タイトル後半戦

【本文公開】『バスケセンスが身につく88の発想』◆part8

「センスがある=天賦の才」は完全なる思い込み。誰でも実戦に活かせる「バスケセンス」は身につけることができる!

 3週にわたって連載してきたこの企画ですが、第8回の今回は、最も“バスケセンス”にあふれているといっても過言ではない「ジェイソン・ウィリアムス」の登場です。マイケル・ジョーダンとはまた違った、観客を魅了するさまざまなプレーを見せたウィリアムスから学べる“明日から使えるセンスを高める方法”とは、どのようなものなのでしょうか。



【新たなテクニックを創造する】
——ジェイソン・ウィリアムス


テクニックの誕生と消失

 1891年にジェームズ・ネイスミスによって考案されて以降、バスケットボールではこれまでにさまざまなテクニックが誕生してきました。当初、ボールの移動方法はパスしかありませんでしたが、ディフェンスのプレッシャーを避けるためにピボットが生み出され、さらなるプレッシャーを避けるためにドリブルが誕生しました。その後、ドリブルは“ボールを守るため”のものから“運ぶため”のものへ、さらにはディフェンスを抜くテクニックへと昇華しました。ショットをみても、ボスハンドのショットからワンハンドへと変わった歴史があります。こうしたテクニックは、偶然の産物であったり、誰かによって創造されたりしたものですが、なかには姿を消したテクニックもあります。バスケットボールが始まった当初は、ドリブル中に1回だけ空中にボールを投げ上げる「ジャッグル」という技術が認められていました。しかし、理由は定かではありませんが、1938年施行のルールからジャッグルを認める規定が削除され、ジャッグルはバスケットボールのテクニックから姿を消すことになりました。このように、生み出されたものがテクニックとして生き残るためにはルール改正に耐える必要があります。


新たなテクニックの創造

 テクニックとして生き残るには、一般に広く用いられるようになることも必要です。この意味で、いまだ一般化とは言い難いテクニックを創造したプレーヤーがウィリアムスです。彼の代名詞となっている「エルボーパス」を誰が創造できたでしょうか。その映像を見たときに衝撃を受けたのは筆者だけではないでしょう。バックビハインドパスを出す際に、パスを出す腕とは逆の腕の肘にボールを当てて方向を変えてパスを出すのです。バックビハインドパスに対応しようとした敵のプレーヤーは逆を突かれ、これに対応することができません。タップパスやタップショットなどのように手のひらでボールを扱うテクニックとは異なり、肘でボールをコントロールすることは難しく、難易度が高いエルボーパスは実際のゲームのなかで見られることはありません。しかし、エルボーパスを習得することができればプレーの幅は大きく広がることでしょう。


自由な思考と実行を繰り返す

 観客を魅了するさまざまなプレーを見せたウィリアムスから学べることは、エルボーパスよりも、新たなテクニックを創造することです。新しいプレーを生み出すセンスは、それについての思考と実行を繰り返すことで磨かれていきます。さらに、自由な思考によるプレーを実行できる安全な環境に身を置く必要があるでしょう。


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 読んでいただき、ありがとうございました。第8回の掲載はここまでになります。最終回の更新は7/26(金)です。
 本書『バスケセンスが身につく88の発想』は、初心者を含めたすべてのバスケットボールプレーヤーやコーチ、保護者、そして観戦者(ファン)までを対象に、「制限」から解放された「自由」な発想をするためのヒントとして、世界のトップ選手が見せる“センスあふれるプレー”を解説。計88の思考&実践方法を紹介していきます。
 読み終えたあと、読者の皆さんが「制限にとらわれることなく自由な発想をしたい」「制限にとらわれずに自由な発想をさせたい」と思ってもらえれば幸いです。

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実際の書籍目次

part1 【ジャンプ後のオプションを持つ】——マイケル・ジョーダン
part2 【ドリブルのリズムを変える】——比江島慎
part3 【テクニックの目的を新たに見いだす】——ジェームズ・ハーデン
part4 【パスコースを開通させる】——マジック・ジョンソン
special【イーブンナンバーを攻め切る】——ラッセル・ウエストブルック
part5 【軽く楽に放てる感覚】——ステフィン・カリー
part6 【得意なプレーを伸ばす】——ニック・ファジーカス
part7 【上半身を下半身で調整してショット】——コービー・ブライアント
part8 【新たなテクニックを創造する】——ジェイソン・ウィリアムス
最終回  【加速するスペースを作る】——レブロン・ジェームズ

購入の際は下記サイトより、ご確認ください。


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