GW奇譚

まとまった休みがあると何か予定を入れなくてはならないなどと思ったことはこのかた一度もなく、現にこのゴールデンウイークも何もない。勤め先などではゴールデンウイーク前にゴールデンウイークは何するの的な会話をしてはみるが、それを聞いたところでどうなるものでもない。ただゴールデンウイークに何をするか聞くことが世の礼儀だと思って聞いているだけである。答える方も何もないとは答えたくないのか、ない場合でも子どもが受験でとか、それっぽい理由でないことにしたがる(現にその通りなのだろうが)。
 人が休みに予定を入れたがるのはどうも予定が入っていないことがその人の人生の不充実=不幸を表してしまうからというようなことをどこかで見つけた。不幸と思われるは確かに嫌なことだし、みじめであろう。
 ただゴールデンウイークだからといって何かをしないといけないということはまったくなく、予定が入っていないことに対する強迫観念を持つのはナンセンスである。

 ところで私はかなりの猫背であって、後ろ姿に哀愁を醸し出してしまうほどらしい。この猫背は私の気分によって程度が変化するようで猫背がひどくなると、周囲からはかなりストレスが溜まっているようだと思われている(らしい)。またある人がいうには真夏なのに寒そうに見えると。それはそれで逆に面白いけど。
 ということでゴールデンウイークは猫背を治すことに決めた。まず何をすべきか考えたが、理屈としては猫背とは前方向に丸まっている状態なのでそれと逆方向に伸ばせばいいはずである。私は10年ぶりぐらいに背筋の筋トレをすることにした。うつ伏せに寝っ転がって体を反ってみたところ、驚くべきことに1ミリも上がらなかった。確か中学生の頃は上がっていたような記憶はあるが。身体に重大な衰えが忍び寄っている。私は怖くなって、そっと仰向けになり、天井を見上げた。背筋恐るべし人のゴールデンウイークを笑うべからず。

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