タイトル後半戦

【本文公開】『バスケセンスが身につく88の発想』◆part5

「センスがある=天賦の才」は完全なる思い込み。誰でも実戦に活かせる「バスケセンス」は身につけることができる!

 本書『バスケセンスが身につく88の発想』は、初心者を含めたすべてのバスケットボールプレーヤーやコーチ、保護者、そして観戦者(ファン)までを対象に、「制限」から解放された「自由」な発想をするためのヒントとして、世界のトップ選手が見せる“センスあふれるプレー”を解説。計88の思考&実践方法を紹介していきます。
 読み終えたあと、読者の皆さんが「制限にとらわれることなく自由な発想をしたい」「制限にとらわれずに自由な発想をさせたい」と思ってもらえれば幸いです。

 第5回は、現代バスケットボールにおけるゲームの質を変えてしまったといわれるシューター、「ステフィン・カリー」です。彼から学ぶ“明日から使えるセンスを高める方法”は、やはり「ロングショット」について。どのようなセンスが隠れているのでしょうか。



【軽く楽に放てる感覚】
——ステフィン・カリー


詳細なショットフォーム

 競技規則において、オフェンスの目的は「相手チームのバスケットに得点すること」とされており、「得点すること」を直接的に可能にするテクニックはショットしかありません。オフェンステクニックにおいてショットが最重要視されているのはそのためで、指導書などではつま先の方向や両足の位置関係、腕の角度など、詳細に解説されています。


軽く放つジャンピングショット

 NBAには数多くの名シューターが存在しますが、そのなかでもカリーは際立って輝くシューターです。まずいえるのは、とにかくショットが入ること。本書出版時の通算3ポイントショット成功率は4割超。とても滑らかなフォームを持っており、3ポイントラインから数メートル離れた位置からでも軽々とショットを放ち、決めてきます。ブザービーターを除いてカリーの3ポイントはストップした状態からショットモーションに入る「セットショット」で放たれます。このセットショットは、ジャンプして放つものと、ジャンプせずに放つものとに大別されますが、カリーはジャンプして放ちます。
 ジャンプして放つセットショットは、ジョーダンのようにストップした状態からジャンプし、最高到達点でボールを放つ「ジャンプショット」、ストップした状態からジャンプし、最高到達点に達する前にボールを放つ「エレベーションショット」、そしてストップした状態から一連のモーションでボールを放ち、ボールを放つ局面ではジャンプした状態になる「ジャンピングショット」に分けられます。
 カリーのショットはジャンピングショット。一連のモーションで放たれることが、離れた位置からでもボールを軽々とリングまで飛ばすことができる要素になっているのです。


軽く楽に放てる感覚を探る

 ボールに大きな力を加えるためには、股関節、膝、足首、肩、肘、手首などの関節が途切れることなく順に伸びていく(肩関節は屈曲)必要があります。各関節の動きが重なったり、途切れたりしてしまうとボールに効率よく力が伝わりません。
 カリーは、一定の筋力を備えていることに加えて、関節の連動を素早く行うことで軽々と滑らかにショットを放っているのです。プレーヤー自身が視覚的に関節の動きを確認するには、ある程度の手間がかかり、あまり実用的ではありません。しかし、我々は軽々と楽にロングショットを放つことができない場合に、関節の連動がうまくいっていないことは確認できます。カリーのようなショットを目指すのなら、細かい動きを気にするよりも軽々と楽にロングショットを放てる感覚を探るほうがいいといえるでしょう。


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 読んでいただき、ありがとうございました。第5回の掲載はここまでになります。次回の更新を楽しみにお待ちください。
 88個のプレーを解説する本書籍では、普段見過ごしがちなプレーや気にも留めないような仕草にも焦点を当て、掘り下げることで、その裏側に隠された意味や効果を解説しております。気になった方ぜひ、本書籍をお手に取っていただければと思います。

part1 【ジャンプ後のオプションを持つ】——マイケル・ジョーダン
part2 【ドリブルのリズムを変える】——比江島慎
part3 【テクニックの目的を新たに見いだす】——ジェームズ・ハーデン
part4 【パスコースを開通させる】——マジック・ジョンソン
special 【イーブンナンバーを攻め切る】——ラッセル・ウエストブルック
part5 【軽く楽に放てる感覚】——ステフィン・カリー
part6 【得意なプレーを伸ばす】——ニック・ファジーカス
part7 【上半身を下半身で調整してショット】——コービー・ブライアント
part8 【新たなテクニックを創造する】——ジェイソン・ウィリアムス
最終回 【加速するスペースを作る】——レブロン・ジェームズ

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実際の書籍目次


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