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地方女子を潰す地方の大人たち

身の丈に合った受験を促す文科大臣。
発言撤回したものの、地方出身女子のわたしは怒り心頭だ。

地方女子の大学進学事情、首都圏で生まれ育った人にはわからないだろうけれど、本当に、地方からの女子の大学進学はとても厳しい状況にある。

わたしは理解のある両親(両親とも高卒)のもとで金銭的にもそこそこ恵まれ、県立高校から都内国立大、修士と進むことができたが、これは本当に一握りの女子なのだ。

特にわたしのように理学部から工学系研究科に進むような進路を両親が応援してくれる地方女子はレアケースと思う。

お勉強ができる女子で親が認めてくれる進路は、医者になりたいから医学部、薬剤師になりたいから薬学部、先生になりたいから教育学部、そんなところだろうか。そしてもちろん、国立大でないと金銭的に厳しい。地元国立大が理想だろう、親としては。

看護師になりたいから看護学科、公務員になりたいから法学部もありうるけど、看護学校だったり高卒公務員という選択肢もあるわけで。シビアな世界。

明確な職業意識と国立大に入れる程度の学力があってはじめて大学を目指せる。それが地方女子だと思う。

わたしは理学部だが、母親は理科の中高教員免許を取ることを強く勧めてきた。地元就職を視野に入れるなら教員は欠かせないからだろう。

さてさて、前置きが長くなったけど、ここからが本題。地方女子を潰す地方の大人の話。

数年前のひょんな出来事から繋がって、昨年、出身地にて、理系大学進学を目指す女子中高生向けのシンポジウムに招かれることになった。

わたしの学生時代の話から仕事の話まで、進路選択やキャリアビジョンについて、地元の女子中高生に質疑応答含めて25分ほど講演し、ディスカッション、茶話会と盛り沢山の一日で、とても楽しかったのだが。

茶話会で、地方女子を潰す地方の大人たちの話を聞いてしまい、怒りが止まらなかった。

わたしは実家こそど田舎だが、高校はその県唯一と言っても過言ではない県立進学校に通った。通学には1時間以上かかったが、とてもとても充実した高校生活だった。

茶話会に参加してくれた地方女子中高生たち、わたしの母校の後輩もいたが、それ以外に、地元に新設された県立中高一貫校の女子中学生がいた。開設して間もない学校で一貫校としての卒業生はまだいない。全国的な公立中高一貫校ブームに乗って、わたしの出身地にもできた学校なのだが、母体となったのはお世辞にも進学校とは言い難い高校。正直、なぜこんな学校を作った?とわたしは疑問に思っていた。

その中高一貫校の中2だという女子、茶話会で話すと、その学校で成績トップ、先生には東大目指すよう言われているらしい。

あの学校から東大…この県から東大目指すならわたしの母校の高校一択だろうに、新設中高一貫校の一期生は重圧背負って大変だな…と思いながらも、理工系進学の魅力、東京に出ると本当に視野が広がるよ、とプッシュしてみる。

すると意外な質問が彼女から出る。

東大の理系入って地元で就職するとしたら何になれますか?地元で就職するなら地元国立大の医学部目指したほうがいいと思いますか?と。

うーん、医者になりたいなら地元医学部目指せばいいし、医者以外に興味があるなら東大目指せばいいし、どこで就職するかよりも学びたい学問とかやりたい仕事とか考えたらどうかな?と答えてみる。

郷土教育の授業があって、将来は県内で働くように教わっています、と彼女。

え?東大を目指せって言いつつ、県内に就職しろと指導されてるってこと?

バッカじゃないの!?と開いた口が塞がらなかった。この県の指導、バカげてる。東大目指せ、地元に就職しろだと!?魅力ある働き口もないくせに、何を言ってんの?

こうして地方女子は地方の大人たちの都合で潰されていくのである。

医薬系、看護系はともかく、それ以外の理工系の学科に進んで興味のある学問を思う存分学んで、学びの中からやりたい仕事、就職先を見つけていくことが地方女子には許されていないのか。東大を目指せと言いつつ、地元就職をさせたいのは何故だ。

新設の公立中高一貫校、失敗だな。そんな気持ちになった。流行りに乗って作ってみて、トップの子に東大目指せと指導する一方で郷土教育という名の呪縛をかける。恐ろしい。

地元で活躍する人材を育てたいなら、地元国立大か、隣県の旧帝大からのUターン就職でいいだろう。お勉強のできる地方女子を苦しめるな。好きな学問を思う存分させてあげて。好きな仕事に就かせてあげて。地元から解放しろ、まずはそれからだ。

これは東京で働く地方出身女子の願いです。