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青春の快声〜「ディミトリ」新人公演より~

 昨日、無事に星組公演が千秋楽を迎えました。
 先日退団して5年目を迎え、久しぶりに新人公演を観劇。私の在団中に入団していなかった方々が活躍をし始めて、段々と下級生の顔と名前が一致しなくなってきました。

 月組でなくて何故か星組(笑)。良く声が出ていて、どう演じたいのか伝わり、それぞれがしっかりと役を創ろうとしていました。場面の山の前に感情が爆発して、いざという所でボロボロになっていたりするのが新人公演の素晴らしさで、小器用に無難におわるのが1番の間違い。泣き過ぎて何言ってるか分からないとか、頑張り過ぎて台詞を噛んだり転んだり。出して出して、力を入れて入れて、もがいてもがいてを繰り返す。いよいよ限界が来たら、ふーっと力が抜けて余白が出来て輝いてくる。でもそれはこれからのお楽しみ。今は限界までもがくのが正解。そんな通り道を真っ直ぐに歩いている星組下級生達の姿を感慨深く観させて頂きました。

 最後に主役の天飛華音さんがご挨拶で「命をかけて頑張ります!」と…命は大事にしなさい…と思いつつ、意志の強そうな彼女の瞳を観ていると私自身そんな心持ちでやっていたあの頃を思い出す。

 新人公演というのは、本公演のお稽古中に配役が発表される時から始まる。発表されるまでにそれぞれが「あの役がやりたい。」と期待に胸を膨らませて、香盤表が貼られる日を待つ。その日は突然訪れるもので、皆んなで香盤表に押し寄せる。笑顔の子も居れば、神妙な面持ちで自分の座る長椅子に帰る子もいる。発表された日は組内は何となく色んな感情が動く日になる。例えば望む役でなかった時でも、違う役を懸命にやる事。与えられた役がいつの間にか面白く感じて、今の自分にやるべき役だったと最後には思えたもの。
 本公演の初日が空けて、次の日からお稽古が始まる。時間はある様で全然足りない事の方が多い。3週間後の土曜日には一番緊張する日が来る。上級生が通しを観に来る日。
 私は一場面の出番がある役を頂いた時に、「緊張している事しか伝わらない。何にも考えない方が良いんじゃない?」と言われてそれじゃあ何をしたら良いのかと落ち込んだ事も有った。頑張ったからって良いわけじゃない。その役の伝えたい事が伝わらなければ意味がない。自分は一人よがりにやっていたんだって。と発見のあった作品もある。
また「私、憧花の演技観に行かへんねん」と言われて「なんでですか?」と聞くと「本番の楽しみにしてんねん。」と最高の誉め言葉を頂いたこともある。いつも嘘のない感想を言われた。
 組長になってからは、とりあえず思った事を書き留めて伝えた。大事なのは「観てたよ」っていう想い。主要キャストはダメ出しがあって当然だけれど、ほんの小さな役でも良い表現をしていたら最大限にコメントする事。適当に流さない。ダメ出しで怖いのは、間違えると表現がそのコメントした人の表現になる。その子の想像を表現出来るように。想像が無い人はまずその子の想像を引き出す様に。そんな事を大切にしていた。

新人公演を観ていると、どの時代でもタカラジェンヌの心の本質は失われていないなと思う。
面白かった。また観よ~う。

すーさん


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