【拙訳】デッキ選択における10の「間違い」 by Seth Manfield(TCGPlayer Infinite)

 世界選手権優勝も記憶に新しい(5年前ですが)殿堂プレイヤー・Seth Manfieldによる「大会でのデッキ選択」に関するコラムです。

 プレイヤーがデッキ選択において犯しやすい「10の間違い」を分かりやすく説明してくれています。流行り、友人の勧め、ネットのデックテク記事、などなど、様々なデッキとの出会いがありますが、どうやって使うデッキを選ぶべきなのでしょうか。

 競技プレイヤー向けに書かれていて、大会に出る際、そのたびに読み返したい記事です。ぜひどうぞ。


Top 10 Mistakes Players Make When Choosing a Deck
Seth Manfield | 5/21/2020 | 7 min read

■はじめに

 どのデッキをプレイするか、というのは、どんなトーナメントの準備においても一番難しい要素だろう。とはいえ、よくある「落とし穴」さえ避けられれば、自身がどうすべきかの結論を出しやすくなり、自ずと結果も付いてくるはず。ここでは、75枚(※)を選ぶ際に気をつけるべき10の「間違い」を挙げていこう。

※あっ、ヨーリオンを使うなら95枚だね。

 この記事では、レベルアップを目指す競技プレイヤーを主眼においている。なので、読者諸兄の中で、持っているカードでゲームを楽しみたい、とか、あるいは特定のプレイを楽しみたい、というプレイヤーがいれば、七面倒なことは考えず、自分がプレイしていて最も楽しいデッキを選択しよう! しかし、勝つために最善を尽くして戦うというのであれば、ぜひ読み進めてほしい。

■間違いその1:誰かに薦めてもらったという理由でデッキを使う

 これは大きな間違いだ。他のプレイヤーからそのデッキの素晴らしさを聞いた、というだけで、特定デッキのプレイ義務があると感じているプレイヤーの、なんと多いことか。他の人の意見を信頼すると、どうしてもフラストレーションが溜まりがちになる。

 自身の強みを発揮するんだ。他のプレイヤーが同じデッキで結果を残しているのに、自身が期待通りの結果を出せないなら、君がそのデッキをプレイすることはないんだ。デッキの使い方を完全に理解していないことが原因かもしれないけれど、それでいい。誰もが同じアーキタイプのデッキでうまくいくわけではないのだから。

■間違いその2:自身のプレイヤーとしての強みを知らない

 前の問題と関連する話題になるけど、自身が得意なデッキの種類を知っておくことは非常に重要だ。競技シーンの最高峰においても、多くのプレイヤーは、自身の好むプレイスタイルに基づいてデッキを選択することで、成功を収めている。コントロールデッキしかプレイしないGreg Orangeを見てほしい。これでいいのだ。彼は全てのイベントでコントロールデッキをプレイすべきだ、と理解しているだけでなく、そのデッキタイプのみに集中することで、準備時間をより有効に活用できるんだ。

 プレイヤーの多くは、可能性のあるデッキをひとつひとつテストするだけの時間的余裕はない。一種類のデッキタイプに的を絞れば、デッキ選択の過程で選択肢を絞り込むことができる。こうすることで、大抵の場合は、最終的にプレイするデッキを調整する時間が増えることになるんだ。

■間違いその3:選択が遅過ぎる(あるいは、早過ぎる)

 時間管理は、イベント準備においてとても重要だ。誰だって使用デッキ決定を遅らせたり、あるいは早過ぎたりすることは嫌うだろう。さて本稿では、「デッキ登録リミットぎりぎりまで、デッキリストの最終決定を待つ人がしばしばいる」という前提で話すことにしよう。

 とかなんとか言いながら、僕でさえもリストは残り数分までリストを固めない人間のひとりだ。それでも大抵の場合、かなり長い間、最終的に使うデッキの調整を行っている。テストの最終段階まで、複数のデッキを調整していることもしばしばある。僕の場合はイベント前にたくさんMtGをプレイする時間は十分にあるけれど、誰しもそうした贅沢な時間の過ごし方ができるわけでもない。大切なのは、サイドボーディングをどのようにすべきか自分でよく理解する前に、リストを固定しないことだ。よりよい理解をして初めて、75枚のカードがすべて自分の望む75枚になるんだ。

 ほとんどのプレイヤーは、最後の最後までデッキを決めないことの危険性を重々承知していると思うけど、同様に、デッキ選択が早過ぎるのもお勧めはしない。メタゲームは急速に変化するものだし、1週間前、あるいは2週間前にいい位置にいたデッキが、次の週も同じようにいい位置にいるとは限らないからね。こうした理由もあって、僕は最後の1時間までプレイをするようにしているよ。

■間違いその4:メタゲームを気にしない

 俯瞰したメタゲームを理解できていなければ、メタに合ったデッキ選択はできない。僕のようにオンラインで練習している人もいると思うけど、オンラインで人気のあるデッキがあるなら、出場予定の大会でそのデッキに遭遇する可能性も非常に高い。予期しないデッキに出くわすこともしばしばあるけれど、まぁ、それは仕方ないね(笑)。

 僕がシミックフラッシュをミシックチャンピオンシップVIIに持ち込んだとき(リンク先は英語)は、我ながらいい選択ができたと思う。シミックフラッシュが特段いいデッキだとは感じなかったけれど、当時最有力と思われていたジェスカイファイアーズを倒すために手に取ったんだ。結果的にこれは正解だった。その後メタゲームが加速して、MCの後になるとシミックフラッシュの立ち位置は後退した。こんなふうに、特定の大会において、メタゲームによって素晴らしい選択肢が生まれ得るんだ。

■間違いその5:「ベストデッキ」をプレイすべきだ、と思いこむ

 これは非常に重要な点だ。デッキがあまりにも強いからといって、プレイしなければならない、と思い込まないでほしい。《オーコ》がスタンダードにいた時のことを覚えているかい? 僕は一時期《オーコ》を倒してやろうとして、たとえどれだけコテンパンに返り討ちにされようとも、プレイをしなかった。それでいい。とりわけ一強が決まっているような環境では、何がベストデッキであるかを見定めることも簡単だから、最初にそれに対抗すべき方法を試すべきだ。僕はめったに環境のベストデッキとやらをプレイしない。

■間違いその6:テストを優先しない

 誰しも、「友人やチームメイトと一緒に、ターゲットを絞ったテストをする」という方法がとれるわけではないけれど、できるなら絶対にすべきだ。プレイしておきたい最初のマッチアップは、準備しているイベントにおいて最も人気があると見込まれているデッキだ。一人回しや練習用デッキ相手にプレイしてはいけない。そうした簡単な方法はひとまず脇に置いておこう。サイドボード後のゲームもプレイしておこう。そのマッチアップにおけるプレイ方針を確立できるまで、十分なゲームをプレイすることが必要なんだ。

■間違いその7:オンライン調整に過度の信頼を置く

 マッチアップにおいて、それぞれ両方のデッキを使って勝った、なんて話を聞いたことがあるかい? ここが腕の見せ所だ。ときどき、プレイヤーはほとんどのデッキでよい勝率を記録することがあるけれど、これは単に乗り手が強い、という証でしかない。ただし、自分のとあるデッキが、他の特定のデッキより有利だ、と主張している時ほど注意が必要だ。赤単アグロとのマッチアップがどれほど優れているかについて主張することをよく目にするけれど、僕はそういうデッキに実際に勝っている。

 これは、対象を絞った調整が非常に重要である理由のひとつだ。ラダーに飛び込み、ほとんどのデッキに勝ったとして、対戦相手もミスをするものだ。そのミスがどのように結果に反映されたのか、正確に観測することは不可能に近い。その後トーナメントに出てみると、有利だと思っていたマッチアップが実際はそうでもない、ということに気付く。これは非常に陥りやすい罠なんだ。数回のラダーで結果を出せたとしても、机上の空論を信じてはいけない。

■間違いその8:対戦結果を記録しない

 オンラインのプレイ実績を十分に収集したいなら、スプレッドシートを用いてすべてのマッチを記録しよう。また、マッチ毎に時間を記録しておくのもいい。対戦相手のリストは同じ週の中でも変わっていくから、マッチアップとサイドボードプランはメタゲームの変化に応じて変えていくことが必要だ。

 最終的に使用するデッキを決めるとき、全ての対戦から集めたデータが非常に貴重な資料となるだろう。

■間違いその9:オンラインのデッキガイドを盲信する

 時間の制約があるため、プレイヤーの多くがデッキ選択をする際には、主にインターネットでの情報収集に依存する。カジュアルなトーナメントはそれで十分だけど、十分な準備をしたいと思うなら最良の選択とは言えない。残念なことに、インターネット上の情報がすべて良い情報であるとは限らないんだ。

 配信を視たり、サイドボードガイドを読んだり、Twitterの投稿をフォローしたりしたところで、すべてが理解できるわけではない。理想論だが、全ての情報は、自身のアイデア、そして準備を補足する材料でしかない。そうした情報の全てが悪いと言いたいわけではないけれど、信頼できる情報源を押さえ、メタゲームのように、情報もまた素早く変化するということを忘れないでほしい。サイドボードガイドのようなものを探しているのであれば、正確に行うためには最新の情報を押さえる必要がある。それに抵抗がないなら、見たり聞いたりしたことを準備に活かすよう適応していければいい。他の誰かの75枚をコピペしてもうまくいくことはほとんどない。


■間違いその10:嫌いなデッキを選ぶ

 最後の項目は、とりわけ僕にとっては非常に重要なことなんだ。調整の過程は、宿題を黙々とこなすようではいけないし、君だってそうしたくないだろう? デッキを手に取ってもそれをプレイしたくないと思うなら、やめればいい。好き嫌いは、データに基づいて判断しなくてもいいんだ。

 僕にとっては、僕が今実際にプレイしたいデッキを使うことで、うまくいくことがほとんどだ。これは即ち、そのデッキで頻繁にプレイしてのめり込める、ということを意味する。この興奮なくしては、モチベーション低下にもつながるし、全部を窓の外に放り投げてしまうだろう。勝つことだけがMtGのすべてではないんだ――とどのつまり、僕らがプレイしているのは、どこまでいっても運が絡むゲームなのだから。

Seth Manfield


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