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その他の幻想

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唐突に思いついたらなんか書くかもしれない。
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2021年10月の記事一覧

妖怪諜報部

妖怪諜報部

河童族の最後の末裔である僕は、山中より転び出るや、濡れそぼったアスファルトに無様に倒れ伏し、腹這いの姿勢で、しばらく動かずにいた。

雨上がりの曇天の下、湿った風が吹き抜けるたび、竹林がさわさわと揺れる。
顔のすぐ横の側溝を、水がちろちろと小気味良い音を立てて流れている。

それは、あの薄暗くて心地良い鍾乳洞——『河童の隠れ里』を出立し、三日にわたる行軍の末、ようやく人里に辿り着いた朝の事であった

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