「言わなきゃ分からない」問題。えっ、まじ、そこが分からないの!?と思った件。

「言わなきゃ分からない」「言わなくても分かってよ or 分かるだろ」問題はそれなりに根が深い、と思う次第。先日「家事育児で『言わなきゃ分からない』とかいうの、それ、ちょっとした怠慢でございましょう?」という主旨の稿を書いたが、それとはまたシチュエイションが異なるのだけれども、「えっ、そこまでは分かるのに、そこが分からないのか!」と内心驚いたことがあったので、今日はそのお話を書きたいと思う。どこまで言うか言わないか、って本当に難しいなと、思った。

 先日彼氏の家に行った時のことだ。2泊3日して、2日目はほぼフリーなので、ご飯を作って彼氏の帰りを待っていた。彼氏がもうご飯を炊いていたので、タンドリーチキンと付け合わせの野菜を用意して、あと、にんじんの細切りと玉ねぎスライスのサラダを作った。オイシイネ、と食べていたんだけれども、途中でふと彼氏が、「この玉ねぎ、生?」と訊くので、「yes」と答えると、ちょっと苦笑い混じりの不満げに「生は、ヤダ」「食べるケドー、ヤダ」。えええー。テンションがガッターン!と落ちた。どのくらい落ちたかと言うと、あからさまに口数が減って目線が下方を彷徨うくらい、落ちた。

 ご飯を作る人は分かってくださると思うんですけど、せっかく作ったご飯を、「これキライ」とか「食べられない」とか言われると、ガッターン!って、なるじゃないですか。「じゃー自分で好きなの作ればいいじゃん!」とか「食べなくて結構でございマス!」くらいは、不貞腐れる。この時は不貞腐れるというよりも、ショックを受けて上手に行動できなくなったのだけれど。

 でも、よくよく考えると、「これはあんまりスキじゃないんだ」っていう意思表明をしたくらいで傷つかれても困るというか、それすら言いづらい関係っていうのもいかがなものか、というか。別に料理をディスった訳じゃなくて、単に「ヤダ」って好みを伝えただけなんだし。そして自分の傾向として、疲れている時は物事をネガティブに捉えがち、というのもこれまでの経験で分かったので、一晩明けて振り返ってみると、そういえばその前の晩は、お腹が地味に痛くてあまり眠れなかったんだ、そこか、原因は。うわぁ、肉体が疲れるって、えらく顕著に効いてくるなあ、怖っ。気をつけよう。

 と思っていますと、翌日お店で談笑している時に、彼氏が切り出した「トーコちゃんは、時々カナシイ顔をするよね?ドーシテなの?」。多分、その時はにこにこと楽しく会話をしていたので、彼氏も(あっ、今なら言っても大丈夫かな?)と安心したのだと思う。これにはちょっと背景がありまして、彼氏はわたしがスマイルしてないとそわそわとしてしまうタイプなので、時々「スマイル!」と叱られるんですよね。「sad face ヤダーーーー」と。別れ際で帰るのが辛い時とか、下手するとセックス中にも、「スマイル!」と言われる。こちらとしては別にカナシイ訳じゃなくて、日本語で表現するなら「切ない」とか「離れがたい」とか「名残惜しい」とか奥床しい表現の何かだったりするし、それに「セックス中にスマイルとは果たして一般的なものなのか?」という拭い去り難い疑問もあるので、この間検索してみましたけれど、セックス中にスマイルする案件は、1件しか出てきませんでした。なので、あっ、そのあたりの説明をすべき時が来たのか?と思って、「それ、どの時?あの、わたしがサヨナラ、って言う時の話?」と確かめますと、「ジャナクテ、昨日ご飯食べてる時、突然なんか変わっちゃったデショ?あれっ、ナンデ?と思って……」。あっ、それ!?そっちでございますか!?

 やっぱり分かるんだー。やだー。そっか、悪かったなー、と思ったので、首っ玉にかじりついて「ごめんね、疲れると、こう、気持ちが落ちちゃうの。ごめんね」と謝った。やっぱり、一方的に勝手にトーンダウンしてしまうのはよくないことだと思うし、疲れてなかったらあれほど落ちなかったと思うし。「いろいろ話しかけてみたけど全然笑わないし……」「うん、ごめんね。疲れちゃってたの」「あれっ、どうしたのかな?って思ったけど、僕、何もしてないし……。トーコちゃん、疲れるとテンションダウンしちゃうタイプなんだね。ワカッタ」。ん?え?いや、お前、ちょっとやらかしたよね?

 そこで若干微妙な気持ちになったが、要するに、彼氏は、わたしの様子が突然おかしくなってテンションがあからさまに落ちたことは分かるんだけれども、それが何に起因するか、なにがきっかけとなってそういう状態になったかは、分からない訳だ。えっ、そこが分からないの!?まじで!?そこ、分からないの!?女子だと(という風に括ってしまうのはあまりよくないと思うのだけれども、傾向として)、目の前の相手が突然変化した時、思わず「自分に何か落ち度がなかったか」と振り返ってしまうものなのだが。だから、ハラッサーな男に付け込まれてしまったりするのだが。そうなんだ。分からないんだ。そこが。感慨深い思いに捉われた。

 相手の感情の変化にすら気付かない鈍感な男も考えものだが、そこが分かったとしても、やっぱり言わないと分からないことってあるんだな、とあらためて考えさせられた。でもそうするとまた悩んでしまうのが、どこまで言ったらいいもんなんでしょうね、というところだ。男性としては、「何が原因か分かんないけど彼女が機嫌悪い」っていうのと、「えっ、それしきのことで(=例えば、生たまねぎはヤダって言ったくらいのことで)傷ついちゃうの!?」っていうのと、どっちがましなんでしょうか。あまり細かいNG項目を並べていっても、そういう関係性って寛げない感じがするし。

 それはそれとして、彼氏は、ウェットな感情への感応性が低すぎじゃないか?とも思う。前に一緒に映画の「Leon」を観た時、(超切ない!)とわたしが号泣していると、「ドウシテ泣いてるノ?この女の子が可哀想だから?」と訊かれた。いや、可哀想なのはむしろレオンの方だというか、というよりも、可哀想とかじゃなくて、愛と孤独と切なさだろ!?しかも、この映画をおススメしてきたの、あなたじゃないか。んんー、そういうところ、分かってくれ!

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