【拙訳】《チャンドラの吐火》、その戦略と戦術 by Michael Flores(CoolStuffInc.com)

 国内外含めて(無料記事の中では)広木健太さんの晴れる屋での連載記事が一番精度が高いんじゃないか説。実はこの記事以外、誰も今流行りのBant Scapeshiftに触れていない(対策も含めて!) Twitterには戯言しか書いてない気がするし。誰か書いてあるサイトを教えてください(他力本願)。あと、デッキ種類だけなら岩SHOWさんの公式記事もなかなか。CFBは国際大会を運営するようになってから……なんかこう……

 それはそれとして赤単の記事。SCGO、Aaron Barichの優勝リストに入っていた《チャンドラの吐火》に関する考察です。例のカードできれいに止まってしまうことについても言及されていますし、その対策についても書かれています。

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The Strategy and Tactics of Chandra's Spitfire
By Michael Flores
Posted on July 23, 2019

 スタンダードの赤単が得た最も重要な新しいイノベーションのひとつは、基本セット2020に収録されたこのカードです。

《チャンドラの吐火》

 既にAaron Barichが新環境最初の週で優勝しているデッキに入っていたため、シークレットテクというわけではありませんが。このカードが野心的な赤単に何をもたらしたのでしょうか?

【デッキデザイン】

Mono-Red Aggro | Core Set 2020 Standard | Aaron Barich, 1st Place SCG Open Worcester
 
creatures (24)
4 《チャンドラの吐火/Chandra's Spitfire》
4 《燃えさし運び/Ember Hauler》
4 《狂信的扇動者/Fanatical Firebrand》
4 《ギトゥの溶岩走り/Ghitu Lavarunner》
4 《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》
4 《遁走する蒸気族/Runaway Steam-Kin》
 
instants (8)
4 《稲妻の一撃/Lightning Strike》
4 《ショック/Shock》
 
sorceries (7)
3 《批判家刺殺/Skewer the Critics》
4 《舞台照らし/Light Up the Stage》
 
enchantments (1)
1 《実験の狂乱/Experimental Frenzy》
 
lands (20)
20 《山/Mountain》
sideboard (15)
3 《丸焼き/Fry》
2 《炎の侍祭、チャンドラ/Chandra, Acolyte of Flame》
3 《無頼な扇動者、ティボルト/Tibalt, Rakish Instigator》
3 《実験の狂乱/Experimental Frenzy》
4 《溶岩コイル/Lava Coil》

 表面的には、《ヴィーアシーノの紅蓮術師》が《燃えさし運び》に入れ替わっています。《燃えさし運び》はタフネス2を持つことが大きく、赤単ミラーで輝く存在になります。小型クリーチャーへの牽制にも使えるとはいえ、今までのヴィーアシーノ・ウィザードよりは機能が幾分落ちてしまいます。

 2/1はいわば「いつでも金になる」ような存在でしたが、《燃えさし運び》は能力使用前に倒されてしまうこともありますので、この点については劣ります。

 とはいえデッキ全体の運用を考えた場合に、《燃えさし運び》は起動型能力のため、《チャンドラの吐火》の誘発を任意のタイミングで仕掛けられるという点で優れています。

 とはいえウィザードを失うのでデッキはいままでのバーンデッキのスタイルを変えなえればなりません。今までお世話になりました《魔術師の稲妻》。これに伴い本体へのダメージを与える手段が増えたので、《批判家刺殺》は今までよりももっと使いやすくなります。これにより《吐火》の爆発力をさらに高めることができるのです。

【《吐火》戦術】

 Barichの構築の全体的な利点は《チャンドラの吐火》を「爆発」させることに長けている点です。プロツアーチャンピオンのPatrick Chapinも、以前アグロデッキに《紅蓮術師の昇天》を入れる同様の手法を取りました。

 よくありそうな動きの手順を追ってみましょう。

 1ターン目:《山》→《狂信的扇動者》
 
 2ターン目:《山》→《燃えさし運び》
 
 3ターン目:《山》→《チャンドラの吐火》
 
 さて、1ターン目と2ターン目に《狂信的扇動者》で攻撃をしていれば、対戦相手のライフは少しながら削れています。ここでは相手が3ターン目に地上ブロッカーを用意したと想定しましょう。対戦相手のライフは現在18です。
 
 4ターン目。《燃えさし運び》の能力を対戦相手に。相手のライフは16。
 
 続いて、《狂信的扇動者》の能力を起動。相手のライフは15。
 
 この時点で《吐火》のパワーは7です!
 
 残り8点を削るのはそこまで難しそうに見えますか?
 
 ここに1マナで《批判家刺殺》を加えることもできるでしょう(対戦相手のライフは12、《吐火》のパワーは10!)《狂信的扇動者》でもゲームを終わらせることができるでしょう。

 《狂信的扇動者》→《燃えさし運び》→《チャンドラの吐火》という流れは非常にいいと思います。しかし、こういったコンボじみた動きはさまざまなパターンがあり、デッキの使い手次第でいくらでも場所を探すことができるのです。

 《吐火》は他にも素晴らしい点があります。

 十分なタフネスを持っているのです。《稲妻の一撃》圏内ではありますが、《肉儀場の叫び》では一掃されません。もっといいことに、2枚以上の《吐火》が並ぶことで、暴力的な一撃をお見舞いすることもできるのです。タフネス3のため一掃も難しいでしょう。

【プレイ指針】

 《チャンドラの吐火》の可能性は、全く異なるプレイパターンを実現します。

 こんなケースがありました:

 私は先週のフライデー・ナイト・マジックで、マナフラッドに陥り、《山》を握りしめながら、それでも《狂信的扇動者》を起動することで《チャンドラの吐火》をパワー4にすることができる盤面に辿りつきました。

 対戦相手のライフは6点。ここで顔面に1点当ててしまうと、戦場には《チャンドラの吐火》だけが残されてしまいます。

 ちょっと考えた結果、私は2体で攻撃することを選びました。戦場に2体を残しておくことは、今までの赤単では直感的に正しいパターンだと思ったからです。

 しかし、よくよく考えてみれば大間違いでした。

 相手は苦しみながらX=1の《集団強制》を打ち込み(当然《吐火》を奪います)、私の場には《吐火》だけが残されました。私は終始マナフラに陥りながら、それでも最後に《狂信的扇動者》を引きこんだのです。

 対戦相手のライフを1に落とし込んでおけば、他の何を引いても、《狂信的扇動者》でも勝つことはできたはずです。対戦相手のライフが残り4では何を引き込んでも、1枚で相手のライフを削りきる事ができません。

 《チャンドラの吐火》は強靭なレバレッジになりますが、そのためにはアクションが必須です。このデッキは行うべきアクションにバイアスがかかります。火力呪文の威力が2倍になり得ますが、いくつかのケースにおいて――いくつか選択肢はありますが――1マナでとれるアクション、もしくは0マナで行えるアクションでさえも、正しい状況を見つけなければなりません。

 一般的なルールに落とし込むことは非常に困難です。しかし私が強いて表現するなら、次のようになります:

「対戦相手がフルタップしていたり、もしくはこちら側の行動が妨害されないチャンスがあるなら、そこでオールインすることで大量のダメージを与えることができるなら、そのタイミングで仕掛けるべきだ」

【《吐火》戦略】

 MTG Arenaで面白い状況があったので紹介しましょう。

【状況】
対戦相手:
 ライフ11、手札1枚
 戦場:《島》4枚(アンタップ状態)、《大嵐のジン》
こちら :
 ライフ18、手札1枚(《山》)
 戦場:《山》4枚(アンタップ状態)、《ゴブリンの鎖回し》、《チャンドラの吐火》、《狂信的先導者》2体

 私は《狂信的扇動者》2体を残し、3マナ域2体で攻撃を仕掛けました。

 私が想定すべき最悪のシナリオは、対戦相手の手札が《潜水》だった場合です。

 もし彼が《ゴブリンの鎖回し》をブロックするなら、ダメージ解決前に《潜水》を打つはず。その場合は対戦相手に合計9点のダメージが入ります(対戦相手がこちらの手札を火力だと思っているなら致死量です)。

 もし彼が《鎖回し》をブロックした上で《潜水》を使わなければ、先制攻撃でダメージを与えることができ、相手の手札がベストであろうと《大嵐のジン》を打ち取る事が出来ます。

 しかし彼は《吐火》をブロックしました。当然こちらは《狂信的扇動者》で《吐火》をパワー4にしました。当然のように《潜水》は《大嵐のジン》にプレイされ、私はもう1枚の《狂信的扇動者》を起動せざるを得ませんでした。お互いにトップデッキモードになりましたが、2ターン後に《鎖回し》がそのままゲームを決めました。

 《チャンドラの吐火》は大量のダメージを与えるのには素晴らしいクリーチャーですが、必ずしも戦闘に強いわけではありません。《鎖回し》は《狂信的扇動者》や《燃えさし運び》といったトリッキーな起動型能力と上手くかみ合う素晴らしいクリーチャーです。一緒に登場した場合には、ただ単に赤単側にとってライフ詰将棋のような状況を生み出すだけでなく、対戦相手を惑わす変化球にもなり得るのです。

 またひとつ前に進みましたね。

【《吐火》とサイドボード】

 《変容するセラトプス》《夏の帳》は青に非常に効果的なサイドボード・カードです。《変容するセラトプス》は相手の打ち消しを掻い潜る非常に素晴らしい方法であり、《テフェリー》を一撃で倒すことができます。《夏の帳》は打ち消し呪文に対する打ち消しのように機能します。追加の青対策カードとしては申し分ない性能です。

 赤単はこういったカードをプレイしたいのですが、当然ながら、タッチをしなければ使えません。

 緑のように、赤も青対策のカードをM20でも手に入れました。ちょっとだけですが……。

《丸焼き》
 このカードは《黎明をもたらす者ライラ》だけでなく、赤単が悩まされ続けてきた問題のあるタフネス4以上のカードを、《実験の狂乱》影響下においても対処できます。《変容するセラトプス》のように、《テフェリー》達を一撃で落とすことができます。

 まず最初に聴いてください。《丸焼き》は十分ではありません。

 《紺碧のドレイク》は赤単にとってはほとんど対処不能です。今まで記事内でさんざん語ってきた《チャンドラの吐火》に対する非常にマナ効率のよい対処手段です。これまで同様に《執着的探訪》のエンチャント先としても申し分ありません。それだけではありません!! 《紺碧のドレイク》はPWのブロッカーとしても素晴らしく、《風景の変容》や《全知》までの時間を稼ぐのに非常に有効な手段となります。

 こちらが《丸焼き》を何枚持っていようと、《紺碧のドレイク》を突破することはできません。

 多色デッキにしたところで、具体的に《紺碧のドレイク》を回避する手段は明確ではないのです……

《夜群れの伏兵》

 ……しかし、クリーチャー性能に乏しい青系デッキに対しては?

 このカードはどうでしょう?

 《稲妻牝馬》

 なるほど。

 もし他の色をタッチするのであれば、緑がおすすめです。前述のサイドボードカードにアクセスできるようになるだけでなく、次のようなカードも使えます。
《燃えがら蔦》《争闘//壮大》
 しかし、《紺碧のドレイク》の守りを突破できますか?

《クロールの銛打ち》
 《クロールの銛打ち》の美しい点は、いくつかの点で柔軟性があることです。天使への除去に使用することもできます。《紺碧のドレイク》対策としては? EtB能力で一方的に《ドレイク》を打ち取って、戦場に3/2が残る……悪くないですよね?

 《稲妻牝馬》と《クロールの銛打ち》どちらを使うか(もしくはもっとニッチなカードを使うか)は自分なりに答えを探してください。そのカードはキラーカードとなり、自身のデッキを《紺碧のドレイク》から守ってくれるでしょう。

LOVE

MIKE

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