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加齢万歳【我が家のペット自慢】

 おばあちゃんネコがコネコだった頃、確かにわたしは彼女が年を取ることをとても切なく思っていたのだ。 わたしが仕事に出かけることを理解できず毎回毎回部屋のガラス戸にすがって泣くので、「こんなバカな子は、おばあちゃんになっても『おかあさんの子供』のままで、いつまでも泣くのだろうか」と思うとまじ泣きしてしまい、当事のブログに感傷的なポエムをしたためた。

 ところが19歳になった今、彼女はおかあさんがいない、と泣くどころか、「帰りが遅い!」と怒鳴るおばあちゃんに成長した。1日不在にした日などは、わたしが帰宅した気配がすると、2階の自室からえらくでかい野太い鳴き声が降ってくる。1階でグズグズしていると階段の手前までやってきて呼びつけたりするので、だらだらしてもいられない。早く甘えた過ぎてお怒りなのだ。ちなみに彼女は降りたい時には自分で勝手に降りて来るので、要はお前がとっとと昇って来い、ということだ。

 1、2年前に食欲が落ちがったりと痩せペースト食「にゃんにゃんカロリーミルク風味」しか食べられなくなり、にゃんにゃんカロリーはアマゾンのページに行くと口コミに皆さんが愛猫の最期の日々を助けてくれた感謝と哀悼の念を綴っている凄いフードなので、こちらもそろそろかと心の中で静かに覚悟を決めていたところ、この1年で不思議な盛り返しを見せもりもりと食うようになり体重回復、明らかに肉がつき、にゃんにゃんカロリーには見向きもせずカリカリやらお刺身やらなまり節みたいなネコのおやつやらを要求するようになる。コネコ氏が近づくと叱りつけるので、コネコ氏は彼女が食い終わった頃にそっとやって来て、皿に残したものを舐め食う。

 おばあちゃんは昔からひんやりしたネコで一緒に寝てもちっとも暖かくなくむしろこちらが暖めてやるような関係だったが、この夏の猛暑、エアコンのない自室でわたしがすっかり体調をダメにしたのに冷え症ネコたる彼女は逆に快調、食欲さえ亢進した。ここ数年足取りがおぼつかなくなっていた筈なのに、床からわたしの机の上に直で飛び乗るのを目撃した時は驚いた。

 腎臓の機能は落ち大量の水を飲み大量の尿を出すが、角膜がやられて白濁し毎日の目薬を欠かせないが、カギ尻尾の先っぽは失い片耳は歪み首輪の跡は禿げてしまったが、おばあちゃんは毎日元気にわがままだ。年を取るということは、若い頃の脆弱な感傷なんか余裕で吹き飛ばす。わたしも、彼女も。

 彼女は来年の夏に20歳になるが、そこも通過して30年50年、そのうち尻尾が二股三股に分かれて来るかもしれない。でも、いつ死んだとしてもちゃんと看取るから、大丈夫だ。

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