【拙訳】スタンダードのマナベースは素晴らしいけど、欲張り厳禁。by Frank Karsten(Channel Fireball)


2/18追記:プロプレイヤーの瀬畑氏(市川ユウキプロ)による配信動画で、本記事が紹介されました!
https://www.twitch.tv/videos/379955733
びっくり。よって適当に訳しすぎたところを若干修正しました。

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https://www.channelfireball.com/articles/the-mana-in-new-standard-is-great-but-dont-stretch-it-too-far/

※日曜日の間にアップしようと思ったけど、遅くなってしまった。

 出たー! マナベース警察だー!
 「ラヴニカへの回帰」以来のショックランド+チェックランド環境。2色も3色も思いのまま!な環境ですが、マナベース警察に怒られないようにしましょう。というわけでFrank Karsten先生のマナベース講座です。事故りやすい人は座して聴くべし。

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The Mana in New Standard is Great, But Don't Stretch it Too Far
By Frank Karsten // 29 Jan, 2019

 「ラヴニカの献身」環境のスタンダードイベントの結果が出揃って、10のショックランドが存在する世界に突入した。この新しい世界では、マナベースをどこまで欲張るか、という問いに自然と向き合うことになる。さて今日は、新環境でおそらく一番大きい大会であろう、SCGOインディアナポリスのTOP4デッキについて、マナベースの観点から分析していこう。

 このトーナメントはライブカバレッジが素晴らしい。ビデオもテキストも充実している。ビデオ・テキストどちらもお粗末なGPニュージャージーとは対照的だね。さらに悪いことに、カバレッジがないということはツイートに対するリプライで「発表」されたんだ。こういう経緯やと伝達方法は非常に残念だ。何年もの間、GP広報を頼まれてきたし、テキストカバレッジの最後には、メタゲームブレイクダウン、Top 8のTwitterアカウント、そしてイベントに関する他の多くの話題をタイムリーに、誇りを持って提供してきたつもりだ。僕が参加しなかったGPがあっても、いつでも他のカバレッジライターを信頼して、タイムリーに俯瞰的な情報を得ることができた。今回のような件をこれからも見逃すつもりはない。そうなったら時代の終わりだね。

 それに引き換えSCGOのカバレッジの適切さときたら。まったくもって誇れるイベントだ。MTG ArenaやDay2では、赤単や《運命のきずな》が幅を利かせていたはずなのに、トップ8には《批判家刺殺》も《荒野の再生》も入っていなかった。明確に、BO1とBO3では最適なデッキが異なる、という証拠だね。早速、高みに登ったデッキリストをチェックしてみよう。

Sultai Midrange
Anthony Devarti, 1st place at SCG Open Indianapolis

lands
2《愚蒙の記念像/Memorial to Folly》
4《森林の墓地/Woodland Cemetery》
4《草むした墓/Overgrown Tomb》
2《沼/Swamp》
1《島/Island》
4《森/Forest》
4《繁殖池/Breeding Pool》
2《湿った墓/Watery Grave》
1《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》

creatures
4《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4《マーフォークの枝渡り/Merfolk Branchwalker》
4《野茂み歩き/Wildgrowth Walker》
1《探求者の従者/Seekers' Squire》
4《翡翠光のレインジャー/Jadelight Ranger》
2《貪欲なチュパカブラ/Ravenous Chupacabra》
2《真夜中の死神/Midnight Reaper》
2《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》
3《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》

spells
3《ビビアン・リード/Vivien Reid》
2《喪心/Cast Down》
2《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
3《採取/Find》 // 《最終/Finality》

sideboard
3《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》
2《最古再誕/The Eldest Reborn》
1《若葉のドライアド/Tendershoot Dryad》
1《押し潰す梢/Crushing Canopy》
1《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
1《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
2《否認/Negate》
4《強迫/Duress》

 以前のスタンダードではゴルガリミッドレンジが環境を支配していたけど、「ラヴニカの献身」が加わっても、それは変わらなかったみたいだ。唯一の違いは青がタッチされたこと。《ハイドロイド混成体》は得難い新戦力で、《繁殖池》の加入がそれを可能にしたんだ。

 彼(Anthony Devarti)が戴冠したデッキでは、8枚の青マナ供給源が選ばれている:4枚の《繁殖池》、2枚の《湿った墓》、1枚の《水没した地下墓地》、そして1枚の《島》だ。これに反して、8位のAbe Corriganや11位のDylan Doneganは10枚の青マナ供給源を使用している:4枚の《繁殖池》、3枚の《水没した地下墓地》、3枚の《湿った墓》、《島》は採用していない。全てのリストには《マーフォークの枝渡り》と《翡翠光のレインジャー》という探検クリーチャーが4枚ずつ採用されていて、併せて1枚分の青マナカウントとして扱うことができる。つまり1位のデッキには9枚、8位と11位のデッキには11枚、青マナ源がある、ということだね。

 さて、《ハイドロイド混成体》をコンスタントに唱えるために必要な青マナは何枚だろうか?

 緑マナが問題になることが決してないと仮定した場合、9枚の青マナカウントがあれば(2)(緑)(青)を4ターン目に唱えられる確率は91.4%で、これは許容できるがやや低い数字だろう。青マナ11枚の場合は95.9%となって、これは少々やりすぎ感がある。ここでいう「キャスト・オン・カーブ(マナカーブに従った展開をして唱える)」というのは、「後手時に1回のマリガンをしたと仮定し、4ターン目に4枚の土地が置けて、最低1枚の青マナが確保できる」ということだ。昔の記事(https://www.channelfireball.com/articles/how-many-colored-mana-sources-do-you-need-to-consistently-cast-your-spells-a-guilds-of-ravnica-update/)に書いた通り。

 自分の評価では、青マナ源は10枚が最も適切だろう。そのため青マナの出る土地を9枚デッキに入れ、そこに探検クリーチャーを投入するのが丁度いい。X=2で4ターン目に唱えられる確率は94.0%、6ターン目にX=4で唱えられる確率は98.4%だ。多くの場合《混成体》をX=4未満で唱えることはしたくないだろうけど、マナカーブの隙間に唱える機会がある、というのは大切なことなんだ。

 僕がマナベース改善を提案するなら、Anthony Devartiのデッキについては、
【追加】1《湿った墓》1《水没した地下墓地》
【削除】1《愚蒙の記念像》1《島》
 こう調整するかな。この調整によって《ハイドロイド混成体》と《貪欲なチュパカブラ》を4ターン目に唱えられる可能性が高まり、同時に初手で《島》を引かないようにすることができる。デッキに1GGや2BBの呪文が含まれていることを考えると、《島》の必要性は感じないな。《廃墟の地》や《暗殺者の戦利品》はめったに見ないしね。

Bant Flash
Jonathan Hobbs, 2nd Place at SCG Open Indianapolis

lands
1《森/Forest》
1《平地/Plains》
4《繁殖池/Breeding Pool》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
3《内陸の湾港/Hinterland Harbor》
1《天才の記念像/Memorial to Genius》
4《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
4《寺院の庭/Temple Garden》

creatures
4《恩寵の天使/Angel of Grace》
4《エリマキ神秘家/Frilled Mystic》
4《成長室の守護者/Growth-Chamber Guardian》
1《豊潤の声、シャライ/Shalai, Voice of Plenty》

spells
2《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》
4《ベナリア史/History of Benalia》
3《封じ込め/Seal Away》
1《一瞬/Blink of an Eye》
1《薬術師の眼識/Chemister's Insight》
2《解任/Depose》 // 《開展/Deploy》
1《大集団の行進/March of the Multitudes》
2《残骸の漂着/Settle the Wreckage》
2《呪文貫き/Spell Pierce》
2《中略/Syncopate》
1《万全/Warrant》 // 《番人/Warden》

sideboard
1《拘留代理人/Deputy of Detention》
3《秋の騎士/Knight of Autumn》
1《不可解な終焉/Baffling End》
2《押し潰す梢/Crushing Canopy》
2《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
2《否認/Negate》
1《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer》
1《豊潤の声、シャライ/Shalai, Voice of Plenty》
1《浄化の輝き/Cleansing Nova》
1《集団強制/Mass Manipulation》

 おいおい《ベナリア史》と《エリマキ神秘家》が同じデッキに入ってるのかよ? マジで?

 さて、彼の26枚の土地からは、白17、青16、緑16、という供給源がある。《解任+開展》をドローとしてカウントせず、もしくはせいぜい1枚をドローで使うと仮定すると、3ターン目《ベナリア史》は88.2%、4ターン目《エリマキ神秘家》は81.9%だ(合計26枚の土地があり、青と緑が両方出る土地が多く入っていることを考慮していることを付記しておこう)。

 もし1枚の《平地》を《内陸の湾港》に差替えると、《ベナリア史》は84.7%、《エリマキ神秘化》は89.1%になる。全体的には改善したと言えるだろうが、まだ僕が求める90%には達しない。僕の結論としては、Jonathanのマナベースは野心的すぎるので、《ベナリア史》をカットして、代わりの3マナ域として《拘留代理人》や《秋の騎士》に置き換えることを勧めたい。

 とはいえ、このアーキタイプはインスタントスピードでの奇襲にバリエーションが多くあるのが魅力だ。《エリマキ神秘家》を構えている間に《恩寵の天使》を出せるかもしれない、《残骸の漂着》や《封じ込め》を構える動きも可能だ。相手が何もしてこないなら、《成長室の守護者》を成長させてしまえばいい。この戦略要素は非常にパワフルだね。

White Weenie Splash Blue
Max Magnuson, 3rd place at SCG Open Indianapolis

lands
13《平地/Plains》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》

creatures
4《不屈の護衛/Dauntless Bodyguard》
4《追われる証人/Hunted Witness》
4《短角獣の歩哨/Snubhorn Sentry》
1《癒し手の鷹/Healer's Hawk》
4《徴税人/Tithe Taker》
4《ベナリアの軍司令/Benalish Marshal》
4《拘留代理人/Deputy of Detention》
4《敬慕されるロクソドン/Venerated Loxodon》

spells
4《軍団の上陸/Legion's Landing》 // 《一番砦、アダント/Adanto, the First Fort》
4《ベナリア史/History of Benalia》
1《議事会の裁き/Conclave Tribunal》
1《不敗の陣形/Unbreakable Formation》

sideboard
3《トカートリの儀仗兵/Tocatli Honor Guard》
3《不可解な終焉/Baffling End》
3《否認/Negate》
2《呪文貫き/Spell Pierce》
3《暴君への敵対者、アジャニ/Ajani, Adversary of Tyrants》
1《島/Island》

 以前のスタンダードで、白ウィニーがよく《英雄的援軍》のために赤をタッチしていたね。「ラヴニカの献身」が加わったことで、《拘留代理人》のために青をタッチすることも選択肢のひとつになったんだ。

 しかし、8枚の青マナで《拘留代理人》を唱えるのに十分だろうか?

 まず考えておいてほしいのは、土地の数だ。僕の分析手法である「キャスト・オン・カーブ」は、先手時に3ターン目に3枚の土地を引くことを条件としている。デッキの土地を少なくすることでこのデッキは一貫性を保つ。8枚の青マナ源を24枚の土地が入ったデッキで回す場合は、3枚に1枚の土地が青マナを供給してくれる。しかし21枚しか土地が入っていないデッキでは38.1%の確率でしか起こらない。これは奇妙だ、しかしそれがどのように働くかを考えるべきだ。《軍団の上陸》を土地としてカウントすべきだと主張する人もいるかもしれないが、それは1マナを固め引きした上で、相手が不干渉だった場合にしか変身しない。それに頼ることは極めて難しいね。

 どのような場合であれ、8枚の青マナ源だけでは足りない。土地21枚のデッキなら、3ターン目の《拘留代理人》は85.8%の確率だ。1枚《平地》を《島》にすれば、確率は89.6%にまで上昇するけど、その代償として3ターン目の《ベナリアの軍司令》キャスト確率を94.1%に下げてしまう。これはダメだ。同時に、《島》では2ターン目に1マナクリーチャー2体を唱えることができない。《アゾリウスのギルド門》は選択肢にはなるが、こういう低いマナカーブのデッキでのタップインは非常に扱いにくい。

 結局のところ、4マナのそれと違い、3マナのカードを8枚の土地でタッチすることは非常に難しい。これと同じことが、《恐怖の劇場》と《ゴブリンの鎖回し》にも言えるね。

 もし白単がサイドボードに《否認》や《呪文貫き》が必要であり、86%の確率で唱えられる《拘留代理人》が、100%キャスト可能な《議事会の裁き》や《アダントの先兵》より優れていると思うなら、メインに入れる数を2~3枚に減らすべきだろう。青マナを引かなかった時のリスクが減るからだ。そもそも、デッキに12枚の3マナ域が必要かどうかについても確信が持てないでいる。

Esper Control
Nick Cowden, 4th place at SCG Open Indianapolis

lands
1《島/Island》
1《平地/Plains》
2《沼/Swamp》
4《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
3《神無き祭殿/Godless Shrine》
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
4《湿った墓/Watery Grave》

creatures
1《変遷の龍、クロミウム/Chromium, the Mutable》

spells
4《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》
4《吸収/Absorb》
3《喪心/Cast Down》
1《薬術師の眼識/Chemister's Insight》
1《渇望の時/Moment of Craving》
2《屈辱/Mortify》
1《否認/Negate》
3《予知覚/Precognitive Perception》
4《中略/Syncopate》
4《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
2《アズカンタの探索/Search for Azcanta》 // 《水没遺跡、アズカンタ/Azcanta, the Sunken Ruin》
3《ケイヤの怒り/Kaya's Wrath》

sideboard
3《正気泥棒/Thief of Sanity》
1《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
3《渇望の時/Moment of Craving》
1《否認/Negate》
2《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer》
1《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》
1《ケイヤの怒り/Kaya's Wrath》
3《思考消去/Thought Erasure》

 《ケイヤの怒り》と《吸収》はコントロールの重要なパーツだが、同じデッキで共存させることは非常に難しい。

 Nick Cowdenの土地27枚には白16、黒17、青17が含まれている。2枚の《アズカンタの探索》による潜在的なドローを半分考慮に入れると、キャスト・オン・カーブでは《吸収》は82.6%、《ケイヤの怒り》は82.2%の確率になる(2色地形によるマナベースの正確な構成(タップインを回避する)と、合計27枚の土地があることを考慮している)。

 これらの確率は、僕の望むところを大きく下回っている。ギルド門を追加することで確率を高めること自体は可能だが、タップインの問題が新たに発生してくる。代わりに、埋め合わせとして3枚の《思考消去》をメインボードに移してその諜報効果に期待し、《島》《中略》《喪心》を1枚ずつ削ることになる。これは7位のAndrew Davisの構築とほぼ一致する。結果として得られたマナベースにおいては、《吸収》をキャスト・オン・カーブで唱えることは難しくなるため、《吸収》を3枚に減らすことになるが、それでも《ケイヤの怒り》のためには改善することになる。

■一般論として

《ハイドロイド混成体》をタッチするためには、10枚の青マナ源が適正だ。これなら、必要に応じて2GUの呪文として唱えることは容易い。

・同じデッキに《ベナリア史》と《エリマキ神秘家》を共存させるのは野心的としか言いようがない。12枚のショックランドと12枚のチェックランドがあっても、色マナの問題は発生する。

3マナ域のタッチカラーをたった8枚の供給源で行うのは好かない

マナコストが「CCDD」のようなカードの場合、本当に各色の17か18の源を必要とする。これは2CC呪文に必要としている以上のものだ。関係ない色の土地を入れる余裕はない。その《平地》を《エリマキ神秘家》デッキから、その《島》を《ケイヤの怒り》デッキから今すぐ抜くんだ。いいね?

・これについては詳しく説明しなかったが、新しいスタンダード用に3色のミッドレンジデッキを作成していて、ショックランドとチェックランドの最適な組み合わせを考えている場合、平均的な構成は11枚のショックランドと9~10枚のチェックランドを入れる、というのがガイドラインになる。

 この記事のパーセンテージは僕自身のシミュレーションで計算したものだが、mtgoncurve.com(https://mtgoncurve.com/)を使って自分で計算することができる。僕の定義に基づいている素晴らしいツールだ。デッキリストを入力するだけで、シミュレーションが実行され、デッキ内の各カードの確率が計算されるんだ。すべてWebサイトによって自動的に認識されるため、マナ・ベースの正確な構成を考慮しているが、ドロー呪文によるアクセスは考慮されていない。

 僕はこのウェブサイトを、その作成者である可能性があるRedditの投稿(https://www.reddit.com/r/spikes/comments/ahbbtg/other_on_curve_probability_calculator/)で見つけたんだ。マリガンと占術では若干異なる仮定をしているから、列P(mana | cmc)からの結果は僕の計算結果と一致しないけど、その差は一般的にほんの僅かになる。基本的な計算は正しいと思うので、ぜひチェックしてほしい。

原則、全記事全文無料で公開していますが、モチベーション維持や更新頻度の向上、家族サービス費用、コンテンツ精度の確保等のため、あなたからのサポートを随時お待ちしております。たとえ少しずつでもご支援いただければ、これほど嬉しいことはありません。よろしくお願いします!