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同性婚は何故できないのか??

岸田総理は2月1日の衆院予算委で、同性婚の法制化について、「極めて慎重に検討すべき課題だ」「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と述べました。

日本では、同性が法律的に婚姻することは認められていません。同性同士で婚姻届を出しても受理されず、婚姻した場合の法的な効果は生じない、ということになっています。その理由は、憲法24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」とされていること、民法も異性同士の婚姻を前提としていること、にあるようです。

憲法をどのように解釈しようと個人の自由ですが、政府は、憲法は同性婚の成立を認めることを想定していない、と解釈しています。また、憲法はひとまず横に置いて、同性婚に必要な法制度の整備(民法の改正など)を行わないのは、同性婚を認めるべきか否かは家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するからだ、とも説明しています。

以上からすると、同性婚を認めるには、まずは憲法を改正する必要がありそうです。
しかし一方で、現在全国で繰り広げられている同性婚訴訟では、「憲法24条1項が異性間の婚姻を対象にしているということは否定できないとしても、このことをもって直ちに、同項が同性間の婚姻を積極的に禁止する意味を含むものであると解すべきとまではいえない」とする裁判例(大阪地裁令和4年6月20日)も出ています。この裁判例の考え方からすると、憲法まで変えなくても、同性婚は可能だということになります。
学説でも、憲法24条で「両性の合意のみ」とされているのは、婚姻は本人同士の合意のみが何よりも重要であることを明示したに過ぎない、したがって同性同士の婚姻まで禁止されてはいない、との見解もあります。

政府は同性婚は憲法上可能だとは言っていませんが、憲法は同性婚を想定していないと言っているだけで、同性婚は不可能だから憲法の改正が必要だと明言している訳ではありません。今後も、必要もないのに、そう簡単に明言することはないでしょう。現状では憲法に対する態度を決めていない以上、憲法の範囲内で制定されるべき法律で同性婚を可能にするのは、なかなか難しいということになります。

先ほどの岸田総理の答弁は、おそらく、同性婚を認めると家族や社会に大きな影響があるので、まずは慎重に検討すべきだ、ということでしょう。慎重に検討し、同性婚を認める必要があると判断したときに、ややこしい憲法の問題を考え、民法の改正などの法整備を考えれば良いということでもあります。最高裁で何らかの判決が出たら、そのときは本格的に検討するかも知れません。

総理は、伝統的な家族観を重視する保守層の存在もあり、同性婚が激しく意見の対立する課題でもあり、悪く言えば先送りしているのでしょう。如何にも、検討だけして決めない岸田総理らしい姿勢ではあります。

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