向精神薬の中でももっとも手軽に多くの人に処方されているのが睡眠薬だが、服薬体験者の話や専門書を調べてみると副作用、依存性、耐性、やめる時の大変さなどがあり簡単な薬ではないことがわかる。睡眠薬として主に使われているベンゾジアゼピン系の薬、いわゆる”ベンゾ”についてこれから考えていくためにまず睡眠薬について整理してみました。

前回、精神科で処方される薬は、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬気分安定薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン薬、中枢神経とノルアドレナリン再取り込み阻害薬の８種類ですという話を書きました。

そして今回は、向精神薬の中でも一番なじみが深いというか、飲んでいる人が多い睡眠薬についてのお話です。睡眠薬は緩和精神安定剤とも呼ばれています。

●睡眠薬をきっかけに向精神薬の多剤処方になりやすい

私はメンタルサバイバーチャンネルという向精神薬の多剤処方に苦しむ方の自助グループを運営していますが、精神科に行った最初のきっかけが単なる「不眠だった」という人も多く、不眠症の薬を服薬したことがきっかけで次第に精神科の薬が増え、依存状態のようになり何年も苦しんでいるという話をたくさん聞いています。😢

日本で不眠の訴えをもつ大人というのは、なんと全体の２０％に及び、中高年以降で増えて特に女性に多いそうです。

精神科に限らず、内科などの医療機関でも「眠れないんです」と訴えると案外簡単に「もらえてしまう」のがこの睡眠薬。

では睡眠薬というのは、本当は一体どんな薬なのか？薬の本やインターネット、患者さんの話などから調べたことをまず簡単に整理してみました。

●「不眠症」の治療に利用される薬の多くはベンゾジアゼピン系睡眠薬

「不眠症」という症状に対して、病院で処方される主な睡眠薬はだいたい以下の４種類ですが、一番多く使用されるのが①のベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。ベンゾジアゼピン系睡眠薬はその種類も多く、効き目の強さや作用時間にバリエーションがあり、また出現する副作用も色々です。耐性ができやすく依存性もありますがその影響はかなり個人によって異なる様子です。

ざっと分けると①②③は  興奮する脳の神経に作用するもの、④は睡眠と覚醒のリズムをコントロールするものです。また⑤はヒスタミン薬の持つ眠くなる作用を利用したもので睡眠改善薬として市販されています。

①　ベンゾジアゼピン受容体作用薬
中枢神経の興奮を抑えるGABAという（ギャバ）いう物質に作用しGABAの働きを強めることで不安や緊張を和らげ、眠りやすくする薬。
②　バルビツール酸系薬  
バルビツール酸系薬も中枢神経の興奮を抑えるGABAという（ギャバ）という物質に作用して、GABAの働きを強め不安や緊張を和らげます。強い鎮静催眠作用があり、不穏や興奮状態の患者さんの救急的な鎮静に使用される薬
③オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンという覚醒を維持して安定させる神経を、抑制することで睡眠を誘導する薬。
④メラトニン受容体作動薬　睡眠ー覚醒リズムに働く鎮静作用ではない自然な睡眠を起こさせるのに良いとされている。マイルドな薬
⑤抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬のもつ眠気を催す作用を使う。一時的な不眠の改善に効果があり市販薬もある。

さて、もしあなたやあなたの周囲の人が、すでに睡眠薬を処方されていたら、まずその睡眠薬がどの種類の薬に当たるのか、どんな作用によって睡眠が助けられているのかをぜひ一度調べてみてください。お薬手帳に書かれた薬の名前をネットに入れて検索をすると種類はすぐわかるはずです。

そしておそらく大半の方々が睡眠薬としてベンゾジアゼピン系の薬を服薬していると思われます。このベンゾジアゼピン系の睡眠薬というのがどんなものかについてはまたこれから少しずつ色々な観点から調べてみるつもりです。

【参考にした本 】　
薬の作用が手に取るようにわかる本　黒山政一著　（じほう刊）
減薬・断薬サポートノート　嶋田和子著（萬書房）

薬の分類が掲載されている冊子『ゆっくり減薬のトリセツ』は減薬に関する様々な情報を掲載した小冊子です。以下メンタルサバイバーチャンネルのWEBサイト『MSCのお店』で入手できます。
https://lamappa.jp/mscshop/