♯023 妻の精神疾患に気づくためのポイント

配偶者(夫もしくは妻)に精神疾患の疑いがあり、医療につなげたい場合の心得については、テキスト♯022で述べました。そちらにも記述しましたとおり、弊社への相談では、「夫」の精神疾患については、アルコール依存や薬物依存、双極性障害である場合が多く、第三者が見ても明らかに「精神疾患」と分かるほど病状が進んでいます。

一方で「妻」の精神疾患については、受診時に妄想性障害や(遅発性)統合失調症と診断されることが多く見受けられます。妄想の内容も身近なこと(夫の浮気や、近所付き合いに関する被害妄想)になりがちで、周囲が病気に気づきにくいという特徴があります。

とくに、核家族(夫・妻・子供)の構成で、「子供が未就学児童」「妻が就労をしておらず、他者との交流も少ない」という家庭環境ですと、妻の病気に気づけるのは夫だけ、ということになります。しかし夫も会社勤めをしていると、忙しさにかまけて妻の発症を見過ごしてしまい、未治療のまま長期間を経てしまうことがあります。

弊社に相談に来られた「夫」の方々も、「何かおかしいとは思っていたが、精神疾患とは思わなかった」とお話しされます。夫が陥りがちな思考としては、妻の変化を、「機嫌が悪いのだろう」「疲れているのだろう」などと捉えてしまうことです。たとえば、妻が頻繁に被害妄想を訴えても「よくあることだし、気にしなければよい」と流してしまっています。

とくに女性の妄想性障害や(遅発性)統合失調症では、炊事や洗濯、掃除など身の回りのことは変わらずにこなせていることが多く、発症に気づきにくいです。

実際、夫や妻の両親にヒアリングをしながら過去を振り返ってもらうと、出産したあたりから本人に異変が起きていることが分かり、あくまでも推測にはなりますが、産後うつや育児ストレスがあったのではないか? と思えることも多いです。その当時に積極的な介入があれば、予後はだいぶ異なるはずですが、たいていは見逃してしまっています。

妄想性障害となると妄想の内容も現実に関連することが多く、周囲が気づかないうちに、じわじわと病状が悪化していきます。夫が弊社に相談に来られたときには、発症から5年、10年と経過しており、こうなると医療につなげることも難しく、また、医療につなげたとしても劇的な快復がみられにくくなります。攻撃対象が「夫」となるとなおのこと、「離婚」という話になることも少なくありません。

精神疾患を患った方の被害妄想に関しては、たとえ荒唐無稽なものであったとしても、頭ごなしの否定は病状を悪化させると言われています。とはいえ、医療につなげられないまま、相手の被害妄想を肯定したり、軽く受け流したりという行為を続けることは、妄想の固定化につながります。

過去の相談では、妻から「食事に毒を盛っているだろう」「娘に虐待をしただろう」などと言い募られた夫が対応に困り、事実ではないことも肯定し、謝罪を繰り返していた例がありました。結果として、妻の妄想は完全に固定化してしまい、夫婦仲は最悪の状態に陥り、子供も家を出て寄りつかないなど、家族崩壊に至っていました。

本人が「何か悩んだり困ったりしている」ことは事実ですので、その点には理解を示しつつ、早めに医療機関に相談されるべきです。

ここでは、夫の立場として、妻の病気を早期に発見できるよう、特徴といえるポイントを挙げたいと思います。

★発症を疑ってみるサイン
・出産後、性格や物言いがかわった。とげとげしくなった感じがある。
・些細なことで非常に感情的になる一方、脈絡なく機嫌が直る。
・一般的に理屈に合わない、夫からは理解しがたい理由で、頻繁に転居を訴える。
・健康志向がことさらに強い(放射能の影響や、無添加・無農薬などにこだわりすぎる)。
・子供の様子が変わった(常に母親の顔色を伺っている、表情や表現に乏しいなど子供らしくない)。

また、参考までに本人(妻)の家庭環境や背景としてよくあるものを以下に挙げます。

・本人(妻)の両親が不仲だったなど、複雑な家庭環境で育った。
・本人とその母親が、心情面で密着している(両親の夫婦仲が悪いために、母親が心情面で本人に頼ることが多かった)
・両親が世間体の強い人で、本人が未だに顔色を伺っているフシがある。
・友達関係含め、人付き合いが極端に少ない。
・あるいは、人付き合いはあるのだが持続しない。よくトラブルを起こす。
・キャリアアップではなく、人間関係のトラブルなどでの転職が多い。

以上は、あくまでも弊社に相談のある方々に共通にみられる特徴であり、上記があるからといって、即座に「精神疾患」と決めつけるわけではありません。しかし、核家族で実家両親や親族との交流も少ない場合、発症に気づけるのは配偶者である「夫」だけです。

夫(男性)の立場からすると、専門家に相談すること自体、「ハードルが高い」とおっしゃる方も多いものです。行政機関や医療機関への相談など、仕事を休んで赴かなければならないこともあるでしょう。なかなか難しいことではありますが、職場にも理解を得ながら、第三者に介入してもらうべきです。

また、妻の妄想の対象が夫である場合、夫が日常的に妻から責められたり、罵詈雑言を浴びせられたりして、うつ状態に陥っているようなケースもあります。「(妻や自分の)親には知られたくない」「職場には知られたくない」と考えて抱え込むうちに、健全な判断能力を失ってしまうのです。こうなるとかえって事態は混乱するため、早い段階で両家族が話し合い、現状を共有しておくとよいでしょう。

そして、当たり前のアドバイスにはなりますが、夫婦・家族として生活をともにするからこそ、まめにコミュニケーションをとる、会話を大切にする、ちょっとした変化を見逃さない、といった日常の努力を怠らないことです。
信頼関係のある夫婦であれば、何かあったときには「あなたの健康が心配だから、受診しよう」「一緒にカウンセリングを受けてみないか」と言えるはずです。

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トキワレポート(メンタルヘルスと家族の問題)

メンタルヘルスにまつわる、家族・親子の問題についての記事です。精神疾患や長期ひきこもりを一因とした問題行動に、家族としてどう対応すればよいのか。うまくいかない親子関係にどう向き合えばよいのかなど、弊社の経験から分かることをお伝えします。
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