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ドクター・インタビュー        関原芳夫医師            (新潟県見附市 お元気でクリニック院長)            もと脳外科医が漢方もつかっておこなう 向精神薬の減薬治療と自己手当のススメ


お元気でクリニック

関原先生は新潟県見附市で、心療内科, 漢方内科, 脳神経外科, 老年内科を標榜するクリニックを開設し、向精神薬のことで相談に来る患者さんに減薬の治療も行っています。2017年に、メンタルサバイバーチャンネルが都内で行なったイベント「公開診察室」について問い合わせをしてくださり、その後『ゆっくり減薬のトリセツ』『サバイバー物語』をクリニックの待合室に置いてくれています。時々オンラインゆっくり減薬・勉強会にも参加しています。   「信頼できる先生です」と患者さんからの推薦です。
インタビューをしてみて、関原先生は、漢方から簡易な心理療法、栄養療法、自己手当としての「つぼトントン」というトラウマ治療、ブリーフセラピーなど診察室でできる様々な手法を動員して患者さんの治療に向き合う熱い医師であることがわかりました。薬物療法しか行わない精神科の医師とはかなり違う広範囲なアプローチ。
こんな関係性の中で医師と患者が向き合うことができれば、向精神薬の減薬の難しさもだいぶ緩和される気がしています。長文ですが是非お読みください。

新潟県 見附市 お元気でクリニック  https://ogenkide-clinic.com/

月崎 先生は平成20年新潟県見附市で『お元気でクリニック」を開業し、心療内科, 漢方内科, 脳神経外科, 老年内科を標榜しています。多くのメンタルの患者さんも受診していますが精神科医ではないのですね。

関原 はい。僕は脳外科医です。脳外科医は手術が多い仕事で、ミクロの世界で顕微鏡を見ながら手術をしてきました。10時間以上連続する手術などもあり、飲まず食わずトイレも行かずに手術を続けることもある。脳の中で1ミリ2ミリの手元が少し狂うだけで患者さんに後遺症を与えることすらあるという世界で仕事をしてきました。

月崎 細かくてシビアな医療ですね。

関原
 はい。しかしそれを少し違う視点でみると脳外科医の時の僕は、脳の微細な部分に集中していたが、患者さん自身を診てはいなかったかもしれないという思いがあります。僕は外科医のときから漢方に興味がありました。漢方というのは陰陽とかいろんなバランスを取りながら行う治療です。病名にこだわらず症状を見て、脈やお腹に触れて治療方法を決めていく。中国四千年の歴史のあった治療法が日本に入ってきて日本漢方ができた。つまり漢方の思想は「要するに良くなるためにはどうすれすればいいのか」といういうことが中心にあるのです。

月崎 そういった思いで開業されたわけですね。

関原 脳外科は手術とリハビリを終えたら自分の役割が終わる感じがありますが、僕は一人の人間にずっと関わるような全人的っていうか、そういう治療がしたいと思って開業しました。開業の準備として、人の心を診るための治療の仕方などを学ぶために学会や勉強会やセミナーに参加し、かなり勉強しました。これは精神科医になろうとしたわけではないんです。患者さんに、心と体について相談されたときに、自分が何らかのことをしてあげられるっていう治療がしたいと思いました。今もこの姿勢には変わりはありません。よく「変わってますね」なんて言われるんですけどそういう医者です。

月崎 異色の先生ですね。現在も脳神経外科もやってらっしゃるんですか?

関原
 はい。クリニックでは主に頭を怪我した人の診察ですね。また急な頭痛を訴えてくる方、いわゆるくも膜下出血などを診断して総合病院に送ります。内科医って脳のことわからないから、微細な変化っていうのに気がつかないことが多い。僕はそういうのを発見して専門医へ送ることをしています。

目にあまる精神科医の多剤処方の深刻さ

月崎 今回は向精神薬の減・断薬についてお話を伺いたいと思います。先生は精神科医の経験はなく、向精神薬の多剤処方のようなことをした経験もないのですね。

関原
 はい。ないです。しかし「精神科医になんか言う度に薬が増えて、自分は減らしたいと思ってる」と向精神薬のことで相談に来る人が数年前から増えています。そういう患者さんのお薬手帳を見せてもらうと、10種類以上なんてざらで、似たような薬ばっかりが処方されている。患者さんに病名を尋ねても医師から説明を受けていないというように、診断も薬の処方の組み合わせもいい加減なケースがたくさんあり、「本当に専門医か?」と思うようなことも度々あります。

月崎
 向精神薬の多剤処方で苦しんでいる患者さんが増えているということですね。
関原 薬を減らしたいとか、必要最小限の薬にしたいとか、あるいは「自分はもう何ともないと思うから薬をやめたい」というような患者さんも来るんです。
月崎 そうなんですね。
関原 転院してきた患者さんの初診でも、統合失調症かなと思われる初見があったり、紹介状に診断名があった場合でも、特に背景にある生育歴をみるためにまず最初に生まれてから今までの経過を全部書いてもらうことにしています。それをみると8割くらいの方が、生育歴に何らかのトラウマを抱えているとわかります。
月崎 うわ8割・・・多いですね。でも私の取材の感覚でもかなり多くのひとに幼少期のトラウマが影響しているという感じはあります。
関原 このため患者さんがいくら統合失調症や双極性障害という診断名をつけられていても、「違うかもしれない」と感じた場合は薬を減らしてトラウマ治療へ持ってきますね。
月崎 初診の患者さんはどうでしょう?心療内科ですから例えば統合失調症的な幻覚妄想などのエピソードのある方も心療内科を受診すると思うのですが。
関原 幻覚妄想があるからといって、僕は即、統合失調症だとは考えないし、それですぐ精神科に紹介するというようなことはないですね。長くやってると、自分で何とかしてあげられそうだとか、自分には無理だなとか何かわかってくるんですよ。「この人はもう自分の手に負えない」って思ったら紹介しますが、「何とかなるかもしれない」と思ったら、病名は「とりあえず統合失調症だと思うけど」ぐらいにして、生育歴の話をして、「こんなつらい過去があったからだよね」といったような感じから始めます。だから薬は最初からあまり出さないんですよ。

月崎 発達障害という診断も増えていると思いますがいかがでしょうか?

関原
 そうですね。例えば発達性トラウマ障害ってありますね。有名な小児精神科医の杉山登志郎先生を参考にしています。杉山先生の処方は凄くて普通の10分の1、100分の1レベルの処方をするわけです。僕はそれを知ってから、真似してやっています。ごく少ない量ででも効きますね。効けば本人にとってのつらさが軽くなる、楽になったところで、トラウマ治療に持っていく感じです。

月崎
 先生は年齢関係なく特に初診の患者さんに対しては、できるだけ薬物は最低限っていうふうに考えてらっしゃるっていうことですね。

関口 ええ。初診でも僕は薬は量的にも種類的にもあまり出しません。また減薬を希望する患者さんに対しても僕は「薬がいらなくなるようにするのが医者の役目だ」と思ってるのです。

「どうなりたいのか」を患者さんに問うための問診票

月崎 どうしたら少ない薬でやっていけるのでしょう。

関原
 うちのクリニックでは問診票の中の質問に、「あなたはどうなりたいですか」と尋ねる項目があるんですよ。そこに「できるだけ薬を飲みたくないって」書いている人がいれば、じゃあ、薬出さない治療しますねって言います。そもそも薬を飲んでいなかったから病気になったわけではないのです。治療が、薬とよくわからない簡易精神療法だけという精神科医療の問題だと思います。治療法はいくらでもあります。最近では、ナラティブとかオープンダイアローグが注目されていますね。

月崎 では先生はすでに多剤処方で減薬を希望する患者さんに対し、具体的にはどのような治療をおこなうのですか?

関原 向精神薬の中の抗精神病薬(メジャートランキライザー)はまず整理しますね。同じ系統だったら、3種類だったら1種類にするとか。

月崎 その場合、どの薬を残すのかなどセオリーなどはあるのですか?

関原 セオリーをはっきり持ってはいません。抗精神病薬は似たり寄ったりなので、その症状にもよるけれど、強い弱いを見てだいたい1剤に整理することが多いです。抗精神病薬については1剤残せば、いきなりしてもだいたい問題ないです。しかしベンゾジアゼピン(以下ベンゾ)にはすごく注意します。非常に難しいですよ。薬が患者さんを振り回す。そういう人いますよね。似ていると思います。薬は、漢方と同じで、その人と合うか合わないかがすべて、その人と薬との関係ですね。

月崎 抗うつ薬の減薬についてはどうでしょうか?

関原 基本的にはベンゾ系と同じだと思いますが、気の使い方はそれほどでもないです。

月崎 では向精神病薬とベンゾを両方飲んでいる方の減薬の場合、抗精神病薬がまだ残っていれば、ベンゾを減らしたときの衝撃が比較的少ないという方もいる気がするんですけどこのあたりはどうでしょう?

関原 僕は、抗精神病薬はベンゾの代わりにならないと思う。結局、ギャバとかセロトニンとかドーパミンとかアドレナリンとかって神経伝達物質がどこに働くかによると思うので、ベンゾはギャバと関係しているが、抗精神病薬は基本的にはギャバは関係ないので、別物だと思いますけども。ベンゾの離脱を軽減する働きはあるようには思います。

月崎 別物だと考えてらっしゃるんですね。持続性の抗精神病薬注射剤を使う方でベンゾをやめて注射剤だけにして体調がよいという方にも何人かお会いしています。

関原 そうですか。僕は注射は使ったことがないので私論ですが。たぶん血中濃度が上がって、減り方がその人の代謝に依存して自然だからではないでしょうか?だから、ベンゾの離脱がわからないんじゃないですか。内服なら多分わかりますよね。人の意図がからむから。これはあくまで僕の考えですよ。

抗不安薬・睡眠薬ベンゾジアゼピン系の薬の減らし方

月崎 ベンゾの減薬方法に絞ってお話を伺います。先生はアシュトンマニュアルについてはどのようにお考えですか?アシュトンマニュアルは世界中の患者さんの間で読まれているベンゾの減薬方法ですが、時間をかけた減薬方法の具体例として、現在のベンゾを、ベンゾの中でも比較的離脱症状が少なく作用時間が長いとされるジアパムという薬に置きかえをするという減薬方法が推奨されています。

関原
 アシュトンマニュアルは、僕も何年か前に読んで、やってみようかと思ったのですが、最初にどのくらいずつ減らすのかを計画してその通りにするという点に面倒くささと機械的な感じがして違和感を感じました。半減期の長さでいうとメイラックス、もっと長いのはレスタスと言う薬ですけど。作用時間の長い薬が安全かというと全然安全じゃないと思います。

月崎 そうなのですね。私もベンゾ系薬の間の置き換えがあまりうまくいかないという患者んの話も聞いています。

関原 ジアゼパムは、多分離脱症状が少ない薬で、僕は別に置き換えではなくて使いますね。また僕の場合、減薬は患者さんにやってもらってるんです。

月崎 患者さん自身でということですか?

関原 はい。患者さんにいつどのような症状がでるのかは、患者さんにしかわからないです。それをマニュアルではこうなってるから今度こうしましょうって、機械的にいくものではないと思います。人によっては離脱症状が翌日に出る人もいれば、2、3週間後に出る人もいれば、いろいろですから。患者さんが0.05mg減らしてみるといえば僕が処方箋をそのように書くということです。

月崎 例えば0.05mgレベルを減らす具体的方法としては、薬を削るんですか。

関原 削る場合も、水溶液減薬もありますが、アバウトですよ。薬が水に均等に溶けてるわけないですよ。患者さんは溶けていると思って、水溶液を数ミリ捨ててと真剣にやっていますが。

月崎 水溶液による減薬の方が多いのですか?それでやり方ですがそんなにアバウトでいいんですか?

関原 水溶液減薬をしている方はそんなに多くはないですね。僕は患者さんに例えば次のように聞くわけです。「この前0.05mgを減らしましたが、どうでしたか?」と。それで患者さんが「大丈夫でしたって」という話になったとします。そうしたら僕は「今回もう1回0.05mgを減らしてみますか?」と尋ねる。それで「はいお願いします」っていう人もいれば、「ちょっと待ってください」っていう人もいれば、「今回は0.1mg減薬でもいいと思います」って答える人もいる。だから僕は、患者さんの意見に任せて処方量を決めます。そしてそれを薬局で正確に作ってもらいます。薬を粉にしてもらって、正確に指定したパーセンテージを減らして患者さんに出してもらうわけです。
月崎 なるほど。そのように協力してくれる薬局があるのですね。

関原 はい。薬局でも100分の1まで薬剤師は調整できるので、うちのいわゆる門前薬局の薬剤師にお願いして、実際に100分の1レベルでの減薬をやっています。

関原
 高齢者のベンゾ系の睡眠薬の減薬というのもありますね。高齢の患者さんに「睡眠薬をずっと飲んでいると呆けるよ」と言うと、びっくりしますよ。「削って減らしたら?」と患者さんに言うとやり方がわからないというので、「家にあるカッターで削ればいいじゃんって。自分の目分量でいいから、ほんのかけらでいいからそれでやってみて」とか言うこともあります。

特に精神科の薬の場合「気のせいで治る」は大切なこと

月崎 ええっ!!(◎_◎;)そんなにアバウトでいいのですか?私かなり長く取材していますが、そんなこと言うお医者さんって、とても少ないです。それに「例えば微量のベンゾの減薬でも身体に影響する」と患者さんが医師にいっても大体は患者さんの「気のせい」と医師にいわれるみたいです。
関原 僕はね、「気のせい」でいいと思ってるのです。薬って、実は4割ぐらい「気のせい」なんですよね

月崎 ええ!っそうなんですか」あ、「気のせい」って難しい言葉でいうとプラセボ効果ってことですかね。

関原
 どんな薬でも、特に向精神系の薬は「気のせい」の影響が強いと思います。
月崎 そうなんですか。

関原 だから「自分で削って」っていうことが大事なんです。カッターでも紙ヤスリでも何でもいいけど、自分が削る努力をしてるわけですよ。ほんの欠片にもならないカスみたいなものでも、「削る努力をしてること」を僕は褒めるんです。

月崎 褒める?!それはすごいですね。なるほど。一般にお医者さんは患者さんが「私は減薬が0.05mgがでもすごいきついです」と訴えたら「そういうこだわりの発言自体が症状なんだ」とかひどい言い方する先生も多いと聞きます。多くのお医者さんは、患者さんのいうその微妙な訴えを無視したがりますよね。

関原 無視する神経は、理論的にそんなの意味がないっていうことなのでしょう。僕は理論的なことが必要ないというつもりはないけれど、製薬会社のいう「薬は量を増やせば効く」みたいなの話をあまり信じていないんです。僕は漢方的な考え方をするので、その薬がその患者さんに合うか合わないかだけで、体質に合えば少しでも効くと思ってるのです。

月崎 なるほど合えば少しでも効くっていうのが漢方の考え方なのですか?知らなかった。

関原
 4分の1でもその人に合えば効く。だから漢方の場合、その薬が合うか合わないかは飲めばわかる。患者さんが、口に入れてまずいって言ったらもう合わないんですよ。よくあるでしょう漢方は「苦いからいや」だと。でもある人は「苦い」といい別の人は「おいしい」って言ったりするんです。合う、合わないは本人が知ってる。それと同じ考えで僕はやっています。

月崎 基本的に患者さんの感覚を大切にするっていうことですね。

関原 感覚を大切にして患者さんがこうしたいって言ったら、よっぽどじゃない限り、じゃあ、そうしてみましょうかねって同意しますね。

計画が無意味な理由は、ゴールは患者さんの中にあるから

月崎 では全体的な計画みたいなのを立てるっていうことも一緒にやるんですか。例えばベンゾを何剤か飲んでいて「睡眠薬を少しずつ減らしたいん」ですと言う人がいたときに、ゆっくり減らしていくとして、「1年くらいでかかりますね」みたいなことを言うことはあるんですか。

関原 見通しの期間はわからないわけです。僕の場合はNLPをやっていますので、まずこう話します「この薬がみんな無くなったとします。どんな生活したいですか、どんな自分になっていたいですか、あるいは本当にそれが出来たらどんなことができるでしょう」みたいな質問するんですよ。そうすると「ええっ?」と答えられない人が多いですよね。だけど逆に「薬飲みたくないから減薬して普通に仕事をしたいんです」とかね。そう「普通」って言い方が多いかな。あるいは「どこそこに旅行をしたいです」とかね、いわゆるアウトカムていうものですね。それを言える人はそれに向かって減らしましょうかって一緒に考えていきます。

月崎
 アウトカムつまり希望ですね

関原
 ええ。だから期間ではないんですよ。減らしたときに、何か症状が出たとしますよね。「このままだったらあなたが薬をやめたときにこうなりたいって言ってたけど、できそうですか?」て尋ねたら、「ちょっと今だと無理かもしれない」と患者さんがいう。それで僕が「薬の量戻しましょうか」と提案し、戻す。また1年たったころ減らしましょう、みたいな風に進めます。だから分かりもしないことは言わないです。

月崎 患者さんに委ねるというか患者さんの希望に向かっていくということなので、先生がゴールに旗を立てるとかっていうことではないんですね。

関原 そう。あくまで僕の場合は患者さんに教えてもらうって感じなんですよ。この前こうしたけど、どうでしたかみたいなね。

月崎 一般に医療にかかる時、自分がどうしたらよいかは、いつも先生が答えを持っていて教えてくれるとおりにすればいいと患者さんは思っている。

関原 最初はそう。それはそうかもしれないけれど。

月崎 減薬でうまくいった人は、ある時「先生は飲んでいない人」で「飲んでいる人は私」なんだから、「教えてあげるのは私の方」だって思うみたいです。そういった関係が医師と作れた人たちは結構良くなっていくなっていう感じがあります。立場が突如逆転するみたいな感じですが。

関原 例えば患者がある薬を飲んで不都合な症状が出た時「これ薬の副作用だと思うんでやめました」と患者さんが言ったとしますよね。医師は大抵、「そんな副作用あったかな?」と調べるわけですよ、しかし調べても、全然その副作用は添付文書にも記載されていないことがある。だけどね、僕は患者が「副作用が出た」と言ったら、「副作用だね」と認めちゃうんです。だってわからないから。僕がそれを副作用でないと否定する理由もないわけですから。

月崎 副作用新発見という共同作業ですね。

関原 それから医師の経験値の話になりますが、向精神薬を飲むという体験をしている医者はほとんどいない。しかし僕は栄養療法をやるので、点滴とかサプリメントを使うんです。そして栄養療法をやってる先生の共通点は、まず自分でやってみることなんですね。だから栄養療法の治療は僕自身がまず試してみている。僕自身が体験してることだから、患者さんにもその感覚も含めて説明しやすいわけです。しかし向精神薬の場合は脳に作用する薬ですからそういうわけにいかない。つまり僕は飲んだ経験がないからこそ、患者さんに教えてもらわなくてはならないのです。

月崎 なるほど。よく考えるとお医者さんっていうのは全般的にその自分が専門としている科の薬を飲んだことがない場合が多いわけですよね。どの先生も。

関原
 そうだと思いますよ。

月崎 例えば消化器内科の先生であっても、そんなに胃や腸の薬を飲んでるわけではない可能性が高いっていうことで、それより目の前に来た胃や腸に問題のある患者さんをたくさん診てるっていうだけであって、先生自身には実感がない場合が多い。つまり教科書や製薬会社からの情報で治療をしているということですね。

メンタルの不調を治すにはまず腸を整えることが大事

月崎 栄養療法の話が出たんですけれども、向精神薬の減薬と栄養療法っていうのは、どうやって併用しているのですか?

関原 腸が悪いと減薬はうまくいきません。最近、腸内環境とか腸活とか言われてますけど、腸内細菌が神経伝達物質を作るっていうのは、明らかになってきていて、神経伝達物質のGABAとかセロトニンも腸内細菌が作るんですよ。

月崎 腸内細菌が神経伝達物質を作るんですか。

関原 だって例えばビタミン剤ね、例えば有名なビタミンB群ってありますけど、ビタミンBも腸内細菌が作るんですよ。ビタミンCだけは人間は作れないんだけど、それ以外は人間が自分で作れるんですね。

月崎 じゃあ、腸内環境を整えることが、向精神薬を減らしていくことに直接役に立つということなんですね。

関原
 そうです。リーキーガット症候群というのがあって「腸漏れ」のことですね。腸管から漏れ出した細菌や、摂取した化学物質などが血液中に漏れ出し、それが脳関門を通り抜け、脳にも影響を与える。腸のバリアと脳のバリア。腸のバリアが壊れてる人は、脳のバリアも壊れてるって言われてます。

月崎
 そうなんですか。

関原 そう。余計なものが漏れ出して脳に影響を与える。それで鬱病になったり認知症になったりると言われてます。だから腸を整える。善玉菌、悪玉菌のバランスを整えたり、食事指導をするんです。それをしながらじゃないと減薬ってうまくいかないです。

月崎 そうすると先生のところにお薬を減らしたいというふうに言ってきた人たちに対しては、腸を整えるっていうアプローチを先にするっていう感じですか。

関原
 併用して考えますね。例えば便秘や下痢や、ガスが溜まるとかね、お腹の症状いろいろありますけど、そういう腸の不調がなくて、毎日快便であるということを前提にして減らすって感じですね。

月崎 では、ある患者さんに腸の具合を聞いてみて、ガスが溜まったり、しょっちゅう下痢や便秘をしてたりっていうことで腸の状態が安定してないという場合は、その方が向精神薬を減らしたいとか、メンタルの調子が悪いと訴えた時には、まず腸のことから考えましょうという治療をするんですか?

関原 まずというより、腸のことを一緒にかな。向精神薬を服薬すると大体便秘しますよね。だから、薬による便秘ってのは、除外しておいて、そうじゃないところで腸をよくしながら、減薬しましょうですよね。

精神科でも検査をすれば事前にわかることが色々ある

月崎 「腸を良くする」というのは具体的にはどんな方法があるんですか。

関原 まず検査がありますね。血液検査とか尿の検査とか髪の毛とかいろんな検査をしてみることが多いです。

月崎 そうなんですか。なぜ髪の毛なんて検査するんですか。

関原 重金属が、特に水銀とかが体内に入るとうつ病になったりしますからね。

月崎 水銀ですか?水俣病の原因の?大きい魚を食べたりして体内に水銀が溜まってるっていう感じですか、それとも予防接種の安定剤として入っているチメロサールという水銀が問題ということですか?

関原 チメロサールもあるけど、食べ物ではマグロとか大きな魚を妊婦さんは食べるなというのが常識になっていますよね。それから歯の治療で使っていたアマルガムという詰め物から水銀が溶け出している場合もある。

月﨑
 なるほど。歯の詰め物から水銀が・・・。

関原 でも、歯に昔、何十年か前に詰めた詰め物に水銀があるかないかを見つけられる歯医者が少ないんですよ。新潟県には1人しかいません。栄養療法の仲間の歯科医です。

月崎 そうなんですか。髪の毛を調べて水銀が検出されるかどうかがわかる。それから尿を調べると何がわかるんですか。

関原 尿を調べると体の例えばミトコンドリアってエネルギーを産生する回路とか解毒の回路とかあと神経伝達物質が作られてる回路とか、人間が自分を維持するためのいろんな回路が5つぐらいあるんですけど、それが上手く回ってるかがわかるんです。

月崎 尿検査って定期検診でもやる平凡な検査のような気がするんですけれど、実はそんなに多くのことがわかるんですか?その結果を読み解くための技術が先生にはあるっていうことですね。

関原 読み解き方があります。分子栄養学を学んでいる人はほとんど知ってると思います。いわゆる体の代謝産物が尿に出てくるので、排泄物の中に人間が自分の体を維持するためのいろんな仕組みがうまく回ってるかどうかを判断できるんですね。例えばこの回路はうまく回ってないからこの回路を回すためにはどうするかとかかね。便を調べることもあります。

月崎 血液検査も読み解き方があるわけですね。

関原 そうです。血液はもっと単純ですけど、普通の健診レベルの血液検査で栄養状態がわかったりしますね。

月崎
 フェリチン(貯蔵鉄)を調べるとか

関原 フェリチンは当然ですけど。それだけでなく血液検査で20項目以上いろいろな検査ができます。高額の検査はなかなか患者さんにはしにくいので、日本国内できる血液検査のいろんな項目を組み合わせて、トータルとして腸の状態はどうかとか、そういうのを調べています。

月崎 検査すればいろいろなことがわかるということですが、そういう細かな検査には保険がきかないですよね。どれぐらい費用がかかるんですか。

関原
 2万円ぐらいしますね。それでも、本来の検査の10分の一です。もちろん全員に検査をするわけではなく、保険の範囲でできる検査でも工夫すればいろいろ調べることはできます。

月崎 精神科では科学的な数値の出る検査はないと一般には言われていますが、身体を調べるという視点を持ち、2万円ぐらい自費でお金を払うつもりであれば、かなり侵襲性のない尿とか血液とかっていうデータから、メンタルに関係する腸の状態とか、それから体全体の代謝の問題とかはかなりわかるってことですね。そのことはまったく知らされていませんね。初診でいろいろなことがわかれば向精神薬に頼らない選択肢も見つかるかもしれないのに。
関原
 そうですね。あと精神科が検査をしないのはおかしくて。典型的なのは摂食障害という病気ですよね。あれはもう薬で治るわけがないのに薬漬けにしてみたり、かたや食べ吐きして体のバランスがおかしくなっているのに、精神と身体の両面からきちんとみる医者というのは少ないと思いますね。
月崎 なるほど。つまり、身体と精神面と両方診なきゃいけないんだけれども実はどっちも診ていないってことですよね。トラウマとか、成育歴と身体面で数値やデータで測れる科学的なものがあるのに、薬だけが処方されてるというところが問題なのかなっていう気がしますね。

関原 今思い出したのですが、精神科を受診している摂食障害の患者さん、眠剤だけで5、6種類処方されている人がいました。その人は、食べ吐きしてから大量の眠剤を飲んで寝るんですって。少し話を聞いてみると幼少期に虐待があり、いわゆる愛着障害がありました。摂食障害は愛着障害がベースですって定説で言われているので、僕が「愛着障害だと思う」と精神科医に紹介状をかいたのですが「適応障害ですね」と診断されたりするのです。

医師が治療をさぼり安易に患者を精神障害者にする

関原 きちんと診断できる精神科医が少ないと思います。最近、精神障害者手帳が欲しいから診断書を書いてほしいという患者さんが、ポツポツくるんですけど。みんな20、30ぐらいの若い人です。ほとんどほぼ全員トラウマによるメンタルの不調なんですね。それをトラウマ治療的な視点で診立てて治療したりしないから、治るわけがないんです。そして結局、障害者になって障害年金などで生活を維持する話になる。薬漬けもすごいけど、全然治療もしないで、平気で精神障害の診断書を書く精神科医も何なんだろうだって思いますね。

月崎 精神保健福祉法によって、医療と福祉が一元化していることが裏目にでていると私は思いますね。どんどん薬を出して障害者になって手帳を発行し、福祉に移行して、PSWもたくさんいるので精神保健福祉村の住人にされてしまう感じですね。

関原 結局は障害者扱いされていくわけですよ。それはメリットもデメリットもあると思うけど。でも患者さんはまだ20代ですからね。それも、私たちががんばって収めた税金が資金になっている。税金を払えるようになって自立した大人といえると思うのです。

月崎 そうですね、障害者差別をするつもりはないのですが、回復のチャンスのある若い人が社会で活躍するチャンスを奪われているようで残念に感じます。

関原 自立支援の制度もあるでしょう。自立支援は自立するための支援だと思うんだけど全然自立しないんですよ。あれをまた役所が進めて「先生に書いてもらえばいい」みたいな感じですね。仕事をするために必要だ。生活のために必要だというのなら仕方ないですが、医師の立場から言えば、特にトラウマを治療すればいいはずなのに、薬だけで何とかしようとするから、そういうことになるんだろうと思うんですけども。

トラウマの自己手当の方法を一緒に試行錯誤してみる

月崎 一説には、トラウマの心理療法は非常に難しいと言われていると思います。深刻な犯罪レベルの深いトラウマから、成長過程の環境でいろいろと傷つくことがあったという程度まで、トラウマにはいろいろなレベルがあると思います。先生はどのあたりのトラウマを治療の範囲として扱っているのでしょうか?

関原 そうですね。ほとんどのトラウマについてやってます。ただ本格的なトラウマ専門の臨床心理士が1時間を20~30セッションを数年がかりでやるというのとは違います。臨床心理士とは違い、僕の場合、医者だから薬を出せるので、ある程度薬で安定化させた状態をつくり、日常の診療の中でちょこちょこ患者の話を聞いていくわけです。

月崎 具体的にはどうやるのですか?

関原 リソースって言葉ありますよね。

月崎 リソース?

関原 リソースを発見するようなことをどんどんやっていくんです。そうすると勝手にトラウマとなっていた過去の出来事がどうでもよくなったりする人もいっぱいいますね。

月崎 どのような状態の方が対象ですか?

関原 例えば子供さんだと不登校。特にいじめのトラウマが深い場合。あるいは親に虐待されている。一番ひどいのは性的虐待とか。あるいは、赤ちゃん段階の時の無視・ネグレクトを受けた人。最近大人が多いのは最近はパワハラですよね。パワハラで非常に傷ついた体験して、仕事を辞めざるを得なくなり辞めた後もフラッシュバックで夜眠れないとかね。なんかそういう人が多いかなと思いますけど。

月崎 そのような患者さんが受診された時、最初は不安を和らげるための薬物療法みたいなのをしながら、先生がパワハラの話を聞いていくんですか?

関原
 いや、過去にこだわっていてもどうしようもないので漢方薬を処方するんですよね。漢方薬でフラッシュバックが減るので。

月崎 えっ!漢方薬でフラッシュバック減るんですか?

関原 もしそれであとは簡単なTFTっていう思考場療法っていう心理療法があって。つぼトントンと言うのをやるんですけど。それを覚えてもらうんですね。日本TFT協会というのがあってやり方はホームページにあります。
https://www.jatft.org/stress-caring.html

月崎 つぼトントン??これを患者さんが自分でやるんですか。

関原うん。セルフケアで。つらくなったら、それやってっていうと、それだけで良くなっちゃう人がいるんです。決められた順序で自分で体のつぼをトントンするだけなんですけどね。

月崎 フラッシュバック消す漢方は何って決まってるんですか。

関原 だいたい決まっています。神田橋條治先生っていう有名な精神科の先生が作った神田橋処方なんですけど。おおもとは江戸時代の相見先生っていう人が発明したてんかんに使われてたものです。
桂枝加芍薬湯と四物湯の組み合わせが基本で、個々の患者さんにより代えていきます。
組み合わせパターン患者さんのその体質体質とかとか、お腹の状況を見て決めていきますけど、だいたいはそれだけで。要するにフラッシュバック自体はかなり減りますね。

月崎 そうなんですか。なんかすごいですね、漢方とつぼトントンで減るんですね。

関原 神田橋先生の考え方はフラッシュバックはてんかんの一種だって感じなんです。抗てんかん薬じゃないけど、昔てんかんに使われた漢方が効くんだろうっていって始めた先生がいて。たしかにフラッシュバックって急に思い出して何か不安になったら恐怖を感じたりするものですね。

月崎 そうですね。私ちょっとフラッシュバックありますけどね。

関原 そうですか。てんかんには、フラッシュバックによく伴う恐怖感とかはないけど、急に起こるという意味では、非常にてんかんに似てますもんね。だから本当に効きますよ。

月崎 ちなみに私はですね、ちょっとフラッシュバックっぽいものが出たときは、一所懸命に甘いアイスクリームの味を舌の上に思い出そうと集中すると直るんです。

関原 それでもいいわけなんです。だから、本人が何か出たときに何かができるって、「こうすれば楽になるんだ」っていう手法を身に付けてもらうようにする。こうやると楽になるって方法をもっていれば、だんだん前の事はどうでもよくなる場合が多いわけです。

月崎 そうなんですね。「あれが出てきたら私はこうすればいいんだ」と思えれば。

ブリーフセラピーで自分の中のリソースを自覚してもらう

関原 自分を回復させる力が自分にあるんだって思えるじゃないですか。それから僕はブリーフセラピーというのをやっています。

月崎 ブリーフセラピー?

関原 ええ。これは短い時間で治す心理療法という意味で、症状とかの感じ方でもいいんですけど、点数化するんです。「1番最初ここに来られたときが、ある症状が10点で最悪完全に治った感じを0点だとします。今何点ぐらいですか」とかね。そうすると患者さんは「4か5かな」と言ったりしますよね。次の診察で「この前4か5かって言ってましたけど、最近どうですか」と尋ねる。患者さんが「そういえば3.5ぐらいかな」とか答えてくれたりします。それで僕は「0.5も良くなったんですかどうやって0.5よくなったんですか」とこれで患者さんはどんなことをしたのか答えてくれますよ。人は必ず変化していて、コミュニケーションしないわけにはいかないという原理がもとになっています。

月崎 すごいですね。魔法のようですね。

関原 よくなった理由がわかったから、「それいいですね。それ続けてください」とか言うんですけど。

月崎 うわ!結局質問力ですね。

関原 そうです。それも患者さん自身が出てきたものを使うから、こっちが「こうやりなさい」と指示してるわけじゃないので。つまり回復していく力は自分の中に全部あるっていうことに気づいていくわけです。

月崎 あ、それがリソースなんですね。

関原 ミルトン・エリクソンという心理療法の父親みたいな存在の精神科医がいます。彼は催眠療法の大家だったんですよ。エリクソンの根本は患者さんの中に全てがあって治療者は何も知らない。患者さんの中のリソースや患者さんができる事を使えばいいって。そうすると自ずと良くなるんだって。それで患者さんが何か尋ねたときのエリクソン先生の口癖は“I don't know”なんですよ。「私分かりません」。そればっかりだったんです。

月崎 そうですか、取材をしていて思うんですけど、医師ってI don't know.なんて言えない人ばっかりなんですよね。

患者さんの”イイトコサガシ”を手伝うことが治療

関原 「医師は全てを知って患者は何も知らない」と考えがちかもしれないけど、実はそういうヒエラルキーって逆でしょ。

月崎 はい考えてみれば逆ですね。でも医師も患者も双方ともずっと逆の勘違いで成り立っているかもしれません。お医者さんは「全てを解決してあげなきゃいけない」って思っていて、患者さんは「先生のいうことを全部聞かなきゃいけない」と信じている。最近気づいたんですけど多剤処方されている方は、主治医の前ではいつも困り事や不調を言い続けているみたいなんです。つまり治してもらうためには、何を困ってるか探してでも言わなきゃいけないって思ってる。で医師は何かしなきゃいけないと、どんどん薬を出す。関原先生のアプローチは全く反対で患者さんが少しでも良くなったこと探して先生が褒めてくれるわけですよね

関原 もちろん僕は本当に症状が悪くなった時には、「どうして悪くなったんだろうねって一緒に考えましょう」というスタンスです。しかし「あんまり変わりません」とか、「前と同じです」みたいなことを言ったときには「本当ですか?ちょっとでも良くなったことないの?」と聞くと、患者さんは「そういえば・・・」と何かよい話しをしてくれるんですよ。

月崎 そこなんですね。慢性疾患でずっと通院している多くの患者さんは、「変わりません」の時にも医師の前では、「何か調子悪さを探して訴えないといけない」と思い込んでいるかもしれませんね。

関原 そうなんですか、僕はそういうそういうことしたことないな。

月崎 患者さんが不調を医師に伝え、解決の手段としての薬を出してもらうという負のスパイラルが多剤処方を引き起こしているのでは?患者さんのリソースを発見して褒めて認めるという関原先生の治療と全く反対のスパイラルがあるみたいな気がします。

関原 例えば患者さんが「眠れないんです」っていったら「本当ですか?一睡もできないの」とかね。例えば「1ヶ月後きて28日間1日も眠れなかったんですか」って聞けば「いやそんなことはない」って必ず言うでしょ(笑)

月崎 そうですよね。質問の仕方によって答えの方向性はだいぶ変わりますね。コップの半分の水と同じように、ポジティブにもネガティブにもなる。その習慣の積み重ねによる医師と患者の関係性って案外大きいかもしれませんね。

関原 今、僕が問題だなと思うのは今の若い先生ですよ。何でもガイドライン。これで駄目ならこっちみたいな、もう何かチャート式みたいな感じでやるじゃないですか。

月崎 ガイドラインに忠実かとか、DSM=精神障害者の分類と診断の手引きというのに沿った診断方法ですよね。

関原 そうそう、あれも何かパズルみたいなものです。本来必要なのはコミュニケーションでしょ。患者さんとの関係性が大事なんです。うちのクリニックは特に精神科って出してないのに、来院する人は、前の精神科の先生がと「聞いてくれないんです」とか、何か合わなくなったって来る人多いんですよ。

痛みの治療につかうフォーカシングという治療

月崎 どんなことを訴えて受診する患者さんが多いですか?

関原 患者さんの訴えで一番多いのは痛みですね。頭痛とか腰痛とかっていう痛みが一番多いんですよね。

月崎
 痛みを消すには何かコツがあるんですか?

関原
 痛みの原因がわからないこともあるけれど、痛みの原因があればそれを注意してくださいねっていいますね

月崎
 やはり物理的なことより心の問題が多いんですか?

関原 精神的に何かストレスで痛いってのもあるけど、それについてこれは「ストレスの痛みですよ」って言ってあげると、「えっ」て気づくこともある。本人にはわかんないんですよね。ストレスあることに自分で気づいていないこともあるから。納得できただけで良くなる人もいますね。

関原
 それから痛くて困っていると言う場合にはフォーカシングという手法があります。フォーカシングというのは体の声を聞くということです。「痛い痛い」って言っていう時に「痛みはどこに感じるの?」と聞いたら、「体全体」とか「頭」というかもしれないけど。その痛みに注目してみてって、例えばそれに「いたみさん」て名前つけてもいいけど、「いたみさん」はなんて言ってるの?と自分の中でやりとりしてもらう。そうすると「いたみさん」は無理するなって言ってますと。そこで「今まで無理して頑張ってきたんだもんね」といったような声かけをしたりするんです。

月崎 当事者研究の「幻聴さん」みたいな感じですね。自分自身と対話するっていうことをフォーカシングっていうふうに呼ぶんですね。興味深いです。

関原 先日は70~80代のおじいさんで15年近く腰痛で悩んで整形外科を3、4件行って整体も何全然治らないって、痛み止めをいくら飲んでも全然変わらないっていう人が、友達から勧められて受診したんです。その人に筋膜リリースをやったんすよ。そうしたら、やった途端にびっくり、魔法がかかったみたいに痛みが消えたみたいでびっくりして帰ってきましたよ。

月崎 そんなこともするんですか?筋膜リリースって触ったりとかもするんですね。

関原 そうそう。まず触って分かるわけ。そのあとエコーを使うので、的確なんですよね。あれにはスタッフもびっくりして、おじいちゃんは感動して帰りましたよ。

医療クラークシステムで患者の物語を受け止める

月崎 ところで先生、いろいろな手法を駆使して広範囲に丁寧な治療をなさっている印象がありますが、患者さんのお話を丁寧に聞いていて診察時間が長くなりませんか?

関原 それはね、開業して10年になりますが最近ちょっと改めていて、「話長い人にゴメンネ。次の人もいるから、今日はこのぐらいでいいですか」みたいにするようになりました。要するに要点だけ聞くようになってきた。患者さんって来院するたびに何か問題持ってくるわけですよ。問題を聞き取ってそれを返すわけです。その際に「わかりました。そうしてみます」とか、「この薬を飲んでみます」とか、「これだけちょっと減らしてやってみます」とか、患者さんのモチベーションが上がった状態で診察を終えるようにしています。これで待ち時間はだいぶ短くなっています。前は昼休みなんか無くて一日中やっていたんだけど、最近昼休みを取れるようになりました。

月崎 どうやって診察の質をそのままで、時間を短縮できるようになったんですか。

関原 うちはね開業当初からクラークという立場の事務員を置いて、その人が僕と患者さんのやりとりをパソコンにうって記載していく方法をとっています。だから僕はパソコンは見ないで患者さんに向き合って真剣に話を聞くことに集中するんです。その過程で例えば長くなると、クラークがタイムキープしてサインくれるんですよ。それを合図に「今日はこれぐらいにしてこの次また続き聞かせてね」みたいな感じですね。

月崎 なるほど患者さんには先生が正面から向き合ってくれている感じが伝わるのでしょうね。しかも記録はきちんと作られているのもわかるから受け入れられているという安心感があるのでしょうね。

関原 スタッフは交代制とかパートの方もいれて僕、看護と事務で7、8人ぐらいです。待ち時間を減らす工夫はみんなで協議していろいろ工夫していますね。

ベンゾジアゼピンの一気断薬による後遺症の治療

月崎 話が前後してしまい申し訳無いのですが、向精神薬の一気断薬、急な減断薬による離脱症状のために本格的に体調を崩している人、特にベンゾ系の薬で作用時間の長いメイラックスや、リボトリールを一気にやめた方に多いように思うのですが、ひどい離脱症状で寝たきりになっちゃってるような人がいます。また後遺症がどんどんひどくなるというような方もいます。うちのグループに時々来て医療から見放されてしまっているような感じで大変過酷な状態だと感じるのですけど、どうしたらいいと思われますか。

関原 断薬した後ですか。

月崎 はい。断薬した後ですね。特に一気断薬の後遺症がひどいです。
関原 一気断薬してしまった後ですね。実は僕も知っている例があります。ある総合病院の耳鼻科医で、患者さんのほぼ全員にメイラックスを出す医者がいたんです。その人が定年で病院を退職したのです。その医者は退職時に総合病院に紹介状を出していて、受け持ちだった患者さんは開業医に紹介された。耳鼻科の開業医に受診したが、開業医の先生が処方をみると耳鳴りにメイラックスが出てる。「このメイラックスなんて意味がない」って、当然思うわけです。開業医は離脱症状のことなんてわからないから、メイラックスを一気に切ってしまった。しかしもう患者さんは体中が痛くて動けなくなってしまった。線維筋痛症みたいな雰囲気になっちゃってきています。

月崎 で、どうしましたか?

関原 僕の場合は栄養療法をやるので、CBDオイルってあるんですけど、オイルを使ったり、あとは何か点滴をやったんだけど、結局うまくいかなくて。その人はもう大学病院行くって言ったから、紹介状を書いたんですが多分どの医師が診ても同じでしょう。僕が断薬したわけでないのにどっかで断薬してしまった人も来るわけですね。どうしたらいいかという答えはないですが、あえて言うと抗鬱剤に替えちゃうかなとも思います。ベンゾを戻すと同じになっちゃうので。そのときの症状にもよりますけどね。

月崎 非常に恐ろしいことに、取材を続けていると一気断薬の離脱症状には打つ手がない感じなんですね。ひどい線維筋痛症みたいなのになったり、視覚異常っていうのもあるみたいなんですね。不思議の国のアリス症候群みたいな感じで物の大きさがなんかすごい小さくなったり大きくなったりして、比率がおかしくなったりとかいう多分脳神経に何か影響があるんだと思うんですけれども。何か異様な目の見え方とかテレビが見られないとか、不思議なことが、メイラックスの一気断薬で苦しんでいる方を数名知っています。その人たちは身体表現性障害っていう病名をつけられて眼科でも整形外科でも内科でも精神科で診てもらえずて苦しんでる方がいらっしゃる😢

関原 僕はやったことはないけど、やるんだったら催眠療法かな。あるいは上半身だったら首のところにレーザー当てる。結局、離脱症状って自律神経の嵐なんですよね単純に言うと。それを鎮めることを考えると思いますけど。
月崎 自律神経の嵐 ですか・・・

いい先生を探すより自己手当方法を身につけるほうがよい

月崎 一気断薬の後遺症の問題で診てくれる医師が見つからないのは特殊な例だからかもしれませんが、実際、全国的に信頼できる精神科の先生がいないと感じます。向精神薬が多すぎるし、治療がうまくいかないってことで苦しんでいる患者さんがたくさんいます。また理解して工夫してくれる先生も少なく、先生を探すっていうこと自体が結構難しいですよね。

関原 でもね、結局言い方を変えると、「先生を変える」ということは、「別な薬が欲しい」って言ってるように聞こえるんですよ。

月崎 なるほど、そうかもしれません。多剤処方されていて精神科の先生との相性がうまくいっていなくて、転院して別の医師から薬を全部変えられたりする人も多いようです。診断名が新しくついたり、薬を変えましょうと言われて、結局は今までの薬を断薬して別の多剤処方みたいなことをされる可能性も高い。だから私は転院も案外リスキーだなと思うのですが。とにかく患者さんはみな「良い先生」を常に求めています。

関原 結局、患者と医者という関係ではあるけど、究極的には人と人との関係なんですよ。それでやはり治療には関係性が大事です。医師でも臨床心理士でも治療者の態度が「治してやってる」みたいな態度だとあんまり上手くいかないと言われています。その関係性を上手に使ったのが先ほどお話しした心理療法士のエリクソンです。エリクソンは基本的に一切薬を使わない。重症な人を1回でそれも3時間ぐらいかけて治療するというようなこともあったようです。

月崎 そうなんですね。患者側はこの状況をいったいどうしたらいいのでしょう?

関原 それはあくまで薬に頼ってるから、薬の悩みが出るわけだと思いますね。かと言って心理療法をできる人はそう多くはない。いわゆる臨床心理士と言う人は基本的には検査する人なので、治療はしない人も多い。

月崎 ええっ(・・;)じゃあ、治療する人って世の中にいないじゃないですか。

関原 治療する臨床心理士もいるけど、それはもうトラウマを得意としてる人もいるにはいますけどね。

月崎 でも臨床心理士が関わっている人なんてすごく少ないですよ。しかも薬のことがわかる人なんてなかなかいない。精神科医は薬だけだし。

関原 薬は保険がきくでしょ。心理療法は保険効かない。お金がかかる。精神的に病んでる人は、あんまりお金がない人が多いと思うので。心理療法的な治療があったとしても経済的理由で受けられない。

月崎
 そうですよね。そうするとツボトントンとかフォーカシングというような自己手当みたいなものとか、それから私達患者会としてやってますけど、WRAPとか当事者同士がアイディアを出し合って、他の仲間はどういうふうにしているのかっていう情報の分かち合いとかも有効かもしれませんね。

関原 詳しくは知りませんがオープンダイアログも流行っていますよね。ああいういろんな人が関わりあって薬ではなくて、ただ皆で話し合う場みたいな。薬に頼らないやり方とかもいいと思います。また手法ではさっき言ったTFTつぼトントンが効果的ですよね。セルフケアに使えるように覚えてもらえばいいと思います。例えばアフリカの飢餓などで悲惨な状態の国でこの国際支援のTFTの団体が行って、ツボトントン教えて帰ってきたそうです。学校の先生が子供たちにみんなでやろうっつって、みんな楽になったという話ですよ。
月崎 なんだかよさそうですね。私もちょっと試してみました。精神科医の先生を探してドクターショッピングするより、こういう自己手当のような方法をいっぱい見つける方がむしろよさそうですね。

関原 僕はそっちの方がいいと思います。いい先生を見つけるって大変だと思いますよ。そして僕は医者はもっと患者さんから学んだ方がいいと思います。教科書ではなくてね、むしろ患者さんが教科書だと思うので。教科書は基本知識としてあってもいいけど、患者さんは、一人ひとりみんな違うし、統合失調症とかうつ病とか病名が同じでもその人も違えば背景、家族か背景とか生育歴とかみんな違うわけだから、1人ひとりの患者さんが大事な教科書だと思いますけどね。

月崎 なるほど、心強い言葉です。ありがとうございました。
                  (2021.9.5 インタビュー・月崎時央)

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