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反撃能力の保有は、合憲か違憲か

安保3文書の1つ「国家防衛戦略」に「反撃能力」の保有が明記されることになりました。反撃能力は、敵基地攻撃能力とも言われていますが、相手国が我が国へのミサイル攻撃などに着手した段階で、ミサイル発射基地などを攻撃し、ミサイル発射を阻止しようというものです。
相手国からのミサイル攻撃に対する対処は、発射され飛来してきたミサイルを撃破するBMD(弾道ミサイル防衛)と、ミサイル発射前に基地などを撃破する「打撃作戦」の2本立てで行うのが有効とされています。この打撃作戦を可能にする能力が、議論になっている「反撃能力」ということになります。

これまでは、我が国はBMDを中心に行い、打撃作戦は米軍が行うという形でミサイルの脅威に対処することになっていました。これを明文化しているのが「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」です。

では、BMDだけでミサイル防衛を行った場合、どうなるでしょうか。
たとえば、相手国が多数の移動式ミサイル発射装置を展開し、我が国の迎撃能力を超える数量のミサイルを同時に発射した場合、迎撃できなかったミサイルが我が国に着弾することになります。そのミサイルに核弾頭が搭載されていたら、日本はまさに地獄絵図となるでしょう。
しかし、BMDに加えて、ミサイル発射基地を叩く反撃能力を有していると、相手国はミサイル発射装置を全面展開する作戦が難しくなります。また、指揮統制本部やミサイル貯蔵庫などを攻撃することでも、相手国の作戦遂行を難しくすることができます。つまり、ミサイル攻撃を抑止する効果があるということです。

しかし一方では、北朝鮮の弾道ミサイルの大半は移動式発射装置に搭載されていて、事前にその位置を把握するのが難しいと言われています。そのため、実効性ある反撃能力を保有するには、宇宙からの監視システムが必要だという指摘もあります。
また、反撃能力の保有は専守防衛を逸脱するのではないか、という疑問もあります。憲法上保持できる自衛力は、「自衛のための必要最小限度のもの」です。最小限度か否かは、保持する実力の全体を見て判断されますが、個々の兵器でも、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保持することはできないとされています。したがって、反撃能力を保有する場合、あくまでミサイル発射基地などを攻撃する装備である必要があります。

相手国がミサイル発射に着手する前に攻撃すると、国際法の禁じる先制攻撃になる可能性があり、どの段階でミサイル発射の着手を判断するのかという難しい問題もあります。
憲法の枠内で、弾道ミサイル攻撃をどうしたら有効に阻止できるのか、また甚大な被害をどうしたら回避できるのか。軍拡だ軍拡だと騒ぐのではなく、現実的な議論をする必要があると思います。

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