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トキワレポート(コラム)

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メンタルヘルスにまつわるあれこれや、家族・子育て、コミュニケーションについて、弊社の経験をもとにつづるコラムです。有料noteでは、より踏み込んだノウハウについてお伝えします。
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#きょうだい精神疾患

介護と障害のダブルケア

「実家に精神疾患(あるいはその疑い)のある当事者と高齢の親が同居しており、相談者であるきょうだいは自立している」という家族構成からの相談は年々、増加しており、今後も増えていくことが予測されます。 とくに、相談者(きょうだい)がさまざまな問題に直面するのが、親に介護が必要になったときです。 当事者が医療や福祉の支援につながっており、大きな問題なく日常生活が送れていたとしても、同居する親に介護が必要になれば、生活のバランスは崩れることになります。これまで当事者の生活を親が支え

♯026 きょうだいの問題を放置した結果、起こること

きょうだいの問題を放置した結果、本人も親も高齢化してしまい、切羽つまった他の子供たちからの相談が増えています。 このnoteでは、以下に当てはまる方に向けて、この先、現実的に起こりうることを述べてみたいと思います。 ・きょうだいに精神疾患の疑い(「長期ひきこもり」含む)があるが、精神科未受診である。 ・きょうだいが精神疾患だが(受診歴あり)、長く受療中断している。 つまり、本人(きょうだい)は、本来であれば、適切な治療や支援が必要でありながら、なんら対応がとれていないケ

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患者さんの「よい」と周りの「よい」

「本人の意思」こそが最大限に尊重されるメンタルヘルスの分野では、患者さんのいう「(状態が)よい」と、周りが思う「よい」に大きな乖離が生じることがあります。 (漫画『「子供を殺してください」という親たち』2巻より) 弊社では、精神科病院を退院し、グループホーム等に入所した患者さんのサポートも行っていますが、定期的に通院治療や訪問看護を受けていても、調子を崩すことはあります。とくに、本人と人間関係のある施設職員が退職や異動でいなくなったり、新しい入居者が入所するなど環境が変わ

♯024 重大な問題を抱える家族ほど、頼れる先は「行政」しかない

精神疾患に起因する家族の問題を放置した結果、年を追うごとに問題が肥大化し、「どこに相談しても解決しない」「どこから手をつければよいかも分からない」と相談に来られる方が増えています。 そう嘆く家族ほど、「民間企業に丸投げして何とかしてもらいたい」と考えるものですが、経済的余裕がないことも多く、現状では「行政機関を頼るしかない」という場合がほとんどです。 そのようにアドバイスをすると、必ず「行政は動いてくれない」「○○してくれなかった」「あてにならない」などと不満が出てきます

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親と子供の共通項

精神疾患の有無にかかわらず、子供がなんらかの問題を抱えるときには、家族関係もこじれている場合が多いように思います。このとき親が陥ってしまいがちなのは、親自身の人生の歩みや人間性と、いま起きている子供の問題を別々に捉えてしまうことです。 もちろん親も過去を振り返り、「自分の子育てが間違っていたのかも」「もっとこうしておけば良かった」という思いは持っています。しかし親へのヒアリング(聞き取り)を行っていくと、子供の抱える問題が根深いほど、それを評する親の口調は厳しく、ときに他人

♯021 家族(子供やきょうだい)が違法薬物に手を出しているかもしれない!?

「家族(子供やきょうだい)が、違法薬物に手を出しているかもしれない。どうしたらいいか」という相談を受けることがあります。警察に捕まるなどして、所持や使用が明らかにされている場合を除き、家族は「半信半疑」の心境で相談に来られることが多いです。 薬物乱用の幻覚妄想と、統合失調症の症状は似ている違法薬物の乱用によって、幻覚や妄想が引き起こされることがありますが、これらは「統合失調症」の症状によく似ています。家族はもちろんのこと、本人に関する情報がないと、精神科医であっても誤診

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精神疾患と家族(きょうだいの関係)

押川の著書「子供の死を祈る親たち」でも引用していますが、社会福祉法人横浜博萌会 子どもの虹情報研修センターによる「「親子心中」に関する研究(2)」では、後半の講義録に、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の松本俊彦医師が登場し、自殺対策について述べています。その中に、以下のような記述があります。  三十代くらいの比較的若年者の自殺を見ると、「親が精神障害」「兄弟が精神障害」という人が目立ちました。実際に私が面接を担当した事例では、兄弟が精神障害で、親の関心がそっちば