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花の婚礼

それが何年前の出来事だったか、今となっては定かではない。

僕と友人は長い休暇を利用し、遥か異国の街へと観光に来ていた。

華麗な建造物の合間を縫うように、強い日差しを照り返す石畳の坂道が、上へ下へと曲がりくねりながら、どこまでも続いている。

2頭の驢馬が、大きな果物籠のような荷台を背に乗せ、急な坂道をゆっくりと進む。
それぞれの荷台で揺られているのは、僕と友人、そして観光客一人ずつについているガイドの少女たちだ。
荷台の上から指さしては、色鮮やかな建物の成り立ちを事細かに説明してくれる。
僕は感心しながら聞いていた。

灼熱の空気を微風が揺らし、心地よく肌を撫でる。

正午の光が深いコントラストを生み出す。
鍔広の麦藁帽子が小麦色の肌に落とす影。
微笑む少女のえくぼ。

ゆったりとした時間の流れの中、4人の長い長い、旅が始まった。


ここはメキシコ。

一年中花が咲き乱れ、果実がたわわに実る、豊穣の地。
唄に歌われた楽園だ。


【続く】


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