写ルンですが写るんです

 小さくて、軽くて、チープ。そのような理由で最近は写ルンですをよく持ち歩いています。32mmのプラスティック製単レンズにF10の絞りで、シャッタースピードは1/140くらいです。ライカの様に殺傷能力はありませんが、投げて頭に当たると痛いです。
 今年で30周年を迎えるという事で調べてみると、僕と同じ歳でした。小学生の頃よく使っていた記憶があるので、現在は既に何度目かのブームだと思われます。絵もチープで、僕らの世代でいうとヒロミックスや蜷川さんのいわゆるガーリーフォトと呼ばれる、35m系私的写真の流れの中に位置付けられそうです。
 最近のブームのきっかけの一つは奥山由之さんにあるとは思うのですが、それ以前に鈴木親さんを中心としたエディトリアルでのフィルム回帰の流れがベースにあります。紙媒体が低迷して、ウェブに移行し始めた2000年後期、デジタルばかりだったところに、フィルムのユルい感じが編集にも読者にも新鮮に映ったのです。今では逆にメディアがフィルム写真だらけになっている感じもします。
 奥山さんは写ルンですを使いすぎていて、巻き上げる時にノブに当たる指の部分が硬くなっているとおっしゃっていました。彼の場合は現像時に増感して、更にプリント又はデジタル上で少し手を加えることにより、あのビビッドで独自のトーンを追求しています。普通に使ってもあのようなトーンは出ず、もっとプレーンな写りをします。
 こう言うと語弊があるのですが、写ルンですは絵のユルさとその女々しさから、僕の周りでは嫌悪するフォトグラファーが多いです。
 しかし、極度に限定された機構とフィルムという要素が、写真の本質を再認識させてくれるものだと思います。すぐ簡単に撮れるという点では、iphoneと同じなのですが、ファインダーで覗くという行為と、36(27)枚の中で現像時間を経て、セレクトの中で光景と再度対峙するという経験ができます。それはデジタルで飽和したスピードと効率だけが求められるこの世界で、また違った楽しみを与えてくれるものなのです。

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