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#赤羽ひみつ倶楽部

prologue

 物語はいつだって人によって生み出される。
 それが創作つくりものであれ、実在した誰かの体験げんじつであれ。


 人が語り、伝え、また他の誰かへ繋がれていく。生まれ、継がれ、繰り返されていくもの。
 僕が出逢ったのも、そんな世の中にありふれた、でもかけがえのない一つの「物語」だった。

 これは、僕が彼女と過ごした時間。
 長いようで短かい、あの部室ばしょでの、一年間の物語。

 「人はね、何にだって、誰にだってなれるんだよ」

 あの薄暗い部室で、机越しに彼女が僕に向けて語ったあの声が、表情が、今なお色褪せず脳裏に焼き付いている。

 彼女にとって、僕がそこにいたことは大して重要ではなかったのかもしれない。子供がおままごとで語りかける人形程度の存在だったかもしれない。

 それでも、僕は見ていた。
 誰かに語られる物語になりたいと願いながら、誰よりも人間らしく生きていたその姿を。
 誰よりも近い、その隣で。

 だから、これは僕が書かなければいけない、誰かに伝えなければいけないもの。記録であり、伝承であり、大切な思い出だ。

 僕が見てきた彼女の物語を、今はもういない彼女を知らない全ての人へ、僕だけが知っている彼女のために、ここに記す。


prologue end.

>next case: 01. 『都市伝説』に出逢った日


うしろのまえがき

#赤羽ひみつ倶楽部  の創作ネタ?に非常に興味を惹かれたので、前から書いてみたかった怪談モノとして短い話を連載形式で試してみようかと。

不定期かつ遅筆ですが、各話完成次第更新予定。

※2023年5月に大浦るかこさんのアーカイブ非公開にあわせて、発端となった動画も視聴不可に

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