M20スタンダード環境でミッドレンジ復権!(なおもうすぐローテ)

 3ハゲ死すべし(結論から入る)。
 翻訳記事ではないです。あしからず。

1.M20後のスタンダード環境を振り返る

 現在、スタンダード環境は大まかに分けて二つのデッキに大別される。

A)アグロ:吸血鬼、赤単
B)コンボ:4Cケシス、スケシ、ネクサス

 いやフェザーもバントランプもあるだろう、という意見もあると思うがとりあえず環境総括から入る。環境を考えれば、なぜ《テフェリー》環境でフェザーが生き残っているかが分かるからだ。

【第1週~第2週:スケシが環境初期を制する】

 まずメタ上に頭角を現したのはLSVの優勝で弾みがついたスケシ。ここが実質的なメタの起点といって差支えない。
 スケシは回れば5~6キルできるポテンシャルのあるコンボデッキ。有効な妨害置物も《時を解す者、テフェリー》で一時的に退かせばコンボには影響がないし、《テフェリー》がインスタントスピードのコンボ成立を約束してくれるのでメインから置物対策ができている、というのが強み。さらに《風景の変容》を抜かれても《ハイドロイド混成体》でしばき倒す、土地を置き続ければ勝てるので「妨害VS妨害」の盤面にも強い
 同系戦が進み、ゴロスネクサスという亜種が生まれたり、そもそも《風景の変容》を打ったり打たなかったりするが、それもスケシの範疇であり、マナ加速→土地サーチ→フィニッシュ、という骨子は変わっていない。

【第3週~第4週:吸血鬼の台頭】

 というわけで、スケシに勝つ唯一の方法は「コンボ成立前に殴り勝つ」こと。そこで登場したのが赤単吸血鬼。吸血鬼優勢なのは①吸血鬼は《強迫》《軍団の最期》を打ちながら殴れる、②赤単は《紺碧のドレイク》1枚で積む、という2点から。吸血鬼は《軍団の上陸》《アダントの先兵》という対処の難しいカードを一番強く使えるデッキであり、他の「除去で減速させて勝ちパターンに持っていく」というコントロールの戦略に対し、もともと強い構成を持っている。加えてサイドからの手札破壊もある。スケシに対してはさらには《ハイドロイド混成体》とゾンビトークンに有効な《軍団の最期》を持ち、これがミラーでも有効な札になることから、一気に吸血鬼がトップメタにのし上がっていく。

 ここでエスパーコントロールやエスパーヒーローが壁として立ち塞がろうとした。コントロールやミッドレンジは古典的にアグロに強い戦略を取ることができる。しかし、上手くいかなかった。先述の《上陸》《アダント》に加え、《ソリン》《薄暮の勇者》というアドバンテージ補填手段があり、大量アドバンテージ獲得手段のないエスパーはそもそも吸血鬼に勝てない。そしてエスパーコントロールに至っては、土地を置かれ続けるだけでクリーチャーを補填されるスケシはそもそも相性が悪い、という「メタの敗者」になってしまった。《夏の帳》というキラーカードはハンデスすら防ぎ、《テフェリー》VS《テフェリー》の構図では殴り手が多いスケシに軍配が上がる。

【第5週~第7週:スケシVSアグロ】

 ここで存在感を出したのは、スケシに速度で勝てる見込みがあり、吸血鬼へのキラーカード《ゴブリンの鎖回し》を持つ赤単。スケシ側の赤単ガードが下がり(赤系はそこまでライフプレッシャーがないので、ゲイン土地と《霊気の突風》があればなんとかなると思って《紺碧のドレイク》という専用サイドの採用を多くのリストが怠った)、さらに《血染めの太陽》《高山の月》というアンチカードで押さえこみができることは周知の通りだった。吸血鬼には《ゴブリンの鎖回し》が出せるかどうかで勝負が決まるが、サイドボードから《溶岩コイル》をフルで投入でき、除去+《実験の狂乱》プランというアグロへの回答をもともと持っているため、吸血鬼のみならず、他の凡百のアグロに強い。

 とはいえ吸血鬼が《聖域探究者》や《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》のような赤単兼スケシへの回答を増やすことは容易だったので、吸血鬼は即座に反応。吸血鬼はトップメタの地位を確立した。

【第8週~現在:4Cケシスの天下統一】

 そこで颯爽と現れたのが4Cケシス。もともと《テシャール》+《ローナ》+《モックス・アンバー》の無限コンボは前環境から金魚などで散見されたものの、新パーツ《隠された手、ケシス》を手に入れ速度が飛躍的に増大したほか、安定性が高くなった。「スケシより早いコンボデッキ」として一世を風靡し、また①EtB能力に頼っていない(=《トカートリの儀仗兵》が効かない)、②コンボパーツが墓地に落ちてさえいれば盤面には何もなくてOK(=コントロール戦略に強い)、③クリーチャー主体のコンボデッキのためブロッカーに事欠かない(=赤単や吸血鬼に強い)であるため、「吸血鬼に間に合うコンボデッキ」として全方位型の強力デッキとして環境終盤を支配した。

 4Cケシスがどれだけ強力なのかは、4Cケシス自身が《悪夢を引き裂く者、アショク》を採用しているバージョン・派生を生んでいることから想像できる。このカード自身が墓地肥やし機能を持ちコンボの助けとなる他、スケシへのアンチカードとして働き、また同系の墓地ににらみを利かせている。《アショク》には《テフェリー》で対処できない、という点も採用を後押ししている。とはいえ4色デッキということもあり事故も若干発生しやすい点が、吸血鬼や赤単が勝てる唯一の見込みである。

 というわけで、スタンダード環境は終盤に至って、いわゆる「ドブン勝負」の様相を呈してきたのである。

2.メタに埋もれていったデッキ達

 さて、ここからは供養の時間である。なぜこれらのデッキが活躍できなかったのかを書いていこう。

(1)シミックフラッシュ

 環境最初期に頭角を現したのは実はシミックフラッシュというデッキだった。皆さん覚えているだろうか。デッキ内容は名前そのままなので省く。
 勝てなかった理由は、時期トップメタのスケシ、そして(その当時のアンチデッキだった)エスパーにすべて《時を解す者、テフェリー》が4枚積まれており、デッキコンセプトが成立しなかったからである。シミックフラッシュの思想自体は悪くなかったものの、相手の先手3T《テフェリー》への回答が限られていて(《呪文貫き》という痩せたカードはあった。どうしようもなくて《物語の終わり》を積んだ人がいたならば評価されていいだろう)、どうしようもなかった。

(2)青単

 前回のPT優勝デッキであり、たまにメタ上に登場する青単。シミックフラッシュと違いクロックが早く、妨害にも強い。
 とはいえ勝てなかった理由はシミックフラッシュと大体同じなので割愛する。

(3)エレメンタル

 環境初期に話題となった部族系デッキ、チェインコンボ的な要素もあるデッキで、爆発力が話題になった。そもそも今回の楔3色神話レアで一番高値となった(当時)なのは《オムナス》である。
 勝てなかった理由はひとつ、「そこまでスピードがなかった」ためである。どうしてもエレメンタルを複数展開する必要があり、その工程はスケシ(やケシス)が勝てる盤面をつくるよりもずっと遅かった(×スケシ、×ケシス)。またクリーチャー主体のデッキなので全体除去にも弱く(×エスパー)、3マナの《発現する浅瀬》が1/1なのでアグロにも弱かった(×赤単、×吸血鬼)。

(4)ジャンド恐竜

 実は細々とTier2あたりをうろうろしているデッキである。勢いで優勝したりもする。《無法の猛竜》《朽ちゆくレギサウルス》から《ガルタ》に繋ぐ展開力は勢いがあり、ブン回りすれば割と早々に殴り勝つことができるデッキではある。
 勝てない理由は、スピード的にはマナ加速要因に頼るミッドレンジという構造上、やはり《テフェリー》に弱い。《レギサウルス》にトランプルでもあれば話は別だったのだろうが。大振りなので吸血鬼の大群に押し負け得る点も不安要因である。2T《無法の猛竜》が軸となっており、ここを置けるかどうかの勝負になってしまいがちなので、安定しているように見えながら、その実キーカードに頼っている、という安定性の無さが《テフェリー》環境下では顕著に出てしまうのである。

【フェザーに関する補足】

 実はアンチ吸血鬼の筆頭、かつスケシやケシス相手にそこそこ戦えるのが、意外なことにフェザーである。そもそも《テフェリー》に対し非常に弱いデッキコンセプトながら、メインに4点火力が備わっている(○ケシス、○吸血鬼)、クロックが高く、飛行クリーチャーも採用されている(○スケシ)、採用されているカードが《テフェリー》にそこそこ強い(《第10管区の軍団兵》《軍族の戦親分》《黒き剣のギデオン》)など、コンセプトの不利を補って余りある「環境柄強い」カードに恵まれている。
 とはいえ《テフェリー》のために採用カードを歪めてしまっている印象は強く、また1マナ域が不在の為、どれだけ頑張ってもクロックが早くならないので、コンボとの速度勝負に勝てない点で安定性が低い。いわゆるブン回り(2T《秘儀術師》→3T《軍団兵》+《戦いの覚悟》で最速4キル)でもない限り、コンボが間に合ってしまう。
 ブン回り対決、という観点からみれば、占術機会の多いフェザーは及第点であり、相手のコンボ要因を阻害しながら殴れる点でケシスに、ブロッカーをすり抜けてフィニッシュできる点でスケシに対抗可能である。そもそもアグロ相手に対するハメパターン(《フェザー》+《無謀な怒り》)がある時点でアグロ全般には強く、《フェザー》が非常に除去しづらい(伝説、マナコスト3、タフネス4)ため生き残りやすくコントロール相手にもそこそこ強い。

3.スタンダードのデッキに求められる条件(トップメタ以外)

 さて、フェザーが意外にもいい位置にいる(Tier1には及ばないが)ということが分かったところで、スタンダードでデッキとして認められる要件を出してみよう。

(1)キルターンの早いクロックを有し、ブロッカーをものともしないブン回りパターンがある
(2)《テフェリー》への即時的な対抗策がある(早い複数クロック、速攻生物、3マナPW等)
(3)アグロ戦略に強く3~4マナの除去しづらいクロックがある

 (1)はコンボと戦うための戦略があるかどうか。ここをクリアしなければデッキではない。(2)は環境の害悪への回答。1億総ハゲ時代を乗り切るにはこの点を「メインデッキから」克服していなければならない。(3)は《軍団の最期》への耐性。同系が《アダントの先兵》のせいで吸血鬼より使うに値するデッキかどうかはここで決まる。

 というわけで、いくつかのデッキを挙げてみよう。結果を残しているデッキはすべからく上記条件を満たしている。

4.スタンダード終盤に輝くアンチデッキ

■緑単ストンピィ

(タッチ黒)https://www.mtggoldfish.com/deck/2229526
(タッチ青)https://www.hareruyamtg.com/ja/deck/247934/show/
 レシオの高いクリーチャーをマナ加速から叩きつけるミッドレンジ・デッキ。(1)(3)を《鉄葉のチャンピオン》《蔦草牝馬》で補い、(2)も《楽園のドルイド》《樹皮革のトロール》《蔦草牝馬》で解消。
 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》が打点加速と除去を兼ねており、若干遅い展開でも《鉄葉》《牝馬》を強化すれば突破できてしまう(どちらもブロック制限があり攻撃が通りやすい)。なお-5能力から《土覆いのシャーマン》を持ってくるという荒業を備えており、ケシスコンボへのアンチカードとしても働く点も見逃せない。
 青をタッチして《エリマキ神秘家》《霊気の突風》などのユーティリティを増やしたり、黒をタッチして《ゴルガリの女王、ヴラスカ》《軍団の最期》を使うなど色々工夫が見られる。個人的にはタッチ黒が好みだが、リアクティブな要素を廃した《ハダーナの登臨》型も一貫性があり強力に見える。

■赤緑アグロ

 https://www.hareruyamtg.com/ja/deck/247941/show/
 攻防に強い《グルールの呪文砕き》を軸に、軽量クリーチャーで支えつつ飛行8枚+《ドムリ》で殴り勝つ分かりやすいミッドレンジ・デッキ。(1)(3)は《呪文砕き》と《再燃するフェニックス》(現在のメタではほぼ無敵)を《ドムリ》でパンプアップする形で戦い、(2)は呪禁2種、速攻2種で乗り越える。「出所」した《暴れ回るフェロキドン》も3マナ域にすんなり収まるので使いやすく、吸血鬼のリカバリーやスケシ相手の優位を保ってくれる。このリストのいいところは《溶岩コイル》をしっかり4枚搭載して吸血鬼やケシス相手を睨んでいるところ。ケシスも《ケイヤの誓い》で序盤を支えるため、ゲイン防止は見た目以上の効果がある。

 他、バントランプフェザーなどが「勝っている」デッキである。フェザーは「アグロ(=アンチスケシ・ケシス)に強い」という特徴があるので勝ちやすい(上のような赤緑や緑単にも、4点火力とプロテクションが非常に効果的なため相性は悪くない)ため、スケシやケシスと当たり続けて勝ち続けるのは難しそうだが。

5.終わりに

 ここにきて(形はアグロに近いが)いわゆるミッドレンジが勝つ構図になっている。
 ミッドレンジは長らく《テフェリー》とコンボデッキに存在を否定されてきたデッキ群であり、アグロに後塵を拝してきた。トップメタ同士の対策の隙を縫い、ローテ前に一華咲かせることができるか。今後の行く末に注目したい。


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