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研究者の足跡Vol.1 齋藤晟さん

「研究」に携わってきた人がどんな人生を送ってきたのかを振り返る『研究者の足跡』のVol.1です!研究に挑み続けてきた人のかっこよさを伝えます!初回は東北大学の斉藤晟さんです!
超新星爆発と出会い、大学院博士課程3年まで研究を続けて見えた景色とは?!
本記事は以下PDFでも公開されています。
https://drive.google.com/file/d/1CxAOT9pvWVVkmHq0aMc3Q2R55yccp9kY/view?usp=sharing

博士課程を経て、見えたもの

研究者を目指して学部時代から天文学を学び、博士課程まで研究を続けてきた。研究を続ける中で、研究者への道のりが具体的に想像できるようになったが、そこで見えたのは、よりレベルの高い周囲との差だった。齋藤さんが味わった研究生活、挫折、そして、見えた景色を振り返る。

宇宙が学べる大学を目指す

現在は星が進化の最終段階で迎える現象である「超新星爆発」についての研究をしている齋藤晟さんは、大学入学から現在まで天文学関連の勉強、研究をしてきた。
昔から星を眺めることが好きだった一方で、宇宙について進んで調べるというほどではなく、当時から研究者に憧れていたわけではなかった。高校生になるまでは特になりたい職業はなかったが、大学受験の際に進路の選択を迫られた。高校生の時は、数学や理科の方が文系の科目より得意で理系だったので、進学先としても理系の学部を選ぶことになる。受験する大学を決める際には、昔から星を見ることが好きだったことを思い出して、天文学が学べる東北大学を目指した。せっかく大学で勉強をするのに、興味がないものを学びたくなかったこともあり、受験を乗り越えて東北大学に入学する。

超新星爆発に触れるまで

大学入学後から将来的に研究ができたら、という思いはありつつも、比較的ぼんやりと勉強をしていた。学科の中で天文学を専攻できる人数には限りがあり、成績順で専攻を選べる制度だったので、その枠に入れる程度の勉強だけすればいいという考えだった。当時は、大学生活の前半で学ぶことが研究にどのように関係するのか、を理解できておらずただ漫然と課題をこなしていた。
学部3年生ごろからは天文学関連の授業が少しずつ増えてきて、4年生になるといよいよ興味のある研究室を選ぶ時期になった。その時に自分が興味のある2つのテーマに関する専門書を読み勉強をすることになる。そこで、齋藤さんは名前がかっこいいという理由で「時間軸天文学」と「銀河考古学」の2つを選び、「時間軸天文学」で星の進化の過程について学んだ。

研究の始まりと院生生活

当時の研究テーマは指導教員に与えられたものであった。なので、研究が進み、結果が出た時は作業がうまくいってる達成感はあったものの、自分の研究に大きな価値を感じているわけではなかった。それでも、これまでの「どこかに答えが載っている勉強」と「教員も答えを知らないことを考える研究」の違いを感じた。
大学院の修士課程入学後も生活はそれほど変わらなかったが、多くの研究会に参加して自分の研究を発表する機会が増える。初めての学会は修士1年の6月にあった国際学会だった。発表はもちろん英語で、つたない英語ではあったがなんとかやりとげたという。さらに、その後の全国の大学院生が集まって研究発表をする「夏の学校」では、優秀な発表として表彰を受けた。国内外での発表を通して、自分の研究が世界中の人に伝わる感覚や、自分の発表に興味をもってくれることに研究の楽しさを感じていた。この時期には大学院の博士課程にも進学して、研究を続けようと考え始めていた。修士課程の2年になる頃には学部4年の頃から研究していた内容を論文にまとめる。その成果もあり、日本学術振興会の特別研究員(DC1)に採用された。

齋藤さんの発表の様子。日本だけでなく、海外での研究会にも数多く参加している。

研究を続けて見えた差

 その後も研究を続けて、チリ、ロシア、ハワイなど、多くの学会や勉強会に参加をした。このまま博士課程に進学をして、その後も研究者としての道を進んでいこうと考えていた。
 ところが、博士課程に進学して多くの研究者を知る中で、優秀な周りの人との差を感じ始める。学会を通じて他の人の発表を聞いたり、年下にもかかわらずより多くの論文を出している人をみたりして、どうやっても追いつけない距離を感じた。この差は学部4年生の時や修士1年の時には気がつかなかった、自分が理解できることが増えたからこそ感じる実力差だった。周りにいる研究者や学生が、これまで自分が考えていたよりも遥かに先にいることに気づいてしまう。

 そして、このまま研究を続けていけるのかという不安が大きくなり、研究職以外の就職を考え始めた。就職を考える際には、研究を通じて培った能力を活かせることを重視した。その時に思いついたことが、研究内容をわかりやすく伝えることだった。これは学会での発表や、普段のゼミなど、研究を続ける中で感じられた強みだった。また、研究が始まってから自分の勉強不足を後悔することが多くあった。自分の学部時代を振り返って、基礎的な勉強がどのように研究とつながるのか、を知れたら良かったのではないかと考えていた。なのでこの「研究につながる勉強の面白さ」を伝えられるような仕事をしたいと考えて、教育に関わる業界に就職を決めた。

研究と向き合い続けた学生生活とこれから

齋藤さんは大学に入学した頃からぼんやりと憧れ続けていた研究者を目指して研究を続けてきた。4年生になり自分の興味のある研究テーマを見つけた。修士課程に入ってからは多くの学会にも参加し、研究の楽しい面を味わった。
 しかし、研究を博士課程まで続けて見えたものは、優秀な周りの人達との実力差だった。もっと勉強をして、優秀な周りと対等に議論ができれば、研究者としてのキャリアを歩み続けたかもしれない。それでも研究をしてきて見つけた「得意なこと」を活かすことにも価値があると踏ん切りがついたという。また、博士過程まで進んでも就職がなくなるわけではないので、一度博士課程に挑戦してみることは悪くないと考えている。

 齋藤さんは今年が博士課程の最終年度である。これまで研究を続けてきて、知識や経験を積んだ今が一番研究を面白いと感じている。研究をするのはあと半年であり、物寂しいと思うところはあるが、齋藤さんは残りの期間を研究者として駆け抜ける。


学部4年生からあまり今と生活は変わらず、研究室で研究に取り組んできた。

研究紹介!〜超新星爆発〜

取材・編集
弘前大学理工学研究科 山本峻

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