ヴァーチャルリアリティ的

新年明けましておめでとうございます。

いつもお世話になっている皆様、今年もよろしくお願いいたします。

はじめましての方には、簡単な自己紹介を。

MyDearest株式会社という、VRミステリーアドベンチャーゲーム「東京クロノス」(2019年初頭リリース予定)を筆頭に、これまでにはVR漫画やVR小説などを企画・開発してきたスタートアップ企業の創業代表を務めております、岸上健人(きしがみけんと)と申します。

「東京クロノス」は、昨年クラウドファンディングで国内外から1800万円を集めVR界を超えて話題を呼び、ありがたいことにCAMPFIRE AWARD2018のエンタメ賞も受賞しました。(いよいよリリースが近づいてきており、初夢にも「東京クロノス」が出てくるくらいドキドキな日々です)

さて、この度は年末に久しぶりに読み直した糸井重里さんの「インターネット的」の影響で「ヴァーチャルリアリティ的」を書きたい!と思い立ち、こうしてnoteに文字を連ねています。

ヴァーチャルリアリティ(VR)元年と呼ばれた2016年(弊社が創業した年でもあります)から、今年2019年で4年目であり、これまで発生した変化や、これから起きてくるであろう変化をまとめて、たくさんの人にヴァーチャルリアリティ(VR)によって生じる大きな流れや、私たちが「東京クロノス」というVR作品で挑戦したい大きなテーマに、興味を持ってもらえたらと思っています。

ちなみに上記の「インターネット的」は2001年に出版されたにもかかわらず、いま現在2019年において、本当に書かれた内容通りだと感じることが多々あり、まさに予言の書、と呼ばれるほど名著です。まだ未読の方はこの機会に是非。

本書において「インターネット的」とは、「インターネット自体がもたらす社会の関係の変化、人間関係の変化みたいなものの全体」。「自動車とモータリゼーションの関係」と表現されています。

上記からお分かりの通り、このnoteでは「ヴァーチャルリアリティ(VR)」そのものより「ヴァーチャルリアリティ的」つまり、「ヴァーチャルリアリティ(VR)がもたらす社会関係の変化、人間関係の変化、創作物の変化など」について、私の考えを以下3つの項目で述べたいと思います。

1. 空間(存在)のインターネット
2. 創作物、コンテンツと呼ばれるモノの行方
3. 超共感、さらには"同感"の時代へ

(※これ以降、ヴァーチャルリアリティをVRと表現させていただきます)

それではまず

1. 空間(存在)のインターネット について

まず前提として、「VR」は、これまでのテクノロジーと比較して「より人間的なモノ」と私は捉えています。

なんで、最新のテクノロジーであるVRの方が「より人間的なの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。

ただ、コンピューティング/インターネットの歴史はずっと、人間にとってより自然になるよう進化してきました。

文字だけのインターネットから、画像や動画が処理できる時代になりました。キーボードを使用するだけでなく、タッチパネルによって指で直接触れて操作ができるようになりました。最近だと、声でも操作できます。

かつては、手紙で遠方の人と連絡を交わしていたのが、電話になり、そしてビデオ通話にもなってきました。

文字だけしか見れなかった時代から、人を映像で見て聴いてコミュニケーションがとれるようになってきたのです。

ここにおいてVRは、

文字→画像→動画と進化してきたインターネットの次。

文字→画像→動画→「"空間"のインターネット」なのです。

さらに深堀りすると、「空間に"存在する何か、誰かを感じて"インタラクションする、『存在のインターネット』」と言うこともできるのです。

2018年の後半以降、「空間(存在)のインターネット」として非常に分かりやすい事例が出てきました。

それが「VRライブ」です。

事例❶ - "VRライブ"

2017年末からブレイクした「VTuber(バーチャルユーチューバー)」の音楽ライブが2018年後半以降ドンドンと開催されているのです。代表例だと、VARKClusterというVRライブプラットフォームで行われた人気VTuberである「YuNi」「輝夜月」のライブや、VRChatというソーシャルVRサービスでの、有志VTuber(企業に属さない"個人勢"と呼ばれる人たち)が中心となり開催されたバチャフェス(VRC Vertual Festival 2018)です。

上記、どれも大変すばらしいものでしたので、ご存知なかった方は、是非一度ご覧ください。

Oculusの創業者のPalmer Luckeyも、日本のVRライブについて「アメリカより数年進んでいる」と言ったほどです(アメリカではそもそもVRライブをやろうという発想すらあまりないのが現状)

上記の、リンクをご覧になっていただいた方は、「なんか凄そう」と感じられたのではないかと思われます。

ただ、VRゴーグル(HMD・ヘッドマウントディスプレイ)を使用して見た場合は、スマートフォンやパソコンで視聴した場合とくらべて、何百倍も体験が強くなる、ということは声を大にして言っておきたいと思います。

それが「空間(存在)のインターネット」の破壊力なのです。

まず、ご理解いただきたいのは、現在のスマートフォンやパソコンの画面は、「平面(2D)のディスプレイ」です。

しかし本来、現実とは2Dではなく、空間のはずです。

想像してみてください。現実のライブハウスでは、前も後ろも横も上も下も眺めることができ、周囲には人がいます。そしてステージではアーティストが歌ったり演奏します。

そして、自分がその場にいてライブに参加しているという"臨場感"があります。さらには、周囲には人がいて、自分は確かにそこに存在していて、アーティストも、確かにそこに実在している、という存在感・実在感、があるはずです。

現実のライブは、空間の体験であり、自分も他のお客さんもアーティストも確かにそこに存在しているという実感があるはずです。

VRゴーグルを体感したことのない方に伝えたいのは、VRとは単なる3D体験ではありません。

VRライブの場合であれば、現実のライブ体験とほぼ同じです。

たしかな、存在感・臨場感を持って、その空間でライブを体験することができるのがVRライブです。

上記のYuNi VRライブのGIFを見て、VRゴーグル体験者の方であれば、一発でこれがどんな体験かを想像がつくと思います。

VRゴーグル未体験の方に改めて、声を大にして言いたいことは、これをVRゴーグルで見ると「現実とほぼ同じ感覚ですよ!」ということです。

確かにそこに存在しているYuNiと目が合い、見つめられて、近づかれる。

特に「目が合う」ということは、後の②③でも触れる非常に大切な点なので、意識をしておいていただきたいです。

目が合った瞬間に、「確かにそこにいる」という感覚から抜け出せなくなってしまうのです。

そもそも、「VRを仮想現実と訳すのは間違いである」というのはVRに関わる人の間では有名です。VRを正確に訳すなら、「実質的に現実」、「ほぼ現実」、「人口現実感」というのが相応しい翻訳のようです。

また、「空間のインターネット」ということは、上記で述べた通り、これまで平面(2D)だったインターフェイスが、空間のインターフェイスになるということなのです。

例えば、AmazonでKindle本を購入する体験は、「平面の体験」です。

スマートフォンやパソコンの平面インターフェイスは、とても合理的で、効率的で、無駄がないです。

しかし、現実の本屋は、当たり前ですが「空間の体験」です。

事例❷ - "本屋"

私は本屋が好きで、ほぼ毎日行きます(電子書籍も使うのですが)

本屋の空間体験は、「周囲を見渡すと、たくさんの自分に無関係だと思っていた本が目にうつり、店員の方が書いたポップなども目に入ります」。そして、予想外にも「この本面白そう!」と感じる本に出会う偶然が生じます。

平面のスマートフォンやパソコンのKindle体験では、レコメンド機能は確かにあるのですが、予想外の、偶然と言えるほどの本との出会いはなかなかありません。基本的には、自分が予想のつく範囲、もともと欲しかった本を購入する体験です。

平面インターフェイスは、効率的で、非常に優秀なのですが、現実の本屋体験が持っていた、空間だからこそ生じる「良い無駄」まで削ってしまっているのです。

それを取り戻すのが、VRがもたらす「空間のインターネット」。インターネットの世界に、効率化の名のもとに削られてしまった「良い無駄」、「アナログ感とでも呼べるもの」を復活させてくれるのです。

本だけでなく、ショッピングモール的な買い物の楽しさがVR時代に盛り上がるはずです。

そして、VRライブと本屋を分かりやすい事例として「空間(存在)のインターネット」について述べましたが、ここからさらに深堀りしていきます。

「存在のインターネット」と言っているからには、存在するものがあるのです。

分かりやすい例で言うと、先ほどから例に登場しているVTuberですが、それはまだまだ氷山の一角にすぎないと考えています。

VTuberというと、どうしても現状では人気のあるアイドル性のある存在を想像してしまいます。

しかし、もっと大きな枠組みでとらえると、それは「アバター文化」です。

現在のVTuberのように、今のtwitterのアイコンのように、一人一人がアバターを持ち、VR空間上でインターネットをする時代が始まりつつあります。

まさに、上述のVRライブの事例であげた「バチャフェス」はVRChatというプラットフォームで、一人一人が自分のアバターをまとい活動している最強の事例なのです。ちなみに日本発のソーシャルソーシャルVRプラットフォームには、先ほどあげたClusterや、ambrというサービスがあります。

(ambrはHPが見つからなかったので代表の方のtwitterを載せておきます)


そして、「アバター文化」を理解する上で、大切な考え方の一つが「フラット」です。

この「フラット」という言葉は、まさに糸井重里さんの「インターネット的」に出てくる3つのキーワードの内の一つで、非常にインターネットらしい概念です。

インターネットは、年齢、性別、立場などを無意味にし、まさに「フラット」な世界を作り出す力を持っています。

そして「VR的」という時に、「アバター文化」により、この「フラット」がさらに加速するのです。

上記のツイートが1万いいねを超えるほど反響を呼んでいます。(しかも、上記のツイートをしているEiji/DJ RIOさんはGREEの取締役の方です。アバターをまとって時代の先頭にいますね笑)

見た目や性別、年齢を無効化し、VRにおいてそれぞれが好きなアバターを身に着け、活動することができるのです。

そして、お互いに「アバターをその人の存在・本質」としてコミュニケーションができるようになるのです。

ちなみに、③でも関係するのですが、アバターを通じてコミュニケーションすると、自分がそのアバターに相応しい動き・考え方をするように、行動に変化が起きる、とも言われているほどなのです。

本質的には、仮装パーティー・仮面舞踏会も同じような意味を持っているので、VRというテクノロジーを用いなくても、非常にヴァーチャルリアリティ(VR)的ということができると思います。

❇︎

次に、

2. 創作物、コンテンツと呼ばれるモノの行方  について話をしたいと思います。

僕はVR時代の創作物を考える時に、いつも「コンテンツ」という言い方に違和感を覚えてしまいます。だからこそ、あえて「創作物」という呼び方を用いています。

結論から述べると、VR時代には、コンテンツはプラットフォームになる、コンテンツ アズ プラットフォームの時代が来ると予想しています。

さらに言葉を変えるなら、コンテンツと呼ばれるものは「世界」になります。

先ほどから言っている通り、VRは「空間(存在)のインターネット」です。つまり、創作物の空間に、世界に、入り込んで、ほぼ現実と同じような体験ができるのです。

ちなみに、コンテンツという言葉は、プラットフォームという言葉に対応したモノで、「プラットフォームの内容・中身」という意味です。

しかし、今エンターテインメントの世界で、少しずつその図式が壊れ始めているような気がしてなりません。

分かりやすい事例でいうと、「FGO(Fate/GrandOrder)」です。

FGOは最も人気のあるスマートフォンゲームの一つで、元々はPCゲームであったFateという作品を拡張して、壮大な世界観を築いています。

FGO単体で生み出す利益はとてつもない規模であり、FGOという世界観の中から、たくさんの新たな人気キャラクターや物語が生まれているほどです。

他にも、そもそもVRを舞台にした作品である、「SAO(ソードアート・オンライン)」も分かりやすい事例です。

現在は「アリシゼーション編」がアニメ放送中という、それぞれのシリーズでは異なるVR世界が舞台となっています。

さらには、AAA(トリプルエー)クラスのゲームとなってくると、もはやプラットフォームよりも遥かに大きな影響をユーザーに与えます。

ユーザーはFGOやソードアート・オンライン、AAAタイトルの世界にどっぷりとつかり込んでいるのが現状です。

ちなみに、AAAタイトルのゲームについて、世界最大のゲームプラットフォーム「Steam」離れが進んでいるのではないか、という考察が2018に起こりはじめました。

こちらについては、現状ではSteam離れは進んでいない、と結論付けながらも、その兆候が見える内容が書かれています。

さらには、2018年末頃から始まったプラットフォーム手数料30%という常識の崩壊の始まり、が非常に面白い現象であると私は感じています。

上記の記事にも述べられている通り、ここ最近Epic Gamesが手数料12%、Discordが手数料10%のPCゲーム販売ストアを立ち上げました。

これは、コンテンツと呼ばれる創作物がプラットフォームより力を持ち始めた、さらには、コンテツ自体がプラットフォームのように、それ自体で完結させてしまう世界を形づくり出している、という現状が生み出した流れなのではないかと思っています。

かねてからオンラインゲームには、ゲーム内通貨もあり、一つの経済圏さえ築いてきた流れがありますが、VR時代にはまさにこれが加速するのではないでしょうか。

さらには、この現象は近頃「コミュニティ」と呼ばれ注目され始めたモノにも合致すると感じています。

人びとの嗜好は細分化し、創作物は、大規模ではないがらも熱狂的なファンが作り出すコミュニティにより収益を上げていくという考え方です。

「コンテンツ」アズ「プラットフォーム」アズ「コミュニティ」

という図式がVR時代の大きな流れになるのではないでしょうか。

ちなみに、VRエヴァンジェリストのGOROmanさんは著書で、「VRでバーチャルな国」が生まれる、とおっしゃってます。VR時代の創作物のコミュニティも、まさに国のようなものなのかもしれません。

また、創作物そのものが持つ力についても意見を言わせてください。

私が、「東京クロノス」というVRゲームをつくっていて、いつも感じることは、繰り返すようですが「空間・存在」です。

「東京クロノス」という作品は、誰もいない渋谷が舞台です。

VRゴーグルをかけて周囲を見渡した瞬間、「目の前に渋谷がある。自分は本当に渋谷にいる」という感覚を覚えます。そして、そこで登場するキャラクター、上記の画像であれば、桃野夕という女の子と目が合った瞬間、「確かに彼女はそこに存在する」という強い実在感があります。

❇︎

そして、この「存在感」というキーワードをきっかけにして、最後に、

3. 超共感、さらには"同感"の時代へ  について話をしたいと思います。

①で、私はVRライブについて「スマートフォンやパソコンで視聴した場合とくらべて、何百倍も体験が強くなる」、「現実のライブとほぼ同じ感覚である」、と述べました。

結論から述べると、ライブだけでなく、「VR時代のあらゆる創作物は現実並みのインパクトを与えます」

話が変わるようですが、私の大好きな小説に、辻村深月さん著の青春ミステリの傑作「スロウハイツの神様(講談社文庫)」という本があります。

この中で「創作物が誰かの人生に影響を与えられるか、人を救えるか」ということがテーマの一つになっています。

また、これまた私の好きな小説なのですが、相沢沙呼さん著の「小説の神様(講談社タイガ)」という本があります。(偶然にも両者のタイトルに"神様"と入ってますね笑)

この小説の中でも、「物語は人の心を動かせるか、人を変えられるか」

ということが一つのテーマになっています。それをめぐってヒット作が出せない小説家の主人公は悩んだり苦しんだりします。

こんな風に、「物語は人の心を動かせるか、人を変えられるか」ということは、あらゆる創作者にとっても大切なテーマなのではないでしょうか。

多くの創作者が、「人の心を動かしたい、誰かの人生を変えたい、自分の作品で誰かを救いたい」、そんな願いを持って作品を紡ぐのではないでしょうか。

そして、そんな多くの創作者の方々に伝えたいことは、「VRで創作物は、人の心をずっと大きく動かし、誰かの人生を変える、より強い力を持てるようになるかもしれない」ということです。

そもそも、私が「スロウハイツの神様」や「小説の神様」を読んで、登場人物たちに思いをはせ、共感し、胸が熱くなること、それ自体が非常にVR的なことだと思います。

物語にのめり込むことによって、その世界を疑似体験しているということなのですから、それは非常にVR的な体験なのです。


そして、VRはそんな物語による疑似体験をさらに加速させてくれます。


「物語の中に入り、その世界の存在を感じ、登場人物たちと目を合わせ、たしかな実在感を感じてしまう」

そして、①でも述べたように、物語の登場人物のアバターをまとい、一人称の体験をすることで、その物語の人物の振る舞いが乗り移ってしまうような体感をしてしまうのです。

VR作品には、3人称型と1人称型の二つがあります。

3人称型は、世界に入り込み神の目線でキャラクターを見たり操作するタイプです。PSVRのゲームでいうと、"ASTRO BOT" が傑作です。

このタイプは、目の前でまさにキャラクターの物語を目撃し、まさに「舞台のような感覚」が近いです。

ここにおいて、舞台と同じように、実在の人物の存在を感じて物語にのめり込めるため、登場人物への共感が段違いに上がります。

これがVRが持つ「超共感」の力です。


対して、1人称型は、自分が主人公になり物語やゲームを見たり操作するタイプです。PSVRのゲームでいうと、"Deracine"が非常に良作です。

1人称型は、自分さえもその物語の主人公になりきってしまい、目の前の登場人物たちと交流します。このタイプは、もはや共感を超えて、物語の主人公と自分を同化してしまい、まさに「同感」を呼び起こしえるほど強い体験です。

共感が、物語の登場人物の感情を理解し近づくことであり、同感はもはやその人物と同じ気持ちになってしまうことです。

VRによって、創作物にここまでの強い力を持たせられる時代が来たのです。

なぜ、ここまで創作物の影響へ私がこだわるのか。それは、私自身が物語に人生を救われてきた人間だからです。

かつて、クラスの片隅にいて人生に光を見出せないような幼少期でした。

しかし、私はフルーツバスケットという一つの少女漫画との出会いによって、優しさを教えてもらいました。この作品との出会いによって、本当に人生が変わり始めました。

主人公の本田透という、少女の、どんな逆境にも負けない優しい強さ、その少女の言葉に心が震えて何度も涙が出ました。

それから、このフルーツバスケットをきっかけにして、たくさんの作品と出会い、今ではVRでエンターテインメント作品を作る会社の代表として、創作物を作る側にまでなることができました。

私は、創作物(物語)とVRは非常に強い同じ力を持つと思っています。

それは、「人をより優しくする力」です。

先ほどご紹介したVRエヴァンジェリストのGOROmanさんや、同じくVR界のパイオニアの桜花一門という方は、「VRで人は優しくなれる」と、あるVR開発者の集まりでおっしゃりました。

桜花一門さんは壇上でこのような話をしました。

「人は、昔は残虐だった。見せしめの死刑が人々の娯楽だった時代もあったほどだ。しかし、活版印刷技術の普及で、人は新聞によって遠くの場所の誰かのニュースを知るようになった。それにより、その見知らぬ誰かに共感することができるようになり少し優しくなった。現代は、インターネット、SNSの普及により、よりたくさんの見知らぬ人の個人的な気持ちが見えるようになった。これによって、人は自分と全く関係のない匿名の誰かの気持ちを知り、共感できるようになり、さらに優しくなった。VRは誰かの視点にもなることができ、誰かの経験も追体験することができるようになる。だから、VRによって人はもっともっと優しくなれる」

僕は、この話をきいて胸が震えました。たしかに、自分はSNSによって、見知らぬ誰かに共感し、少し優しくなれたのかもしれない、とも思いました。

一例をあげると、育児で苦労されているツイートなどを見るたびに、会社の代表として、こういう方が働きやすくする会社・社会にしないと、と思うことがたくさんありました。

こんな風に、自分と立ち場や年齢や性別や国籍が違うたくさんの人々に共感することがSNSというテクノロジーで増えました。

そしてまた、VRはこの流れを遥かに加速させるとも確信しました。

VRの体験は鮮烈です。一度体験すると、スマートフォンの平面(2D)の体験には戻れないほどの、インパクトがあります。

だからこそ、私は「東京クロノス」という作品で、「VRの創作物によって、誰かの人生を変えるほどの強い体験を届けること」に挑戦したいと思っています。

「東京クロノス」は非常に「痛みのある」作品です。誰もいない渋谷に囚われた8人の幼馴染たちが、誰かが死んでいて、誰かが殺人犯かもしれない、という状況に直面するVRミステリー作品です。

どうしようもなく一筋縄ではいかない物語です。

「東京クロノス」を体験してもらう人に、

"VRだからこそ、はるかに強い心の痛みを感じてもらいたい、はるかに強く登場人物たちに共感してほしい、主人公にはもはや同感してほしい。"

そう強く思っています。

そして、願わくは僕が幼少期、フルーツバスケットと出会った感じたような、「人生が変わるほどの物語の体験」を「東京クロノス」をプレイしてくれた世界中の人に感じてほしい。そして、もしできれば、痛みを乗り越えた先にある、優しい気持ちを持ってほしい。

そういう願いを持って、「東京クロノス」という作品を2019年の春に世界中に送り出します。

ここまで、長い文章を読んでいただいた方々、本当にありがとうございました。

私の文章で、少しでも多くの人が「VR」、そして願わくは「東京クロノス」に興味を持って体験してもらえるとこれ以上の喜びはないです。

今VR界では、理屈抜きに面白い作品や体験がドンドン出てきてます。

2019年は、「東京クロノス」以外にもたくさんの素晴らしい作品が出ます。

一部ですが私が楽しみにしている作品をご紹介すると、「狼と香辛料VR」「Last Labyrinth」です。(狼と香辛料は1/12までクラウドファンディング中でもあります!ご関心ある方は是非!)

まだVR未体験の方には、いち早くVRを体験してもらい戻ってこられないほど鮮烈な体験をして感動してもらいたいです。また、PS VRが埃をかぶっているという方には、再び押入れから引っ張り出してきてもらいたいです。2018年からVR時代が大きく加速しましたよ。

それでは、いつか「ヴァーチャルリアリティ(VR)的」とは「人がより優しくなること」だったんだな、振り返ることができる素敵な未来でお会いしましょう。

そして2019年春リリースの「東京クロノス」を何卒よろしくお願いいたします。(ちなみにOculus GoというVRゴーグルは単体の2万2千円で「東京クロノス」がプレイできます)


ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。

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