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トキワレポート(コラム)

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メンタルヘルスにまつわるあれこれや、家族・子育て、コミュニケーションについて、弊社の経験をもとにつづるコラムです。有料noteでは、より踏み込んだノウハウについてお伝えします。
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#長期ひきこもり

母と息子の"恋人のような"関係

先日、グループホームに入所しているB君の面会に行きました。B君には学習障害があり、いわゆる一般的な人とは、会話も生活もペースが異なります。最近、親元を離れて、自立訓練のためにグループホームでの生活が始まりました。 30分ほどおしゃべりして最近の様子などを伺い、帰り際に「何か必要なものはありますか?」とお尋ねしました。11月も末になりだいぶ肌寒くなってきたので、冬服など足りないものがないか、確認したのです。 ところがB君から返ってきた“必要なもの”の返答は、まさかの「お見合

♯029 家族こそ、精神科病院を上手に利用できるようになる必要がある

弊社に寄せられる最近の家族の問題は、ほとんどが複合的です。多くは精神疾患に起因していますが、それだけでなく、パーソナリティの問題や親子関係、生育歴、それまでに出会った人との関係など、さまざまな事柄が絡み合っています。 精神科に通っているのに「よくならない」 すでに精神科を利用しているケースも増えていますが、肝心の本人が受療中断してしまったり、不定期にしか通院しなかったりすると、家族も含め健全な生活ができず家庭内がすさんでいきます。 親は「病院(クリニック)がちゃんと治療し

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♯028 本人との同居が限界。グループホームの入所を検討しているが…

精神疾患をもつ本人との同居について、「家族ではもう支えきれない」と、限界を感じている家族もいらっしゃると思います。 実際のところ、本人から家族への暴言や暴力、金銭の無心などがあるケースでは、親子関係が病気を悪化させる一因となっている場合も多く、【親子が物理的・心理的に距離をおいたほうがいい】と思うこともしばしばです。 そこまで親子関係がこじれたときには、「話し合って今後のことを決める」ことはなかなか難しく、本人と物理的・心理的に距離をおくために、実態に即した覚悟・決断・行

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♯027 子供の問題に、「祖父母」を巻き込む際の注意点

6月2日、東京都江東区で29歳の孫が祖父の首を刺すという殺人未遂事件がありました。 70代男性刺される 孫か「人を殺した」 東京・江東 2日午後7時35分ごろ、東京都江東区北砂の民家で、「家の前に『人を殺した』と話している血だらけの男がいる」と住人から110番通報があった。警察官が駆けつけたところ、家の前に右手から血を流した20代の男が立っており、警察官と救急隊を200メートルほど離れた共同住宅2階の一室に案内。室内からは、首や背中などを刃物で刺された70代男性が見つかった

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♯026 きょうだいの問題を放置した結果、起こること

きょうだいの問題を放置した結果、本人も親も高齢化してしまい、切羽つまった他の子供たちからの相談が増えています。 このnoteでは、以下に当てはまる方に向けて、この先、現実的に起こりうることを述べてみたいと思います。 ・きょうだいに精神疾患の疑い(「長期ひきこもり」含む)があるが、精神科未受診である。 ・きょうだいが精神疾患だが(受診歴あり)、長く受療中断している。 つまり、本人(きょうだい)は、本来であれば、適切な治療や支援が必要でありながら、なんら対応がとれていないケ

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「病気」を除いたところで子供のことを見なおしてみる

精神疾患は、病識(自分が病気であるという認識)をもちにくい病気と言われています。とくに重篤なケースにおいては、「病態失認(anosognosia)」と呼ばれる症状があり、これはアルツハイマーや脳卒中でも見られるように、脳の特定箇所が解剖学的ダメージを受けたときに起こることだと指摘する神経学者もいます。 幻覚や妄想の付随する精神疾患(統合失調症など)をもつ方は、この傾向が強いのではないかと思います。また、アルコール依存や薬物依存のように、依存症であることを認めたがらないことも

第三者の介入時期を見極める

精神疾患の特徴として、身体疾患とは異なり、本人が病識をもちにくいという点が挙げられます。となると、家族や周囲にいる方々が早めに変化に気づき、治療につなげられるかが重要であることは間違いありません。 厚労省によると、日本の精神疾患患者数は392万人にのぼるそうです。生涯を通じて5人に一人が「心の病気」になるとも言われていますが、いざ自分や家族のこととなると、「精神科医療」に敷居の高さを感じることも事実です。 幻覚や妄想といった明らかな症状を除いては、「何かおかしいな?」と思

「まだ大丈夫」…本当に大丈夫でしょうか?

弊社に相談に来られた親御さんがよくおっしゃるのが、「トキワさんのことは、何年も前から知っていました」「押川さんの著書(テレビ)は、何年も前に読みました」ということです。親御さんは、このように続けます。 「でも当時は、そこまでひどい状態だと思っていなかったので……」「トキワさんが扱っている事例に比べたら、それほどでもないと思ったので……」親御さんやご家族に何か策があったり、相談している専門家がいたりして、その結果、「まだトキワに頼むほどではない」と考えているのなら、よいのです