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老いらくの恋 第13話

奥西博子さんに恋しています。

点字の翻訳

ご本人の承諾を得ていますので実名をだしました。
奥西さんは現在93歳10か月。残念ながら足を悪くされ、介護施設に入居されています。
終戦時は大連におられ、女学校を出られたあと、引き上げられました。
多分、引き上げに際しては、相当なご苦労をされたものと思います。
奥西さんは、約27年間、PCを使って点訳活動をされていました。
同時に、朗読ボランティア活動をされていました。
昨年、箕面市長から表彰を受けられています。
皆さん、どうですか? 90歳を超えて、新しい技術に挑戦し、社会活動を続ける、自信はおありでしょうか?
現在は体調もあり、活動はされていません。しかし、頭脳は明晰です。
時々施設を訪問し、お土産を置いてきます。
漢字のクロスワードパズルです。難しいですよ。漢字の知識も必要です。

私、土岐も点訳グループに参加して、かれこれ17年になります。
点訳対象は、新聞掲載のコラムが中心です。
例えば、朝日新聞の天声人語、毎日新聞の余禄、東京新聞の「週の初めに考える」など。
これが、老人が世の中の話題に取り残されないために一役買っています。

PC利用の点訳作業を紹介しましょう。
いきなり点訳ソフト(Tエディター)に、点字のルールに従って入力する方法がありますが、Wordなど別のソフトで入力したテキスト文(点訳ルールは一切気にしない)を別のソフトにインプットし、点訳する。この方法は大変便利ですが、同音異義語や、人名、地名など正しく点訳できません。
そこで、仮点訳された文を前述のTエディターを介して、人手で修正する流れになります。私たちの活動は、そうやって出来た点字データを、事前に登録された、全国の視覚障害者に無償配信しています。
使っているソフトはフリーソフトで無料ダウンロードしていますが、ちょっと困った事があります。Windowsがバージョンアップされると、使用できない事があります。
私はやむを得ず、Windows10 と Windows7 の2台のPCを使っています。

世の中奇特な方が居られます。上記のTエディターは個人で開発され、フリーソフトとして公開されています。TエディターのHPによると、開発者は2023年に後期高齢者の仲間入りとなり、ソフトの改良は終了したいとの事です。ご苦労様でした。

点訳対象は新聞のコラムがメインと先述しましたが、個人的に興味を持ったものを、著者の了解を得て点訳することもあります。
点訳ボランティアは圧倒的に女性が多い。彼女たちが取り扱わない本を、時々点訳しています。いくつか紹介します。

第1は原発関連図書

子どもたちに伝えたい 原発が許されない理由

今本は、2011年9月初版〔東日本大震災のあった年です〕
京都大学原子炉実験所所助教 小出裕章 著
子供向けに書かれた本ですが、小学生にも理解できる平易な説明で、入門書としては適当です。
しかし実際は、小学生に理解されるにはいささかテーマが難しい。
原子炉の図や、グラフ、数表なども豊富で、点訳でどう表現するか苦労しました。

Mark-I型 格納容器
例えばこんな簡単な図でも、点字で表現するのは至難の業です。

ロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー危機、脱炭素への圧力からでしょうか、日本政府は原発回帰を決めました(政府であって日本ではない)。
私はこれは間違っていると思います。
詳細は省きますが、原発には大きな問題が二つあります。

一つ目は使用済み燃料の処理です。半世紀以上かけて研究しても技術的解決のめどは立っていません。今後も技術的解決策は出ないでしょう。

青森県六ヶ所村で使用済み核燃料の処理工場の建設を進めていますが、完成時期は遅れて2024年度上期に延期されました。完成時期の延期はこれまで26回に及んでいます。〔資源エネルギー庁資料〕
従って2024年も怪しいものです。

高速増殖炉「もんじゅ」について、触れておきます。

高速増殖炉は、原発で使い終えた燃料をもう一度使う事で、資源を有効利用する 〜略〜 核燃料サイクルの中核として「もんじゅ」は位置づけられている

(資源エネルギー庁資料)

では「もんじゅ」はどうなったか。

原子力開発利用長期計画、年度

上の図は、本書「原発が許されない理由」の中で示されたものです。
簡単に言うと、当初計画では1980年台前半に実用化できる予定でした。しかし、出来ません。10年おきに計画を見直したが、そのつど実用化時期は20年ほどずれています。
その結果どうなったか。2016年の原子力関係閣僚会議で廃止が決定されました。
このように、原発関係には、ずるずると先延ばす癖があるようです。
「もんじゅ」の廃炉は30年が計画されているが、これも怪しいものです。

東海原子力発電所の廃炉の状況
1966年7月に営業運転開始、1998年3月31日営業停止。
廃炉作業の完了時期を当初2025年を5年延期を決めた(日本原子力発電株式会社資料より)。ここでも簡単に延期されています。予定通りいっても32年間かける計画です。
東海原発は出力16.6万kwで小型です。
福島大原発は1号機から4号機合計で281.2万kwで約17倍です。
しかも東海原発は事故を起こしていないまともな状態です。
小規模でかつ正常終了した原発ですら、32年かかる予定(これも多分ずるずる延びるでしょう)。「もんじゅ」の廃炉の30年計画はいかに甘いか分かりますね。

二つ目は、原発は電力受給の変化に弱いのです。
需要にあわせて発電量を調整する事が出来ない。需要の波に合わせて、別の電源〔例えば火力〕が必要なのです。

原発はCO2を発生しないが、大量の熱水を出します。
温暖化対策は、CO2排出抑制だけが問題ではありません。熱を出さない事です。
最も有効なのは、省エネです。
現在日本でとられている政策は、経済効果だけが指標になっている。
地球の事を考えるなら、その政策はどれほどエネルギーを使うのかという指標で判断してはどうでしょうか。
例えばリニア新幹線。大量の電気を使用します。原発の1基や2基では足らないのではないか。こんな論議を聞いたことがありません。
例えば関西万博とIR事業。ラスベガスのようなIRを展開するには、これも電力が要ります。
次に地球温暖化防止に効果があるのは再エネです。現在技術意的にも確立している方法は、太陽光発電、風力発電、小規模水力発電です。なぜ、日本政府はこの分野に資源を投下しないのでしょう。

次回 第14話は、もっと硬い話しになります。 

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