競馬連載012

「札幌6ハロン、前半3ハロン33秒2の価値」

「先週の重賞を回顧してみた」
編集部Kによる重賞回顧。レースをあらゆる角度から読み、
独自の視点で語ってみる。次走狙いたい馬、危険な馬を指摘しつつ、
なんとなく役に立ちそうなコーナー。ときに自らの馬券の悔恨と反省も。
基本、競馬が終わった、ちょっと寂しい月曜日に掲載。


【第14回キーンランドカップ】回顧
2019年8月25日(日)3歳上、GⅢ、札幌芝1200m


 先週の札幌は百花繚乱。夏の風物詩WASJにリサ・オールプレス(新)、ミカエル・ミシェル(仏)、そして日本から藤田菜七子と3名の女性騎手が参加、加えて大井の帝王・的場文男も特別枠で出場。なんとなく来日ジョッキーたちの観光気分も感じられる同シリーズだが、今年は華やかさでシリーズの空気を一変させた。興行主としてJRAがその実力を見せた。


 なかでもシリーズの主役に躍り出たミシェル騎手は「日本に恋しました」なんてリップサービスもさすがだが、初勝利をあげたシリーズ第3戦はセンスを感じずにはいられなかった。不慣れなダート戦で中団前の外というポジションを終始馬を促しながらキープ、4角で早めに動いて、直線入り口では一旦突き放す、ジョアン・モレイラ騎手が昨年の札幌で勝ちまくったレース作法にそっくりで、研究熱心を証明した。24歳の美しき女性ジョッキーの活躍は騎手を目指す少女たちを刺激したにちがいない。


 本題から逸れてしまったが、この日の札幌の本当の主役は川田将雅騎手。ミシェル騎手と比べると、笑顔がだいぶ少ないからか主役になりにくい川田騎手だが、2019年年通しても彼はJRAの中心であることはまちがいない。WASJ優勝も公平にランク分けされた騎乗馬で最低着順が5着、力が足りない馬でも掲示板を確保するあたりは腕が立つ証拠。キーンランドCでは初騎乗のダノンスマッシュを勝利に導いた。
 もっとも力がある馬で抜群のスタートを切り、周りの出方を見ながら下げて自らの好きなポジションをとり、あっさり抜け出した。春の高松宮記念では見下ろすような安全策で負けたダノンスマッシュだが、GⅢでは同じ策で問題なかった。さあGⅠはどう乗るのだろうか。


 このレースは前半3ハロン33秒2で後半3ハロン36秒0の超ハイペース。洋芝に加え、札幌はコーナーが占める割合が高い競馬場で、前半3ハロンが3、4角の中間地点まで。通常、コーナーでペースが落ちるので、函館(前半3ハロンは3角入り口付近)の前半3ハロンより遅くなる。札幌の33秒2は価値が高い。演出したのは昨年覇者のナックビーナス。直線は番手にいたペイシャフェリシタを置き去りにし、大きなリードを奪ったが、最後は1ハロン12秒5と失速、前を追いかけなかったダノンスマッシュ、置かれたタワーオブロンドン、リナーテ、ライトオンキューに食われた格好になったが、香港以来の休み明けを考えれば、得意な中山に替わる本番は怖い存在。
 昨年の同レースはモレイラ騎手が好発から楽に逃げて前半3ハロン33秒7、後半3ハロン35秒7、1分9秒4で逃げ切った。短距離戦の0秒5は中距離戦の1秒に等しく、今年の前半3ハロン33秒2は速すぎた。それでも一旦は後続を放す場面があったことは見逃せないところだ。


 ダノンスマッシュが今日のような安全策で構えてくれるならば、有力馬はさらに後ろに意識がいく。札幌で33秒2を叩き出すスピードは前半が下り坂の中山6ハロン戦で大きな武器になる。まして中山得意なナックビーナスは急坂でひと伸びできるダイワメジャー産駒。仕上がりが早い印象もあるが、息長く活躍できるのも特徴であり、6歳秋に迎えた絶好機をモノにする可能性はある。


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