらい刑事 旅情編』、1996年からの後継番組である柴田恭兵主演『はみだし刑事 情熱系』と多くのファンの支持を得ます。
 その結果、1988年から2000年を越えるまで、ANB系水曜21時枠は年間を通じての人気刑事ドラマ枠となりました。
 そして、旧テレビプロの『捜査本部』から始まる東映刑事ドラマの伝統は現在に至るまで受け継がれております。

トップ写真:『はぐれ刑事 純情派』主演の藤田まこと他レギュラーメンバー