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ダンジョンズ&ドラゴンズ5版シナリオ『ベーゲン川に流れる水』(3レベル冒険者4人向け)


はじめに

 このシナリオはダンジョンズ&ドラゴンズの3レベルスタート用シナリオであり、ダンジョン・マスター(以下、DM)が『プレイヤーズ・ハンドブック(以下、PHB)』『ダンジョン・マスターズ・ガイド(以下、DMG)』『モンスター・マニュアル(以下、MM)』を所持していることが前提になっている。

 基本的に善、あるいは中立属性のキャラクターを想定してシナリオは作られている。悪属性のPCの場合、仲間と協調・協力できる理由をうまくプレイヤー(以下、PL)側に付けてもらえるとゲームが円滑に進むだろう。

 舞台はフォーゴトン・レルムのバルターズ・ゲートを使っているが、エベロンなど19世紀後半~20世紀前半モチーフの世界であっても、河川と港湾が近い地域を舞台とすれば整合性が狂うことはない(エベロンのようなスチームパンク世界なら、河川汚染などの描写で世界の解像度もアップする)。DMが好きなように舞台を設定してもいいし、文明レベルが合うのならお好みの次元やオリジナル次元を使うといいだろう。

 このシナリオはウォーハンマーRPGのシナリオフック集『ライクランドに冒険あり!』より着想を受けて作られている。

GM向けシナリオ概要

 バルダーズ・ゲートの門外街を訪れたPCたちは、ワリーヤ・エル=シャーというカリムシャン人の研究者から依頼される。
 なんでも、ベーゲン川に流れる水がおかしなことになっており、塩分濃度が変化したせいで魚が大量死したり、水量が急に変化したりしているのだという。
 彼女はこの事項が何らかの怪物の生息を表しているのではないかと考え、河川調査を行った。事実、これはベーゲン川にある洞窟の中に一匹のクラーケンの幼体が住み着いたからであった。
 一方、カリムシャン人の河川管理団体を自称するギャング集団「ヒュドラ組」なるグループはこの水質調査を執拗に妨害する。
 実は彼らのリーダーはクラーケン(幼体の親だった個体)に襲われて、ディープ・サイオンに変えられていたのだ。ヒュドラ組は今やクラーケンのカルトであり、PCはこの陰謀を明かしてクラーケンを排除せねばならない……!

導入

 PCたちはバルダーズ・ゲートの門外街にたどり着いた冒険者のパーティであり、次の仕事を求めてこの活気ある場所にやってきている。
 PCが酒場に入り、少々飲み食いしつつ「さて、何か仕事はあるだろうか」と壁に貼られた張り紙に目を通す。しけたものか面倒なものが殆どの中で、比較的楽そうな依頼に気づく。

「求む:ベーゲン川の水質調査を手伝ってくれる人足。拘束期間は最大1週間/危険あり/1人につき20GP支払い予定。詳細はカリムシャン人街のワリーヤ・エル=シャーまで」

 安い依頼であるが、今のところろくな依頼がない。君たちはこれを受けることにしてもよいし、もう少し良い依頼が来るまで宿で骨休めしてもよい。

 どちらを選んだとしても、君たちが張り紙を見ていると、一人のカリムシャン人の女性が現れる。思慮深そうな目をしているものの、その貌は焦燥によってかすかにやつれたものだ。彼女はいくつもの付箋が付けられた巻物を小脇に抱えており、ぶつぶつと何かを呟いている(〈知覚〉で目標値10に成功すれば、彼女は誰も彼もが非協力的なことを嘆いていることが分かる)。女性は早足でこちらにやって来ると、君たちが張り紙を見ているのに気づき、話しかけてくる。

「お尋ねしますが、私の依頼を受けてくださる方でしょうか。私はワリーヤ・エル=シャー、ベーゲン川について研究を行っている者です」
「どうか私の依頼を受けてください。これは大変なことなのです。バルダーズ・ゲートの危機かもしれないのです」
「お願いです、せめて話だけでも私の家で聞いていってください。その上で、どうしてもお受けできないのであれば、受けることができそうな方を紹介していただけませんか」

 彼女がそのようにあなたたちにすがりついた時、酒場の扉を開けて男たちが現れる。彼らは一様にヒュドラの入れ墨や、あるいは服にヒュドラを染めており、次々に威圧的にワリーヤに向けてがなる。

「おう、散々警告してやったのにまだくだらん川漁りをして、川をめちゃくちゃにしようってか」
「お前の調査のせいで不漁が続いているんだ! どうしてくれんだよ!」
「同じカリムシャン人と思って甘くしたらつけあがりやがって!」

 怒鳴り散らす彼らはPCたちの方を見ると、腕まくりをしてにらみつけてくる。

「なんだてめえら! このアマから依頼を受けようってなら承知しねえぞ!」
「このあたりの川はヒュドラ組が管理してんだ! それをこの女、調査とやらで川をかき回しやがって!」
「よそ者がしゃしゃり出てきやがって! 畳んでやろうか!」

 PCのうち代表者が〈威圧〉で難易度15の判定に成功すれば、彼らは引き下がる。
 もしPCが〈威圧〉判定に失敗した場合、彼らはポキポキ指を鳴らすと飛びかかってくる。
 ならず者(MM P.349)4体との戦闘になる。ただし彼らの武器はメイスでなく、素手である(そのためダメージはD4となる)。また、相手が先に手を出したとはいえ、武器を抜くとややこしいことになるとPCに伝えておこう。

 2ターン目の終わりに自警団が駆けつけてきて、PCと悪漢たちを引き剥がす。もし武器を抜いているPCがいた場合、〈手先の早業〉で難易度15の判定を行うこと。失敗すると自警団に武器使用を見とがめられ、現行犯で牢獄に連れて行かれる。PCの保釈を試みる場合、金貨20枚を支払わなければならない。また、そのPCが所持する武器は没収される。

 ヒュドラ組のごろつきたちは、自警団がやって来ると口々にワリーヤについての怒りを叫ぶ。自警団の連中はまぁまぁと彼らをなだめると、以下のようにワリーヤに警告をする。

「ワリーヤ、あんたの研究とやらは本当にそんな重要なものなのかい? ベーゲン川は彼らの生活の要だ、せめてもめ事を起こさないようにやって欲しいね」

 そう言うと自警団はヒュドラ組の連中を連れて去って行く。
 ワリーヤはキッと自警団及びヒュドラ組の背中をにらみつけると、PCに向けて言う。

「あの悪党たち! 川魚が突然大量死したり、水量が突然変わったり、水の成分が急におかしくなったのをほったらかしにしていいわけないじゃない!」
「とりあえず、私の家に案内します。そちらで話を聞いてください。今見てもらったら分かるとおり、切羽詰まっているんです」

 彼女はそう言うと、自身の家に案内する。

 ワリーヤの家は門外地域によくある薄汚い小屋で、掃除が行き届いていない。地質学や水理学、河川工学の書籍が来客用の椅子の上に山積みになっているのを彼女は丁寧にどかし、PCに勧める。彼女はスパイスの効いた紅茶を出すと、話し始める。

「改めて名乗らせていただきます。私はワリーヤ・エル=シャー、河川研究を行っている学者です」
「ここ数年ずっと、このベーゲン川に流れる水を調査していましたが、ここ1年で明らかに川が異様な兆候を見せています」

 そう言うと彼女はベーゲン川の地図を見せる。大量のピン止めが地図には突き刺されている。

「こことここ、それからここ。魚が大量に死んで打ち上げられた地点です。次にこのあたりは塩分濃度が急に濃くなり、汽水域に近いとはいえ海の魚が住み着いています。このあたりは干害が起きたわけでもないのに急に水位が2フィート(およそ60センチ)も下がり、川底が見えています」

 ピン止めを次々に指さしながら、彼女は真剣な顔で語る。

「にもかかわらず、ヒュドラ組という河川管理組合が急にしゃしゃり出てきて、私の研究を妨害しているのです。彼らが結成されたのはここ1年、川がおかしくなってから。私はその前からずっと研究していたのに、おかしな管理組合が勝手なルールを決めて、研究を妨害し続けています。彼らが何かもくろんでいるに違いありません」

 彼女は怒りをあらわにする。

「どうかお願いします、水質調査を手伝ってください。専門知識は不要です。私を護衛してくださればよいのです。そうして調査を完成させ、あのヒュドラ組とやらが河川の管理どころか、もっととんでもないことをしていると暴きたててやります」

 PCが依頼を受ける場合、手付金としてワリーヤは金貨5枚をPCに支払い、翌日の明け方に調査を始めると伝える。

 もし断る場合、ワリーヤは食い下がり、翌日以降もPCがいる酒場にやって来る。基本的に酒場には良い依頼がなく、PCがワリーヤの依頼が一番割の良いものと分かるまでこれは続く。

追加調査

 ワリーヤから依頼を受けた場合、PCは以下のような調査を行ってから大休憩を行うか、店で買い物をして大休憩を行うかを1人1回選択しても良い。宿代は5SPである。

・ワリーヤの調査を精査する(〈自然〉か〈生存〉で判定)
・ヒュドラ組について調査する(〈捜査〉か〈説得〉で判定)
・過去にベーゲン川に似た異常がなかったか調査する(〈歴史〉か〈魔法学〉で判定)

ワリーヤの調査を精査する

~14:ワリーヤの調査は正確で適切なものと分かる。
15~19:ワリーヤの調査を見る限り、異常はベーゲン川の下流で起こっているようだ。このあたりは川の一部が枝分かれしており、川の流れを吸い込むように洞窟が存在する。おそらく、このあたりの洞窟は探せば複数の入り口が見つかるだろう。
20~:これらの洞窟にはシー・ハグやリヴァー・ドレイク、オーカー・ジェリー、ジャイアント・バットといった怪物が住み着いているほか、アンダーダークに繋がっているのかクオトアの群れが住み着いたこともある。DMはMMのこれらのモンスターのページを見せること。

ヒュドラ組について調査する

~14:ヒュドラ組はここ1年間で作られた、ベーゲン川の一部を管理する川漁師の組合だ。リーダーの男はギルディ・ポートマンという、元々は外洋船の船乗りだった男で、なかなかに演説や交渉が上手い。彼らはワリーヤの河川調査が魚の死を招いていると批判している。
15~19:ギルディは外洋船の船乗りであったが、1年ちょっと前に海難事故に遭遇してから引退、ベーゲン川の漁師組合を結成した。彼はかなりの金持ちで、ベーゲン川のどこかに金目の物を隠しているという噂がある。他にも、ヒュドラ組に関わった人間が何人か失踪していることから、ヒュドラ組が海賊の隠れ蓑という噂や、ザナサー・ギルドと関わりがあるという噂も実しやかに囁かれている。
20~:ギルディ・ポートマンとヒュドラ組の幹部たちが、ベーゲン川の洞窟に入っていくのを目撃した者がいる。その時は漁をしているのだろうと違和を感じなかったが、よく考えると網や銛などを持っていなかった。洞窟の場所まではきちんと憶えていない(ベーゲン川のほとりにはたくさん洞窟がある)。

過去にベーゲン川に似た異常がなかったか調査する

~14:およそ150年前にベーゲン川に似たような異変が存在したらしい。その時は何らかの怪物が川の自然をゆがめており、英雄たちに討ち取られたという資料があった。
15~19:怪物は海から上がってきた巨大な生き物であり、おそらくその洞窟が産卵場所になっていたらしい。また、その怪物により人間が人間もどきの化け物に変えられたり、彼の信奉者として働いたそうだ。
20~:怪物はクラーケンであり、人間もどきの化け物とはおそらくディープ・サイオンだと分かる。DMはMMのクラーケンのページをPLに見せ、NPCデータのディープ・サイオンについての説明を読み上げること。

怪しい男

 PCたちがヒュドラ組の調査を終えた時点で、乞食のような怪しい男がPCにすり寄ってくる。

「シシシシッ、旦那方。ヒュドラ組について調べてらっしゃる?」
「あたしゃウィージという情報屋なんですがね、旦那(orお嬢様)方が喜ばれそうな情報を持っておりまして」
「金貨1枚でどうです?」

 彼に金貨を渡すと、彼は金貨をそそくさとポケットに入れてこう話す。

「ヒュドラ組のギルディ・ポートマンってやつはね、ベーゲン川の洞窟にかなりのカネを隠してるって話なんでさあ。シシシシッ、旦那(orお嬢様)方、耳寄りでしょこの情報……シシシッ、宝探しでもしてみちゃどうですか旦那」

 そう言って彼は素早く逃げていく。

DMへ:このシーンではPCはウィージを怪しむかもしれないが、いかなる技能や占術を使ったとしても彼は嘘をついていないことがわかる。実際、ウィージは三流の情報屋で、彼が「耳寄り」と思う情報を売りつけているだけなのだ。
 PCには知る由もないが、ギルディ・ポートマンはウィージのような三流情報屋にも分かるように、あえて偽情報を流している。彼はクラーケンの餌にするために、そしてクラーケンのカルトを大きくするために生贄を必要としており、そのために欲に目をくらませた人間が洞窟に入り込んでくるよう、この噂をばらまいているのだ。

ベーゲン川の水質調査

 PCたちがワリーヤの家に行くと、彼女は河川調査のための器具や試薬を準備しおえており、そのまま川へ向かうことになる。

 調査区域はベーゲン川の下流であり、PCたちは調査の手伝いのためいくつかの作業をすることになる。作業は時間が掛かり、ぐずぐずとしていればランダムエンカウントが起こる。GMは書かれた回数だけD20を振ること。出目5以下が出た場合はD6を振り、以下のエンカウントテーブルに沿って戦闘を行う。1回の調査で発生するランダムエンカウントは最大1回である。

ランダムエンカウントテーブル

1:オークx4(400XP)
2:ジャイアント・トードx2(400XP)
3:マッド・メフィットx2、スチーム・メフィットx4(400XP)
4:クロコダイルx4(400XP)
5:ジャイアント・クラブx8(400XP)
6:ジャイアント・コンストリクター・スネークx1(450XP)

 戦闘が始まった時点でワリーヤは〈隠密〉を使って隠れる。敵に囲まれている場合、離脱で速やかに敵から遠ざかり、〈隠密〉を使って隠れる。彼女は基本的に可能な限り戦闘に参加せず、常に出目10を出しているものとして判定を省略する。

作業1:川底の泥の採取

 PCたちはワリーヤが泥をさらい、試薬を垂らしていくのを見ているか、自分たちも手伝うかを選択できる。
 手伝わず、ワリーヤに任せる場合、3回のランダムエンカウントを振ること。
 PCが手伝う場合、全キャラクターが〈自然〉で難易度13の判定を行う。成功した人数だけランダムエンカウントを振る回数が減る(最低0回)。
 戦闘なく切り抜けた場合、PCは400XPを得る。

作業2:魚の死骸の調査

 PCたちはワリーヤが魚の死骸を解剖し、死因を調査するのを見ているか、自分たちも手伝うかを選択できる。
 手伝わず、ワリーヤに任せる場合、3回のランダムエンカウントを振ること。
 PCが手伝う場合、〈生存〉で難易度13の判定を行う。成功した人数だけランダムエンカウントを振る回数が減る(最低0回)。
 戦闘なく切り抜けた場合、PCは400XPを得る。

作業3:川の流れの調査

 PCたちはワリーヤが川の流れに着色したふすまを投げ込み、流れ方を調査するのを見ているか、自分たちも手伝うかを選択できる。
 手伝わず、ワリーヤに任せる場合、3回のランダムエンカウントを振ること。
 PCが手伝う場合、〈捜査〉で難易度13の判定を行う。成功した人数だけランダムエンカウントを振る回数が減る(最低0回)。
 戦闘なく切り抜けた場合、PCは400XPを得る。

 3回の調査が終わった時点で、ワリーヤは調査結果を羊皮紙に書き留めつつ、情報を整理したいので一旦休憩すると伝える。PCたちは小休憩を行っても良い。

 小休憩後、ワリーヤはPCたちに以下のように話す。

「やはり、間違いはありません。川の流れ、魚の大量死、泥の成分、全てが地図のこの場所にある洞窟を指し示しています」

 ワリーヤは地図を取り出し、その一点を指差す。

「この洞窟から塩水が流れ出し、魚を殺しているのです。原因を調査しましょう」

 もしPCたちがワリーヤの調査を精査するで難易度15以上の判定に成功していた場合、別の入り口を探ることを進言しても良い。彼女は探索のプロフェッショナルではないため、PCのアドバイスには従う。

川の流れる洞窟

 この洞窟からは、どこからともなく腐った海水の悪臭が漂ってくる。洞窟の地面や壁には苔がはえてぬらつき、天井の僅かなひび割れから薄明かりが入ってくる場所や、ヒュドラ組が立てた松明を除いては全くの暗闇だ。松明や焚き火は周囲30フィートを”明るい”明るさで照らし、さらに30フィートまでを"薄暗い"明るさで照らす。

巡回者

 洞窟内部にはヒュドラ組のならず者(データはMM P.349の『ならず者』をそのまま使う)が4人巡回している。PCがトラップに引っかかったり、他のヒュドラ組の連中から呼ばれた場合、彼らは速やかに駆けつけてくる。また、PCたちが部屋を移動するたびに1D20を振り、1が出た場合は彼らとエンカウントする。

使い魔

 洞窟内部には通常のバットだけでなく、使い魔のバットが存在する。後述する広間のウォーロックが契約しているこの使い魔は、ウォーロックが殺されるまでの間、PCたち侵入者の後をこっそりと付け回し、PCの戦術などを観察する。放置している場合、PCたちが小休憩を行おうとしたタイミングで広間のならず者4人及びウォーロック、また巡回しているならず者4人の合計9人が襲いかかってくる。
 洞窟で最初の戦闘を行った後、その後部屋内を移動するたびに、DMはこっそりとPCの中で最も〈自然〉の修正値が高いキャラクターに難易度12の判定を行わせること。成功した場合、そのPCはコウモリの1体が不自然に動いていることに気づく。失敗する限りPCはその事に気づかない。
 あるいはディテクト・マジックやプロテクション・フロム・イービル・アンド・グッドの呪文を発動すれば、コウモリが使い魔であることが分かる。

洞窟の入り口(A)

 ヒュドラ組のならず者2人が入り口に見張り番として立っている。彼らの受動知覚10を難易度とした〈隠密〉判定を行うこと。この時、PCが明かりをつけている場合、この判定には不利を受ける。もしPCが発見され、ならず者たちの手番がやってきた場合、彼らは初回の行動で1回のボーナス・アクションを使って大声で仲間を呼び、次のターンに巡回しているならず者4体が戦闘に参加する。

 戦闘に勝利するか、上手くやり過ごした場合、200XPを獲得できる(巡回しているならず者たちがやってきた場合、合計600XP獲得)。

洞窟の入り口(B)

 こちらの入り口には見張りが居ないが、急斜面を下る必要がある上に苔が生えた岩がぬるぬると滑りやすく、降りるには〈軽業〉で難易度13の判定に成功する必要がある。失敗すると20ft滑落する(=ダメージ2D6)。
 ロープやピトンなどを持っていればこの判定に有利を得る。

洞窟の広間

 広間には焚き火があり、それにあたりながらぼそぼそとした声で男女5名が話している。焚き火の周り60フィートは"明るい"状態で、PCたちが難易度10の〈隠密〉判定に成功することで、彼らの話に聞き耳を立て、またやりすごすことができる。
 彼らはPCに気づくまで、このように話す。

「しかし、卵が孵ったといえ、これからが大変だな」
「上手く策が機能すりゃ良いんだが」
「カネに目がくらんだ間抜けはいっぱいいるさ、心配ない」
「それでも倍々に膨らんでいくんだろ? 今日はあの女だけで十分だが、そのうち……」
「バルダーズ・ゲートで行方知れずになる人間はたくさんいる。その上、そのうち本格的に目覚めが来たら、餌に困ることはなくなるってわけさ」

 PCに気づくと、彼らはこう言いながら襲ってくる。

「殺すなよ! 捧げ物なんだからな!」

 ならず者4体とウォーロック1体との戦闘になる。彼らは初回の行動で、1回のボーナス・アクションを使って大声で仲間を呼び、3ターン目の開始時に巡回しているならず者4体が戦闘に参加する。

 戦闘に勝利するか、上手くやり過ごした場合、PCは850XPを獲得する(仲間を呼ばれた場合、合計1250XP獲得)。

通路のトラップ

 このダンジョンの通路のいくつかにはトラップが仕掛けられている。これは黒く塗られた細い釣り糸に鏑矢が装填されたクロスボウが結びつけられたもので、鏃には昏睡を引き起こす毒が塗られている。

 PCが特に警戒していない場合、トラップは+5の〈隠密〉を持っているように隠されている。PCの受動知覚を超えた場合は先頭を歩いているPCが罠にひっかかり、トラップを発動させる。PCが明かりなどを付けていなければ、トラップ側はこの判定に有利を得る。

 PCが警戒している場合、全員に難易度12の〈知覚〉判定をさせること。PCが明かりを付けていなければ、この判定には不利を得る。

 いずれにせよ判定に成功したのなら、難易度15の【敏捷力】判定に成功すれば(適切な道具への習熟があれば習熟ボーナスが追加される)このトラップを解除できる。

 用心深いPCが10フィート棒などで常に先をつつき回している場合、そのキャラクターには難易度15の【敏捷力】判定を行わせること。成功すれば、棒が上手い具合にクロスボウの罠を作動させ、鏑矢が盛大な音を立てるだけで済む(アーケイン・トリックスターの『欺きのメイジハンド』であれば、判定に成功すれば鏑矢を発射させずに罠に気づけ、通常通りの判定でトラップを解除できる)。失敗した場合はその場所に罠がないとPCは思ってしまう。

 トラップは+6で射撃を行い、命中した場合そのPCは1D6+4点の[刺突]ダメージ、及び難易度12の【耐久力】セーブを行う。失敗した場合昏睡毒が体に回り、PCは気絶状態になる。この気絶状態はそのキャラクターが各ターンの終了時に、難易度12の【耐久力】セーブに成功するまで続く。
 鏑矢が音を立てた場合、巡回しているならず者たち4人がすぐに駆けつけてくる。また、大広間にいるごろつきたちが生存している場合、彼らも3ターン目の終わりに駆けつけてくる。

DMへ:トラップが仕掛けられた通路だけでDMが判定を振ると、PLが「何かあるな」と気づき、緊張感が損なわれてしまうことに注意。PCがどこの通路を通っても、DMはそのたびにマスタースクリーンの裏で(あるいはシークレットダイス機能を使って)ダイスを振ろう。

シー・ハグの住処

 洞窟の奥には薄汚い、潮の香りがする小屋が半ば水に浸かっている。そこには鱗まみれの青ざめた肌を持つ、ひどく醜い人型の怪物であるシー・ハグ(MM P.232)がいて、うつろな目をした半魚人のクオトア(MM P.68)たちを怒鳴り散らしている。地下共通語が分かれば、どうもクオトアたちは自身たちが崇める存在が思ったほど強大でないことに文句をつけており、それに対してシー・ハグは怒っている。

「あんたら、シャガ・ナグ=シュ様が育ちきった時の力を知らないから、そういうくだらない事を言うんだ。クラーケンというものは、神にも等しい大いなる存在なんだよ! 卵から孵りたてといえ、あんたらを皆殺しにするには事足りるくらいの力があるんだからね!」

 と地下共通語(※MMのシー・ハグのデータは地下共通語を話さないが、彼女は話すことができる)で怒鳴るシー・ハグ。PCたちはこのモンスターを不意打ちしてもいいし、隠れてやり過ごしても良い。

 もし攻撃する場合、シー・ハグ1体及びクオトア4体と戦闘になる。シー・ハグはクオトアを盾にしつつ、爪や死の眼光による攻撃を行う。
 戦闘に勝利するか、上手くやり過ごした場合、PCは550XPを獲得する。

 また、シー・ハグたちの戦闘に勝利した場合、シー・ハグの住処に転がっている『ブーツ・オブ・ウォーター・ウォーキング』を獲得する。

ブーツ・オブ・ウォーター・ウォーキング
その他の魔法のアイテム、アンコモン(要同調)
売値200GP

このブーツは着用者に『ウォーター・ウォーク』呪文の効果と同一の、液体の上を移動する力を与える。

PCが既に他の敵と戦闘し、叫ばれるなどして侵入がバレていた場合:

 シー・ハグはクオトアたちを〈隠密〉で隠れさせた上で醜い老婆に化けてPCの前に現れ、悪党たちに誘拐されたという嘘を付き、クオトアの隠れ場所に案内する。
 そのうえで彼女はハグの姿を現してPCに襲いかかりつつ、クオトアたちにPCを挟撃させる。

泥沼

 この場所は全体が泥にまみれており、移動困難な地形だ。人間のものらしい、綺麗に骨になった死体が1つ転がっている。死体の横にはバッグが1つ、半ば泥にまみれて落ちている。
 PCがディテクト・マジックを発動した場合、バッグに何らかの魔法が掛かっていることが分かる。
 PCたちがバッグに近づいた場合、洞窟の天井からボトボトと2塊の黄土色をした粘液が落ち、PCを飲み込もうと襲ってくる。オーカー・ジェリー(MM P.31)2体との戦闘になる。ジェリーと戦闘して勝利した場合、900XPを獲得する。

 PCがバッグを手に入れた場合、難易度15の〈魔法学〉判定に成功することで、それが『バッグ・オブ・ホールディング(DMG P.187)』であると分かる。

リヴァー・ドレイクの住処

 この場所の水は濁っているが、水中にかすかにキラキラするものが見える。PCが調査のため水のそばに近づいた場合、PCの受動知覚を目標とし、つがいのリヴァー・ドレイクが不意打ちを行ってくる。
 リヴァー・ドレイクたちは腹を減らしており、PCの賄賂などには応えない。戦闘では彼らはまず『酸の粘液』でPCの移動速度を低下させ、続いて噛み付いては『スピード全開』で水中に飛び戻る戦法を使う。濁った水は彼らに3/4遮蔽を与える。

 ドレイクたちを倒した場合、PCは900XPを得るとともに、水中に沈んでいるキラキラしたものを引き上げられる。それは黄金の小さな彫像で、売却すれば500GPの価値がある。

クラーケンの住処

 この場所はかなり広くなっており、特にひどい腐った海水の臭気につつまれている。天井は高く、緩やかな傾斜の後になみなみとたたえられた黒い水面から悪臭は漂いだしている。

 その場にごろつき2人が松明を持って辺りを警戒しており、ホウライエソと人間を混ぜたような姿の怪物が何かを水に投げ込んでいる。難易度10の〈知覚〉に成功すれば、それが人間を切り刻んだ肉片だとわかる。ごろつきは怪物と以下のようなことを話す。

「ポートマンさん、そろそろもっとたくさん新しい肉を仕入れなきゃなりませんぜ。どうします?」
「失業者向けのビラを撒いてやりゃいい。門外街には乞食がたくさんいるからな。隠し金の嘘に騙されてやってきた連中もそのうちやってくるだろうし、噂が効いてきた頃にはシャガ・ナグ=シュ様も相当力を蓄えているだろう。心配はいらんさ」

 恐ろしい真実であるが、この怪物がギルディ・ポートマンなのだ!

 ギルディ・ポートマンたちはPC達に気づくと襲いかかってくる。この戦闘では、もし大広間や巡回中のごろつきを倒していなかった場合、4ターン目の開始時に彼らが押し寄せてくる。また、もしシー・ハグとクオトアを倒していなかった場合、7ターン目の開始時に襲ってくる。

 この場所ではワリーヤはPCを手助けし、戦ってくれる。

 ポートマンが死ぬと、水面が泡立ち、幾本もの触手が突き出し、ついでキチン質の甲殻、最後にねじくれた眼柄の先の黄色い目が現れる。それはあなた達に向けて怒りと敵意の吠え声をあげると、襲いかかってくる! これが怪物、クラーケンの幼体であり、ポートマンたちに「シャガ・ナグ=シュ」と呼ばれていた存在なのだ!

 PCたちがシャガ・ナグ=シュを殺すか、殺されるか、逃げ出すかすれば戦闘は終わる。

 シャガ・ナグ=シュを殺した場合、速やかに悪臭が消え去り、邪悪な生き物たちが泡を食って逃げていくのがわかる。また、彼の住処からは捧げ物として以下のアイテムが見つかる。

  • 500gp,55sp,30cp

  • 50gp相当の宝石6個

  • グラヴズ・オヴ・スイミング・アンド・クライミング

  • ゴーグルズ・オヴ・ナイト

  • 任意の+1武器2種類

その後

 ワリーヤはこの恐るべき事件を論文にまとめ、発表することで多くの賢人たちの注目を浴びる。その中にはモルデンカイネンやヴォーロサンプ・ゲダームといった高名な魔術師や学者が含まれており、PCたちもこれらの有名人とコネクションを作れるだろう。
 また、ヒュドラ組は解体されることになるが、これはザナサー・ギルドの注意がPCたちに向くことも意味している。今後、PCたちの前にギルドの邪悪な視線が差し向けられることになるかもしれない。

NPC・エネミーデータ

ワリーヤ・エル=シャー、河川学者

 カリムシャン人のワリーヤ・エル=シャーはもともとは浮浪児であったが、とある魔術師によって学ぶ機会を与えられ、立派な学者となった。
 彼女は知を重んじ、地に足をつけた学問によって人助けをすることを望んでいる。

中型・人型生物(ヒューマン)、混沌にして善
AC:15(スタテッド・レザー)
HP:21
移動速度:30フィート

【筋】9(-1)	【敏】16(+3)	 【耐】12(+1)
【知】16(+3)	【判】12(+1)	 【魅】10(±0)

セーヴ:【敏】+5、【判】+3
技能:〈隠密〉+5、〈知覚〉+4、〈自然〉+5、〈魔法学〉+5
感覚:受動〈知覚〉13
言語:共通語、エルフ語、ドワーフ語、水界語
習熟ボーナス:+2

巧妙なアクション:隠身・早足・離脱をボーナス・アクションで行える。

呪文発動能力:ワリーヤは3レベルの“呪文の使い手”であり、
呪文発動能力値は【知力】である(呪文セーヴ難易度13、呪文攻撃+5)。
ワリーヤは以下のウィザード呪文を準備している。

初級呪文:メイジ・ハンド、メッセージ、ライト
1レベル(2回):コンプリヘンド・ランゲージズ、ディテクト・マジック、アンシーン・サーヴァント

道具使用:ワリーヤは以下のアイテムを用意している。
盗賊道具(習熟済)、ポーション・オブ・ヒーリングx2、フックつきロープ、金槌、ピトンx10、
10フィートの竿、スクロール(1レベルのマジック・ミサイル)x2、覆い付きランタン、油

アクション
ダガー:近接武器攻撃:攻撃+5、間合い5フィート、目標1つ。
ヒット:5(1d4+3)[刺突]ダメージ。
ハンド・クロスボウ:遠距離武器攻撃:攻撃+5、射程30/120フィート、目標1つ。
ヒット:6(1d6+3)[刺突]ダメージ。

ヒュドラ組のウォーロック

 このクラーケンに仕える妖術師は、やっかいな呪文を操るウォーロックだ。彼は自分のバットに洞窟を監視させており、何かあればテレパシーで味方に情報を伝える。

中型・人型生物(ティーフリング)、混沌にして悪
AC:14(メイジ・アーマー常時発動)
HP:25
移動速度:30フィート

【筋】9(-1)	【敏】14(+2)	 【耐】12(+1)
【知】11(±0)	【判】12(+1)	 【魅】16(+3)

技能:〈知覚〉+3
感覚:暗視60フィート、受動〈知覚〉13
言語:共通語、地獄語
脅威度:2(450XP)

影の鎧:回数に制限なく、呪文スロットも物質要素も消費せずメイジ・アーマーを発動できる。

苦悶の怪光線:エルドリッチ・ブラストのダメージに【魅力】ボーナスが追加される。

精神覚醒:このクリーチャーは30フィート内の言語を理解している味方とテレパシーによる意思疎通が行える。

鎖の契約:このクリーチャーは1体のバットを『ファインド・ファミリアー』呪文によって契約下においている。

呪文発動能力:ヒュドラ組のウォーロックは3レベルの“呪文の使い手”であり、
呪文発動能力値は【魅力】である(呪文セーヴ難易度13、呪文攻撃+5)。
ヒュドラ組のウォーロックは以下のウォーロック呪文を準備している。

初級呪文:エルドリッチ・ブラスト(ダメージ1d10+3)、ダンシング・ライツ、ソーマタージ
呪文レベル:2(使用回数:2)
ヘクス、ターシャズ・ヒディアス・ラフター、ディソナント・ウィスパーズ、ホールド・パースン

アクション
シミター:近接武器攻撃:攻撃+4、間合い5フィート、目標1つ。
ヒット:5(1d6+2)[斬撃]ダメージ。

◇補足◇
戦闘では味方の後ろからエルドリッチ・ブラストで攻撃を行う。
半数以上味方が倒されると、ホールド・パースンなどで妨害しつつ撤退し、テレパシーを使って
リヴァー・ドレイクやシー・ハグ、ギルディ・ポートマンに次々と連絡する。
また、バットにPCを尾行させ、PCの損耗具合を観察した上で、PCが消耗したところに多くの戦力をぶつける。

リヴァー・ドレイク

 この底意地の悪いブラック・ドラゴンのはとこは、水中の魚から漁師に至るまで、住処の水場に近づく全てに恐れられている。
 他のドレイク同様、リヴァー・ドレイクは嬲り殺しの狩猟方式を使用する恐ろしい狩人である。腹をすかせていなければ、楽しみのために他の生き物を襲撃し、あえて殺さずに何度もいたぶりたがる。水中に金貨などのきらきらしたものを投げ込めば彼らの気をそらす事ができる。ただ、それは彼らが腹をすかせていない時に限る。
 リヴァー・ドレイクはずる賢く注意深い狩人だ。彼らは岸にいるクリーチャーから隠れるために、水中に住処を作る。戦いになれば素早さを生かし、陸上にいる敵を攻撃しては素早く水中に飛び戻る。強酸の粘液を吐きつける力があり、命中したものは動きが鈍ってしまうことも、この戦法をやっかいなものにしている。
 リヴァー・ドレイクはブラック・ドラゴンと同じ様に腐った肉を好み、腹が空いていなくても獲物を狩って、住処の水中に食べきれないほど溜め込んでおく。
 リヴァー・ドレイクは全長8フィート(約2.4m)で、泥炭のような黒い鱗を持つ。成体のリヴァー・ドレイクの重量はおよそ700ポンド(約318kg)。

中型・ドラゴン、混沌にして悪
AC:16(外皮)
HP: 48(8d8+16)
移動速度:30フィート/水泳30フィート/飛行60フィート

【筋】16(+3)	【敏】14(+2)	 【耐】15(+2)
【知】6(-2)	【判】10(±0)	 【魅】9(-1)

セーヴ:【敏】+4、【耐】+4、【判】+2
技能:〈隠密〉+4、〈知覚〉+4
ダメージ抵抗:[酸]

感覚:疑似視覚10フィート、暗視60フィート、受動〈知覚〉14
言語:竜語
脅威度:2(450XP)

水陸両生:水中でも陸上でも呼吸ができる。

アクション
・噛みつき:近接武器攻撃:攻撃+5、間合い5フィート、目標1つ。
 ヒット:7(2d4+3)[刺突]ダメージ。

・酸の粘液(再チャージ5~6):リヴァー・ドレイクは爆発する腐食性の粘液の玉を吐き出す。
これは射程60フィート内の1地点で爆発し、半径5フィート内のキャラクターは難易度14の【敏】セーヴを行わなければならず、
失敗すると10(2d8+2)[酸]ダメージを受ける(成功した場合は半分のダメージ)。
このセーヴに失敗したキャラクターは、次のこのクリーチャーの行動ターンまで移動速度が10フィート減少する。

・スピード全開:リヴァー・ドレイクは1回のボーナス・アクションを消費することで、
追加で30フィートの移動を行える。この移動ではリヴァー・ドレイクは離脱アクションを行わなくても機会攻撃を誘発しない。

◇補足◇
戦闘では敵に近づいて噛みつきを行ったあと、『スピード全開』を使って水中に飛び込み、3/4遮蔽を得る。

ギルディ・ポートマン、ディープ・サイオン

『波打ち際から水中へさらわれたり、沈みゆく船から救出された人々に、水中の力ある存在が恐ろしい取引を持ちかける――屈服して体と魂を差し出すか、おぼれ死ぬかの二者択一を。これがディープ・サイオン("深海の養子"ほどの意)の始まりである。この取引を受け入れた者は、邪悪な水棲クリーチャーの間に知れ渡っている太古の儀式を受けることになる。この儀式は苦痛に満ちたものであり、必ず成功する保証はないが、うまく行けば“空気呼吸をしていた人型生物”を“水中に完全適応した姿に変わることのできる変身生物”へと魔法的に変化させることができる。
 ディープ・サイオンは水中にいる主人(クラーケンその他の古き深海の存在であることが多い)の命令を受けて深海から現れる。このクリーチャーは地上生物だったころの心と体を偽装に使い、主人の望みをかなえるために全力を尽くす』

――『ヴォーロのモンスター見聞録』より引用

 ギルディ・ポートマンはかつては善良な船乗りであったが、船をクラーケンに沈められ、溺死の恐怖からクラーケンに屈服した。
 現在の彼は生前のハンサムな男の姿を取っているが、本性を表すときにはホウライエソと人をかけ合わせたようなおぞましい半人半魚の姿へと変わる。
 彼は深海のクラーケンの手先として、クラーケンが産み落とした卵を持ち帰り、ベーゲン川の洞窟で育てた。放っておけばいずれバルダーズ・ゲートは成長したクラーケンの影響下に置かれ、クラーケンの信徒とディープ・サイオンの巣窟に変わるだろう。

中型・人型生物(変身生物)、中立にして悪
AC:11
HP:65 
移動速度:30フィート(中間形態では20フィート、および水泳移動速度40フィート)

【筋】18(+4)    【敏】13(+1)    【耐】16(+3)
【知】10(±0)    【判】12(+1)    【魅】14(+2)

セーヴ:【判】+3、【魅】 +4
技能:〈隠密〉+3、〈看破〉+3、〈手先の早業〉+3、〈ペテン〉+6
感覚:暗視120フィート、受動く知覚>11
言語:共通語、水界語、盗賊の符牒
脅威度:3(700XP)

水陸両生(中間形態のみ):空気を呼吸することも水を呼吸することもできる。

変身生物:このディープ・サイオンは1回のアクションとして、
魚と人型生物の中間形態に姿を変えたり、本来の姿(人型形態)に戻ったりすることができる。
いずれの形態においても、移動速度以外のデータは変わらない。
変身の際、装備または運搬していた装備品は変化しない。
死亡したディープ・サイオンはかつて人間だった頃の姿に戻る。

アクション
複数回攻撃:人型形態では、2回の近接攻撃を行なう。
中間形態では、3回の攻撃(噛みつき1回と爪2回)を行なう。

バトルアックス(人型形態のみ):近接武器攻撃:攻撃+6、間合い5フィート、目標1つ。
ヒット:8(1d8+4)[斬撃]ダメージ、両手持ちで近接攻撃を行なう際は9(1d10+4)[斬撃]ダメージ。

噛みつき(中間形態のみ):近接武器攻撃:攻撃+6、間合い5フィート、クリーチャー1体。
ヒット:6(1d4+4)[刺突]ダメージ。

爪(中間形態のみ):近接武器攻撃:攻撃+6、間合い5フィート、目標1つ。
ヒット:7(1d6+4)[斬撃]ダメージ。

精神的絶叫(中間形態のみ:小休憩または大休憩で再チャージ):
このディープ・サイオンは300フィート遠くまで聞こえる恐ろしい叫び声をあげる。
このディープ・サイオンから30フィート以内にいるクリーチャーはみな難易度13の【判断力】セーヴを行なわねばならず、
失敗するとこのディープ・サイオンの次のターンの終了時まで朦朧状態になる。
水中で使用した場合、以上の効果に加えて、このディープ・サイオンの過去24時間の記憶がテレパシーによって主人に伝わる。
この時、ディープ・サイオンと主人はどれだけ距離が離れていてもよいが、両者が同一の水のかたまり(湖や川など)の中にいる必要がある。

◇補足◇
ギルディ・ポートマンは最初から中間形態であり、噛みつきと爪で戦う。

シャガ・ナグ=シュ、クラーケンの落とし仔

 生まれたばかりのこのクラーケンは、既に触手の長さ20フィート(6m)、肉体20フィート(6m)、合わせて12mの象2頭分のサイズに匹敵する巨体である。
 頑強な藍色のキチン質に覆われた、カニやロブスターを思わせる甲殻からは太さが人の胴体ほどもある触手が10本生え、眼柄からは黄色い目が周囲を睥睨している。
 幼体であるため、生体のクラーケンのように嵐や大渦巻を生み出すことはできないが、電撃を放ち、触手を振り回せばそれだけで訓練された戦士すら叩き潰すことができる。
 加えて、ブレスじみて吐き出される墨は目潰しとして働くだけでなく、強烈な毒である。

超大型・タイタン、混沌にして悪
AC:15(外皮)
HP: 100
移動速度:30フィート/水泳60フィート/飛行60フィート

【筋】20(+5)	【敏】10(±0)	 【耐】20(+5)
【知】10(±0)	【判】14(+2)	 【魅】16(+3)

セーヴ:【筋】+8、【敏】+3、【耐】+8、【判】+4
技能:〈運動〉+9、〈隠密〉+4、〈知覚〉+6
ダメージ抵抗:[電撃]
状態完全耐性:気絶状態、恐怖状態、伏せ状態、麻痺状態、魅了状態、朦朧状態

感覚:超視覚60フィート、受動〈知覚〉16
言語:始原語、地獄語、天上語、奈落語を解するが話すことはできない。 テレパシー120フィート
脅威度:5(1800XP)

水陸両生:水中でも陸上でも呼吸ができる。

アクション
手番に2回の『触手』による攻撃か、2回の『電撃放射』による攻撃を行う。
拘束しているターゲットにのみ2回の『大鋏』による攻撃が行える。
あるいは『毒墨噴射』によって攻撃する。

触手:近接武器攻撃:攻撃+8、間合い20フィート、目標1つ。ヒット:11(2d6+5)[殴打]ダメージ。
命中した場合、難易度14の【筋力】セーヴに失敗した目標はつかまれた状態になる(脱出目標値15)。
つかまれた状態の間、ターゲットは拘束状態でもある。
シャガ・ナグ=シュは最大で4人までの相手をつかんでおくことができる。

大鋏:近接武器攻撃:攻撃+8、間合い5フィート、目標1つ。ヒット:11(2d6+5)[斬撃]ダメージ。
拘束状態のターゲットにはこの攻撃は自動的にクリティカルヒットとなる。

電撃放射:遠隔呪文攻撃:攻撃+5、射程120フィート、目標1つ。ヒット:10(2D6+3)[電撃]ダメージ。
加えて、次のこのクリーチャーのターンまでリアクションを行えなくなる。
水中にいるキャラクターや、金属鎧を着けているキャラクターをターゲットにした場合、この射撃に有利を得る。

毒墨噴射(再チャージ5~6):シャガ・ナグ=シュは長さ40フィート、幅15フィートの円錐形に毒性の墨を吹き付ける。
範囲内のクリーチャーは皆難易度14の【耐久】セーヴを行い、失敗した場合17(3D6+6)の[毒]ダメージを受け、
このクリーチャーの次の手番まで盲目状態になる。

伝説的アクション
シャガ・ナグ=シュは2回の伝説的アクションを行える(そのたび、以下の選択肢の中から任意のものを選択できる)。
伝説的アクションを行えるのは他のクリーチャーのターン終了時に限られる。
また、1度に使える伝説的アクションは1つのみである。
シャガ・ナグ=シュは自分のターンの開始時ごとに消費済みの伝説的アクションの使用回数を回復する。

触手攻撃(1回消費):『触手』による攻撃1回を行う。

電撃放射(1回消費):『電撃放射』による攻撃1回を行う。

毒墨再チャージ(1回消費):『毒墨噴射』の再チャージを振り直すことができる。

◇補足◇
多くの敵を墨に巻き込める場合は墨攻撃を行う。
20フィート内に敵がいる場合は触手攻撃を行い、できるだけ多くのキャラクターを掴んだ状態を維持しようとする。
離れた場所に金属鎧を着ている相手がいる場合、電撃放射による攻撃を行う。

終わりに

 このシナリオは商用目的でなければ、自由にプレイ/改変/転載してもらっても構わない。ただ、そのときにはできれば元のこのシナリオへのリンクを張ってもらえれば嬉しい。

更新履歴

2023/02/06 公開

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